著者:友松はじめ
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今回ご紹介する本は『リッツ・カールトン20の秘密ー一枚のカードに込められた成功法則』です。

この本は、数あるリッツ・カールトン関連、そしてクレド関連の本の中で異端の本。
その理由を少しご説明します。

リッツ・カールトンのファンであるこの本の著者、井上富紀子さんが当時世界63ヶ所にあったリッツ・カールトンに宿泊し体験した数々の出来事を日記のように、書いてまとめた本です。
そして、井上さんが体験した数々のエピソードに対して当時、ザ・リッツ・カールトン東京総支配人だった、リコ ドゥブランクさんが、井上さんが体験したエピソードは、クレドの何に基づいて行われたものなのかを解説してくれています。

 

あくまで一般人である井上さんが体験する、リッツの感動のサービスに、リコさんの解説が入ることで、クレドがどうやってお客様に機能しているのかが、すごく身近に感じられ、読み物として最後まで楽しく読むことができます。

残念ながら、この本にはクレドの作り方はどこにも書いていません。
クレドのことが気になって、わざわざリッツ・カールトンに行っクレドカードをもらってきた人は多いと思います。そしてクレドカードを読んでは見たものの、当たり前のことしか書かれていなくて、がっかりした。という話はよく聞く話です。

なぜそうなるかと言うと、それはクレドに書かれた内容の裏側が分からないから。ですから、この本を読むことによって、当たり前の内容しか書かれていないと思われていたクレドカードの内容の本当の意味が理解できるのではないでしょうか。

私たちクレドに興味がある人に代わって、世界中のリッツを訪ねてくれて、そしてこの本を書いてくれた井上さんに感謝したいです。

 

目次
プロローグ
mystique 1 モットー
mystique 2 エスコート
mystique 3 パーソナル
mystique 4 エンパワーメント
mystique 5 サプライズ
mystique 6 ミスティーク
mystique 7 サービス
mystique 8 クオリティ
mystique 9 クレーム対応
mystique 10 チームワーク
mystique 11 トレーニング
mystique 12 笑顔
mystique 13 プランニング
mystique 14 従業員への約束
mystique 15 身だしなみ
mystique 16 プライバシー
mystique 17 清潔・快適
mystique 18 安全性
mystique 19 楽しみあう
mystique 20 クレド
エピローグ

この本を読んで感じたこと

私がこの本を読んだ後に感じたことは、リッツ・カールトンから一流のサービスを学びたい、クレドを勉強して、自分の会社やお店にクレドを導入したいと思っている人に…

まず一番最初に、読んでほしい本だということです。

一時期のクレドブームはさった感はあります。そもそもブームなのか? という疑問はありますが。リッツ・カールトンとクレドは、いろんな雑誌や本で紹介されていることは、ご存知の通りです。

クレドを導入した成功事例を読んでしまうと、すぐにでも自分のお店や会社にクレドを導入したくなります。その感覚は普通の感覚だと思います。
そして、いきなりクレド導入のために、本を買い、クレドの勉強を始めるよりも、この本を読んで、本を通じて著者の井上さんと一緒に、リッツ・カールトンで生まれた様々な感動のサービスを疑似体験していくことで、これから始めるクレド導入のための勉強が、とても楽しいものになってくると思うのです。

また、そう難しく考えなくても、旅行が好きな女性が世界各地のラグジュアリーホテルで体験したエッセイを読むような感じでもとても夢のある楽しい本だと思います。クレドが土台になったサービスが、こんなにもお客さんに感動を与えるのだなということがよくわかります。

リッツファンが書いた旅の日記だけど、しかし

もう一度この本の構成を簡単に説明すると、リッツ・カールトンのファンである井上さんが、こ当時世界中にあった63ヶ所のリッツ・カールトンにすべてに宿泊し、そこで体験した素晴らしい思い出をまとめた旅の日記のような本です。

井上さんが体験した旅の思い出のひとつひとつに、当時ザ・リッツ・カールトン東京総支配人だったリコ ドゥブランクさんが、リッツ・カールトンのクレドのどの部分から行われたサービスだったのかを詳しく解説してくれています。

私たちは、この本を読むだけでも、クレドがお客様にどのような形で感動のサービスを提供できているのかということをイメージできるようになります。そして、自分のお店や会社にもしクレドを導入した場合、どんなことが効果があるのかということもイメージできるはずです。

この本を読もうと思ったキッカケ

私がこの『リッツ・カールトン20の秘密』を読もうと思った背景を少しお話ししたいと思います。

リッツ・カールトンやクレド関連の本は30冊以上出版されています。
クレドに興味を持ち、クレドの研究のために時間を見つけては関連する本を読んでいる私ですが、この本を偶然見つけた時、リッツ・カールトンと書かれていましたので、すぐ手に取って中身を確認してみました。

