著者:友松はじめ
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今回ご紹介する本は『大切なことはすべてクレドーが教えてくれた』です。

クレドの本と言えば、リッツ・カールトンが有名です。
リッツ・カールトンの成功と共に、クレドが有名になってきたこともあって、クレドはサービス業や接客業に適したマニュアルのようなものと思われることが多いようです。

だから、自分たちの業界や業種にクレドが向かないのではないか? と感じている人も多いのではないでしょうか?

でも、クレドを語るうえで、リッツ・カールトンと同じように外せない存在が、ジョンソン・エンド・ジョンソンです。

もちろん、ジョンソン・エンド・ジョンソンにもクレドがあります。
クレドではなく、クレドー(我が信条)と呼ばれています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは、リッツのクレドに比べると箇条書きになっていてクレドカードの形式になっているわけではなさそうです。

しかも、ウェルネスメーカーのため、リッツのように直接消費者との接点がありません。
これは、メーカーや製造業であっても、クレドの導入を成功することができるという代表的な事例と言えます。

 

目次
まえがき
J&Jという企業について
プロローグ マンガ タイレノール事件の教訓 すべては消費者のために
第1章 「クレドー」に込められた思い
第2章 「クレドー」が社員をハッピーにする
第3章 「クレドー」は現場で活かされている
第4章 対談「クレドー」が企業の品格を高める
あとがきに代えて

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドの歴史

ジョンソン・エンド・ジョンソンがクレドを導入したのは、何と1943年。
リッツ・カールトンよりも、はるかに古い歴史ということになります。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの中で、クレドが会社と社員にどのように活用されているかをこの本を通して学ぶことができます。
リッツ・カールトンの本と合わせて読めば、クレドの知識も広がっていくでしょう。

この本の初版が2007年4月2日ですので、その前までの実績になりますが、1932年から2005年までジョンソン・エンド・ジョンソンは業績を伸ばし続けているそうです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは、1943年、三代目社長のロバート・ウッドジョンソンによって発表されました。

そして、ジョンソン・エンド・ジョンソンば、クレドが発表された1943年からの業績は、何と一度も前年割れをしたことがないと言うのですからす、すごいですね。

 

この本がつくられるキッカケ

この本の著者は片山治さんというです。
この方は経済ジャーナリスト、経済評論家、学習院女子大学客員教授の肩書きを持つ方で、企業経営論、組織論、人事論をテーマにした著作を書いている方です。

この本が作られたきっかけは、この本が書かれる前の2002年、著者が富士ゼロックス代表取締役会長だった小林陽太郎氏にインタビューをしたのがきっかけだったそうです。

このインタビューの中でアメリカでコーポレートガバナンスを揺るがす不祥事が、多発したことを取り上げ、コーポレートガバナンスの本質は使命感と倫理観が大切で、この倫理観と使命感を持って働いている社員がいるのが、ジョンソン・エンド・ジョンソン。
そして、その土台となっているのが我が信条のクレドなのだと教えてくれたそうです。

そして小林陽太郎会長は、ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドが掲載されている本を取り出して、わざわざクレドの一部を読み上げてくれたそうです。
それがきっかけで、著者の片山さんにとってジョンソン・エンド・ジョンソンが特別な存在になっていったのだそうです。

また、ジョンソン・エンド・ジョンソンほどの世界的規模の会社が、たった一枚のクレドでコントロールされていることが信じられないという思いから、取材に至ったようです。

 

2回の危機をクレドで乗り越える

私たちは今、薬局で気軽に薬品を買っています。
薬品を箱から出すと、必ずフタと容器のあいだにシュリンクと言われるビニール状のラップが硬く巻かれています。

これは、この容器の中に異物が混入されていないことや、不用意に開けられていないことが、一目でわかる、安全上の一つの方法なわけです。

ちゃんと調べてはないのでハッキリは言えませんが、医薬品にそういう安全上の処置がされるようになったキッカケになったであろう事件が、ジョンソン・エンド・ジョンソンでありました。

それは。タイレノール事件です。
それは1982年に起きた事件です。

タイレノールとは、アメリカの家庭では常備薬として普及している頭痛薬。
これを飲んだ人たちが、相次いで死亡するという事件が起きました。
そして、このタイレノールを製造、販売していたのが、ジョンソン・エンド・ジョンソンでした。

