クレドは作れる! – クレドの作り方の手順・費用・期待できる効果とは?
この記事を読む方はもうクレドのことをわかっている方が多いと思います。
クレドは企業活動や従業員の日々の仕事の具体的な行動指針になる考え方です。
クレドを導入している企業としてザ・リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンはあまりにも有名です。
しかし現在企業の規模や業種に関係なく自分たちオリジナルのクレドを作り、導入に成功している中小企業や小規模会社、店舗経営者が増えています。
そこで今回はあらためてクレドについての説明のほか、クレドの作り方やクレドを作る費用、そしてクレドを導入したときに期待できいる効果についてご紹介したいと思います。
クレドとは? ~今、クレドが注目されています~
再びクレドが注目されています。
昨今、コンプライアンス遵守のもと、社員教育に力を入れはじめている企業が増えています。
その社員教育の方法のひとつとしてクレドが注目されています。
1997年にリッツ・カールトン第一号が大阪にオープンして世界的な一流ホテルであっても日本では無名に近かったリッツ・カールトンが日本で開業後、わずか5年で(ここは四方さんの本を見て確認すること)日本の一流ホテルの仲間入りをはたしました。
その時の原動力のひとつになったのがクレドが日本中で注目されるようになりました。
クレドは企業理念や経営理念などと混同されることがあるのですが、クレドとは創業者や経営者の想いがつまった『企業理念』や『経営理念』を会社や従業員が使いやすいようにわかりやすくしたものがクレドです。
つまりクレドとは会社や従業員の『行動指針』にあたるものなのです。
クレドを作る目的とは?
なぜクレドを作るのでしょうか。
クレドを作る目的はひとそれぞれあると思いますが、クレドを作ることで会社に行動指針、つまり経営の軸ができることが大きいのではないでしょうか。
一貫性のある人を人は信用します。それと同じように一貫している会社は多くの人から信頼をえることができます。
不祥事を起こした会社が記者会見をおこなうことがあります。
記者会見では誠心誠意、謝罪と反省の言葉を述べたとしても、一貫性がない場合は不祥事による批判は収束することはありません。
たとえば男性社員の育休を推進していると会社のホームページに方針をかかげていても、実際は育休をとった男性社員を冷遇するという事件がありますがこれも一貫性がない事例の1つだと思います。
もちろんそんな会社でも企業理念はあったと思います。
しかし創業者や経営者の想いがつまったはずの企業理念が会社に浸透していなかったのでしょう。
『クレドは企業理念を会社や従業員が使いやすいようにしたもの』です。
クレドを導入した会社では、仕事でいきづまったときや判断に迷ったときはクレドを読み返して自分のやるべき行動をします。
経営も同じようにクレドに書かれた内容にそって経営判断していくのです。
クレドを作り導入している会社は、クレドを中心とした経営、仕事をおこなうことで自然と一貫性のある会社に変化していきます。
クレドの導入で期待できる効果(メリット)とは?
クレドの導入で期待できる効果はどんなものがあるのでしょうか?
主なものはこの3つ
- コンプライアンス
- 従業員教育による人材育成
- 従業員エンゲージメントの向上
コンプライアンス
従業員は悪いことをしてはいけない、悪いことはさせないということでコンプライアンスの遵守がいわれています。
昨今、TwitterなどのSNSで騒がれているバイトテロもコンプライアンスの遵守が注目されるようになった原因です。
悪いことをさせないため罰則規定をつくるよりも、もっと従業員たちの腑に落ちるような本質的な教育や制度が現場では受け入れられる。
コンプライアンスの視点からみたクレドの期待できる効果(メリット)は
- 企業理念に基づいたブレない経営ができる
- 共通の目的を持つことで、チームワークが良くなる
- 企業文化が作られるので、その価値観に共感する人材が集まるようになる(失敗しない採用活動)
クレドを作り、そして会社に導入する事でスタッフのモチベーションも上がり、仲間同士の連帯感も生まれます。
クレドを通して従業員たちは会社の
- ビジョン
- ミッション
- ミッション・ステートメント
を自分自身に浸透させていきます。
なせクレドが従業員に浸透していくのか、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼それは本当にやりたかった『朝礼』ですか? – クレドの朝礼で組織と従業員がプラスに変わる
https://business-study.com/credo_chourei/
クレドはコンプライアンス遵守の大きな力になるはずです。
従業員教育による人材育成
クレドは人材育成にも役立ちます。