すると、他のリッツ本とは違い、リッツと何の関係も無い方が、リッツ・カールトンのことを書いているじゃありませんか。しかも全世界のリッツ・カールトンに宿泊された体験を本にしている。そして、ひとつひとつのエピソードに、リッツ・カールトン総支配人が解説を入れている本のが、とてもおもしろい構成だなと思い読むことにしました。
実際、読んだ後の感想ですが、クレドをベースにリッツ・カールトンで働くスタッフの方達がどうやって感動のサービスをお客様に提供しているのかが理解できました。
一般の人が語るリッツ・カールトンの本、とてもおもしろいと思います。

この本をオススメする理由

私がリッツ・カールトン屋クレドに興味のある人ならぜひ読んでほしいと考える理由を2つの点から説明したいと思います。

リッツ・カールトンの代表的なキーワードが手に取るようにわかる
リッツ・カールトンの代表的なキーワード、例えば…

モットー
エンパワーメント
ミスティーク
サービスの3ステップ
従業員への約束

このようなキーワードがリッツ・カールトンのクレドカードには掲載されています。
その他の関連本にも同じようにキーワードの解説が載っています。
もちろん、別の本を読めば意味は分かるのですが、井上さんが世界中のリッツで体験したエピソードを通してリッツの主要なキーワードの意味をリアルに学ぶことができます。

国は違ってもリッツ・カールトンはリッツ・カールトンということが分かる
この本に紹介されていたエピソードをいくつか紹介して説明してみたいと思います。

井上さんは、井上さんだけの朝の儀式があります。
それは、とにかく朝起きたらコーヒーを必ず一杯飲む。というものです。
この儀式を行わないと、その日1日調子が出ないそうです。

宿泊するホテルにコーヒーメーカーが必ずあるとは限らないため、旅行に行くときは必ず自分のコーヒーメーカーをスーツケースに詰めて持参するそうです。愛用のコーヒーメーカーはスーツケースの1/6を占領するそうですが、それでも必ず持って行くそうです。

この儀式は、リッツ・カールトン宿泊中も変わらず行っていました。

リッツ・カールトンには、コーヒーメーカーが無いことを井上さんは知っていたそうで、当然毎回コーヒーメーカーを持参していたそうです。でも、ある時をさかいに、部屋に必ずコーヒーメーカーが用意されているようになったと言います。

ある国のリッツ・カールトンでは、新品のコーヒーメーカーが用意されていて、明らかに井上さんのために用意されたものだとわかった時があったそうです。
井上さんが、毎朝コーヒーを飲むということは、リッツのスタッフの誰にも言っていなかったそうで、いつリッツから調べられたのか全くわからないそうです。

このエピソードはこの本の中で、私が一番好きなエピソードです。
あともう一つのエピソード。

ニューヨークのリッツ・カールトンに宿泊した時、窓から見える自由の女神を眺めていると、ドアがノックされ、スタッフが頼んでもいないルームサービスを持ってきたそうです。スタッフは、飲み物と黒いオブジェのようなものをぶっきらぼうに置いて出て行ったそうです。

スタッフが部屋を出た後、なんだろうと思ってそのオブジェを見てみるとチョコレートでできた自由の女神だったそうです。そして自由の女神の顔に紙が貼ってありました。
なんだろうと思ってよく見ると、その紙は井上さんの顔写真でした。

自由の女神の顔が井上さんになっていた! というニューヨークのリッツ・カールトンのスタッフからのサプライズプレゼントでした。

ホテルスタッフが無表情でプレゼントの説明もせず持ってきたというところに、井上さんはリッツ・カールトンのいたずら心を感じ取ったそうです。
たぶんスタッフは、自由の女神を見て喜んでいる井上さんを想像して いたんじゃないでしょうか。微笑ましいエピソードです。

このように、国が変わってもリッツ・カールトンのサービスは変わらないということが読んでいてよくわかりました。
グレートカードを読んだだけでは、なかなか理解することができないクレドの秘密。
これを井上さんの体験とリコさんの解説で、手に取るように理解ができるようになります。

まとめ

今回は『リッツ・カールトン20の秘密』をご紹介しました。

数あるリッツ・カールトンやクレド関連の本の中で、異端と言うべき本です。
しかし、リッツ・カールトンをホテルマンやコンサルタントの視点ではなく、一般人の視点から紹介してくれる本はこの本以外に無いと思います。
この本のおかげで、リッツ・カールトンの一流のサービスがより身近なものに感じられて、いつか私もリッツ・カールトンで、こんな素敵なサービスを受けてみたい! という気持ちにさせてくれます。

もう10年以上前の本ですが、興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。
きっと、リッツ・カールトンやクレドのことが大好きになるはずです。

リッツ・カールトン20の秘密

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