著者:友松はじめ
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今回ご紹介する本は『リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ』です。
著者は、ザリッツ・カールトン大阪元副総支配人の四方啓暉さんです。
この本はホスピタリティがテーマです。

強い現場をホスピタリティによって作るにはどうしたらいいのか?
それをリッツ・カールトン大阪で行った取り組みを例にして学んでいく構成になっています。
リッツ・カールトンの運営のこと、クレドのこと、人材教育のこと。

2年で関西のホテルランキング1位、5年で日本のホテルランキング1位を獲得した、表にはなかなか見えづらいリッツ・カールトンの裏側がわかる、おもしろい一冊だと思います。

 

目次
はじめに
プロローグ いまなぜ「ホスピタリティ」か
第1章 リッツ・カールトンにみる「ホスピタリティ」の原点
第2章 従業員満足なくして「顧客感動」なし
第3章 「ホスピタリティ」溢れる現場づくり
第4章 ザリッツ・カールトン大阪にみる「ホスピタリティの土台」
第5章 受け継がれるホスピタリティ・マネジメント

 

ほんとうにお客様のため?

この本を読んでいて気になったところをいくつか紹介したいと思います。
「お客様のために」という言葉はいたるところで聞くキーワードですが、本当にお客様のためにやっているでしょうか?現実はどうでしょうか?

しかし、現実はどうでしょうか?例えば、紳士服店などで自由に自分の好みのスーツをゆっくりと選びたいのに、しつこく付きまといあれこれと勧めてくる店員。疲れていて放っておいてほしいのに。延々と話しかけてくるタクシーの運転手ー。もちろん、彼らも良かれと思ってやっているのは分かります。でも、お客様の”いま”を無視しては、 いくら「お客さまのため」と言っても自己満足にしかならないのです。(14ページより引用)

一方で、お客様が喜ぶとわかっていても、なぜかやろうとしないこともたくさんあります。開店前に入り口の前で待つお客様がいらしても、きっちり開店時間ちょうどになるまでは絶対中に入れないレストラン。暇そうにしているにもかかわらず、テーブルの上のコップの水が空っぽでもサーブしようとしないウェイターー。例を挙げればキリがないほど、私たちは日常的にこうした場面に遭遇します。そして、その多くは、サービスを提供する側の”自分の都合”によるケースがほとんどです。(15ページより引用)

私が以前勤務していた通信販売の会社でも、ここまではありませんでしたがお客様のためと決めたルールでも、土壇場になって会社都合に変更になったりすることというのはよくあることでした。そういうことであれば『お客様のため』と言わない方がいいと思います。

ちょうどこの本が出版された時期が2010年5月なので、まだまだ不景気真っ只中でした。
ですので本の内容にも今後将来の先行きを不安視するようなお話も書いてあり、そういった不景気を乗り切っていく、不景気こそホスピタリティが必要だと四方さんは言っています。

今は不景気を抜けた感はありますが、たくさんのサービスを受けてきた賢くなったお客様に対応するためにも、今でもホスピタリティを重視することは大切だと思います。

 

従業員の満足がお客様の満足に

この本はリッツ・カールトン大阪での取り組みを例にしながら一流のホスピタリティを学んでいく本です。そのためたびたびリッツ・カールトンの話が出てきます。
その中でクレドの活用事例も出てきますし、クレドをリッツがどのように浸透させたり進化させていったかの仕組みも明かされています。

従業員が満足をしなければお客様の満足に繋がらないというのは、度々いろんなリッツ・カールトン関連の本で言われてきたことです。この本でも例外ではありません。

クレドや会社のルール、仕組みは経営陣で勝手に作れますが、その作ったものを土台にしてスタッフが安心して仕事ができる、経営陣を信頼して満足しなければ、お客様も満足しないと書かれています。

スタッフが安心して仕事ができるというのは言い換えると、スタッフが会社を信頼して自分の仕事に誇りを持つことだそうです。
こういう意識になるためにはやはりクレドが必須なような気がしてきました。

でも、先ほども言ったように経営陣が勝手にクレドを作って従業員に渡しても、そのクレドを作った本人である経営陣が実行しないことには、従業員は会社を信頼することができません。

「うちの会社もクレドを作ったのだけど、うまくいかないんだよね」

という場合は今言ったような状態になっているのかもしれません。
スタッフの埃がホスピタリティーがある現場の土台になっているそうです。

管理職にある誰もが、「社員に誇りを持たせましょう」と、とりあえずは言います。しかし、具体的にどのような場面で、どのような言葉にスタッフが誇りを持てるのか、しっかりと精査されているでしょうか。仕組みというものは、社内できちんと調査した結果をもとに創り上げていかなければ、効果など期待できません。それだけ手間がかかりますが、そのぶん、得るものはずっと大きくなるのです。リッツ・カールトンの場合、スタッフが「誇り」を持って働くこともできる現場づくりこそが、ホスピタリティ溢れるおもてなしを産出する源泉となっているのです。(154ページより引用)

ただ作るだけではなく、リッツ・カールトンのような取り組みをして初めてホスピタリティが溢れる現場になるということですね。

 

まとめ

リッツ・カールトンは、1997年に大阪に日本進出第一号のリッツ・カールトン大阪をオープンさせました。その時、ホテル業界の方達はご存知だったようですが、私たち一般の人達はリッツ・カールトンのことを知りませんでした。
一般には知名度がなかったわけです。

それでもたった2年で関西のホテルランキング1位、オープンから5年後には日本のホテルランキングの1位になったと聞いています。 それでリッツ・カールトンが全国的に知られることになったわけですが、このようなすごい結果が出せたのはもちろんクレドがあったから。

そしてそのクレドを実行できるような仕組みが会社内にあって、経営陣はもちろん、従業員もみんなクレドをもとに働いたからこそこの結果になったわけです。それは広く知られるところです。ただ、この実績が出せたホテルの裏側では一体どんなことがなされていたのか?
その取り組みは、なかなか知ることができません。

そういう意味でも、リッツ・カールトンやクレド、そしてホスピタリティを知る上でこの本はとても貴重な一冊だと思います。

リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ/四方啓暉(著)

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