クレドを作り会社に導入することで期待できる人材育成の効果はこちらです。
- 自ら考えて行動(仕事)ができるスタッフが育つ
- スタッフが育つことで、経営者がいなくても動く組織ができる
- 先輩が後輩を育てる風土、スタッフ同士の信頼関係ができるので離職率が減る
しかしクレドを作って、クレドカードを印刷して従業員に持たせるだけでは従業員は育ちません。
そしてクレドも従業員はもちろん会社全体に浸透していくことはありません。
それはクレドを作ってクレドカードを従業員にもたせているだけでうまくいくと多くの方が勘違いしているからですが、クレドを作り導入していくためのステップを順に進んでいけばクレドを浸透させることができます。
従業員エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメント、つまり従業員が会社に愛着をもって仕事むきあってくれるようになるのも、期待できるクレドの効果です。
クレドは従業員の会社にたいする帰属意識も育ててくれるので
- 企業文化ができ、ブランドイメージも向上、競合他社との競争力がつく
- 仕事の目的が明確になるので、スタッフの働きとやる気が向上する
以上のことが期待できます。
ただしこれもクレドを作っただけでは実現はむずかしいでしょう。
従業員のエンゲージメントを高めていきたいならエンゲージメントが高くなるような仕組みを導入していかなければいけません。
仕組みといってもむずかしく考える必要はなく、クレドのなかにその仕組をいれて手順通りに実行すればいいだけです。
ほんとうにクレドは作れるのか? クレドの作り方
クレドはほんとうに作れるのかと思っている方もいらっしゃると思いますのでここでクレドの作り方をご紹介したいと思います。
- ステップ1:クレド導入の土台を作る
- ステップ2:クレドの導入前に職場を前向きな姿勢に整える
- ステップ3:ラインナップをクレド導入に活用する
- ステップ4:クレドを作成する
- ステップ5:毎日のラインナップで作成したクレドの浸透を行う
- ステップ6:作ったクレドを進化させるノウハウの導入
ステップ1:クレド導入の土台を作る
クレド導入の最初のステップとして強く推奨したいのが職場で働く人同士のポジティブなコミュニケーションです。
クレドで有名なリッツ・カールトンにはすでにクレドがある環境であり、その環境の中で人を採用します。
つまりクレドの活用に適正のある人材を採用してトレーニングを行なって業務に入ってもらうのです。
そこがクレドが浸透している会社と今からクレドを導入しようとする会社の決定的な違いであり、クレド導入の失敗、クレドを作って運用しても効果がでない原因のひとつです。
ですからクレドを作るためのステップ1は『アイスブレイク』を使った従業員たちのこころのストレッチによってクレド導入を成功に導きます。
ステップ2:クレドの導入前に職場を前向きな姿勢に整える
クレドの作成と導入のためのステップ2は、アイスブレイクの次に取り入れることを強く推奨する、『自己承認欲求を満たすコミュニケーション』です。
クレドが無い職場でクレドのことをわかってもらい、クレドを作り導入する場合に新しいものを『前向きに』受け入れる環境を作ることが重要になります。
職場を前向きな姿勢に整えるために感謝の気持ちを伝え合うこととお祝いの習慣を職場に取り入れます。
すでにクレド導入にチャレンジしたことがある方もいらっしゃることでしょう。
クレド導入を行なって成功した職場もあれば、導入に失敗したと感じている場合もあるでしょう。
いずれの場合もクレドの作成・導入むけて考えてみてください。
ステップ3:ラインナップをクレド導入に活用しクレド作成選抜メンバーを決める
ステップ1とステップ2で職場を前向きな姿勢に整えた後は効率のよい従業員が行える『ラインナップ』の導入をオススメします。
クレドコンサルタントの清水先生がリッツ・カールトンに勤めていたときはすでにクレドがそこにあり、自身へのクレドの浸透、定着、活性化にラインナップが役立ったと言っています。
このページを読んでいる方は、これからクレドを作る方や、今あるクレドを効果的なものに作り変えることが目的の方も多いと思います。
「クレドも作れていないのに。ラインナップはクレドを作ってからで(改善してから)いいのでは?」
とお考えになったかもしれません。
確かにラインナップはクレドを作って導入した後、効率よくクレドを従業員に浸透させる方法として重要です。
しかしそれと同時に、リッツ・カールトンで行なっていたラインナップの1部を行うことはクレド作りに役立つのです。
クレドを作り、クレドを浸透させて活用していくため重要なのは従業員を巻き込むことです。
従業員がクレドを作るところから参加することで『私たちのクレド』という意識を持つのです。
では、従業員を巻き込んでクレドを作るためには何が必要でしょうか?