この事件は、何者かがタイレノールに毒物を入れていたことが、事件の発端、つまり第三者の犯行でした。ジョンソン・エンド・ジョンソンには、100万ドルを用意するよう犯人からの脅迫状が届いたそうです。

会社で対策会議が開かれて、これが第三者の犯行であること、そして犯人から脅迫を受けていることをそのまま消費者に伝えることにしました。これはクレドに従っての判断でした。

そして、記者会見で全てを公表した後、ジョンソン・エンド・ジョンソンはタイレノールをアメリカ全土の薬局や家庭から、全て回収すると宣言し実際に回収を行いました。

回収を行いながら、異物混入を防ぐための新しいパッケージも開発しました。

  • 外箱の折蓋は全てのり付け
  • ボトルキャップはプラスチックのバンドで密封
  • ボトルの入り口を強いファイルで密封

これは、今の薬局で売られている薬と同じ仕様ですね。
このタイレノール事件で、失墜するかと思われたジョンソン・エンド・ジョンソンの信用は、タイレノールの回収宣言と実際に全部回収したことによって反って高まることになりました。

その後、悪い人はいるもので、またもタイレノールに毒物が購入されるという二度目のタイレノール事件が起きました。でも、この時も前回と同じように、クレドに従って、タイレノールを全品回収して対応しました。

このような対応は、クレドがなかったらできなかったことでした。

我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。(ジョンソン・エンド・ジョンソン我が信条から引用)

クレドが企業を救った大きな実例です。

 

企業理念の浸透

別のクレドの本で、カリスマ経営者ではなくクレドをカリスマにしよう。
という内容を読んだことがあります。

二年ほど前に、J&Jの最高責任者であるビル・ウェルドンに「『クレドー』とは何か?」と質問したことがあります。彼は、『クレドー』の話だったら二日でも三日でも話ができるよ。『クレド―』があるから、我々経営者は枕を高くして眠れるんだよ。」と答えました。つまり、自分が今寝ていても地球の反対側は昼間なので、何か問題が起きるかもしれない。でも、全社員が「クレド―」にもとづいて仕事をしてくれていると思えるから、安心していられるのだということなんです。

クレドが自分で考えて判断して行動する社員を育てると言われていますが、経営者にとってクレドが優れた経営のツールなのだということが分かりますね。

でも、クレドを導入するだけじゃなくて、クレドが浸透するための社内全体の取り組みというのがあってこそのクレドの効果です。

ジョンソン・エンド・ジョンソンがクレド浸透のためにどんな活動をしているのかも、この本を読んで参考にしてみてください。

 

まとめ

今回は、ジョンソン・エンド・ジョンソンを取材した『大切なことはすべてクレドーが教えてくれた』をご紹介しました。

クレド関連の本は、主にリッツ・カールトンがテーマになったものが多いため、サービス業や接客業にクレドは適しているんじゃないかと思われがちです。でも、製造業やメーカーなどの業種でも、クレドが導入できることがジョンソン・エンド・ジョンソンの成功から分かります。

1982年に起きたタイレノール事件を私はこの本を読むまで知りませんでした。
2度の大きな毒物混入事件をクレドに従って対応した結果、信用落とすどころか、逆に信頼を勝ち取ることができたと言う事例は、クレド導入を考えてる会社やお店にとって、大きな励みになるのではないでしょうか 。

クレドは大企業だから成功するのだ。
そんなことをリッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンの成功を見て思うかもしれません。

今回ご紹介したこの本を読んでいくと、ジョンソン・エンド・ジョンソンのような世界的な大企業であっても、クレドを作っただけでなく、クレド(我が信条)を浸透させていく、たくさんの取り組みをしていることがわかります。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの社員が、最初に考えることは、患者のために何ができるか。
その患者を治療するドクターに何をすれば良いかと考えているそうです。

近年、社員やアルバイトの考えられないような不祥事が続出しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、クレドがあり、クレドが浸透しているからこそ、いわゆる不祥事が起きにくいのだと書かれていました。

クレドを学ぶおすすめの1冊です。

大切なことはすべてクレドーが教えてくれた/片山 修 (監修)

クレド関連書籍一覧

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