それがポジティブな職場環境を作り、従業員それぞれが会社やお店、職場を大切にしたいという気持ちを育むステップ1とステップ2なのです。
ステップ1とステップ2で作った土台の上でラインナップを行うことで、従業員の中から『クレド作成選抜メンバー』を決めていきます。
ステップ4:クレドを作成する
職場を前向きな姿勢に整え、そしてラインナップによって従業員の教育が進み、クレド作成選抜メンバーが決まったら、ステップ4でいよいよクレドを作ります。
- クレドを導き出す「会社のビジョン」を明確にして文章化する
- クレドを守り貫くために「会社のミッション」を明確にして文章化する
- 会社のミッションを遂行するための「ミッション・ステートメント(使命宣言)」
- クレドを作成する
- クレドを遂行の為に、行動指針を文章化する
- クレドを携帯しやすいクレドカードにする
ステップ5:毎日のラインナップで作成したクレドの浸透を行う
クレドを作りクレドカードが完成したら、次はクレドの浸透です。
クレドを浸透させるために何をしたらいいのか?
それが『ラインナップ』です。
ステップ3ではラインナップの部分導入を行いクレドを作る前に、従業員の教育とクレド作成選抜メンバーを決めました。
このステップ5でラインナップの本格的な導入を行なっていきます。
リッツ・カールトン成功のカギはクレドでした。
クレドを作ったのにクレドが役に立たないのはクレドを機能させるための仕組みを作っていないからです。
どんなに高性能のロケットを作ったとしても、発射台がしっかりしたものでなければロケットを打ち上げることはできません。
いかにロケットの発射台をしっかりと作るかがポイントなのです。
そのためにここまで、クレドの作り方以外のこともお話してきました。
あとはロケットを打ち上げて軌道にさえ乗せてしまえば自然に会社は進化していくことでしょう。
ラインナップとは始業前の20分程の時間を使って行う朝礼のようなもの。
ラインナップとはリッツ式の朝礼です。
ですからラインナップを導入する場合は朝礼をラインナップに変えるとスムーズです。
ラインナップについて詳しくはこちらの記事をお読みください。
▼ラインナップとは?
https://business-study.com/lineup/
ステップ6:作ったクレドを進化させるノウハウの導入
クレドを受け入れることができる従業員の土台を作り、クレドを作成しました。
そして作り上げたクレドを導入して全従業員と会社全体にクレドを浸透させ、クレドが機能するようになりました。
そしてここが最後のステップです。
作ったクレドを進化させていくための仕組みを導入します。
クレドを作り導入することで会社も従業員も成長していきます。その成長にあわせてクレドも進化させていく必要が必ずでてきます。
作ったクレドを進化させていくための代表的なポイントは全部で7つです。
- 従業員をありのままの姿ではなく、あるべき姿に育てる「モットー」
- 会社も従業員も成功できるようになるリッツの「従業員への約束」
- 他社とのサービスの違いを生み出す「サービスの3ステップ」
- 伝説のサービスを実現させる「プリフェレンス・パッド」
- 従業員のクオリティ、愛社精神を向上させる「従業員満足度調査」
- ピンチをチャンスに変える従業員を創る「対応レポートGIA」
- 最高のものを生み出だし、サービス・仕事・人生の好循環を作る「トップボックス」
これら7つのポイントはリッツ・カールトンで使われているものやホテル業界をはじめ多くの一流企業で採用されているものです。
一度作ったクレドに満足せず、クレドは会社と従業員の成長にそって進化させるものだと考えるようにするといいでしょう。
クレド作成に必要な費用は?
クレドを作るにあたり気になるのは費用だと思います。
クレドの作成方法は大きくわけて2つあります。
- 他社に依頼してクレドを作る
- 自社(自分たち)でクレドを作る
この2つです。
他社に依頼してクレドを作る
クレドの作成を請け負っている会社にクレドの作成を依頼するという方法があります。
・クレド作成までの流れ
- 経営者にヒアリングを実施
- クレド作成
- クレドカード作成
・クレド作成までの期間
依頼する側の会社やお店の規模や内容によって費用も導入までの期間に違いがでてきますが、導入までの期間は3ヶ月~6ヶ月が多いようです。
・クレド作成にかかる費用
気になる費用ですが45万円~クレドの制作を請け負っている会社が多いです。
もちろんクライアントがもとめる内容によってクレド作成の費用は増えていきます。
・他社に依頼するメリット
他社に依頼するメリットは、コンサル会社が主導でクレドの作成を行ってくれることです。
あらためてクレドについて理解を深めなくても疑問点は教えてもらえるので手間と時間的なメリットは大きいです。
・他社に依頼するデメリット
他社に依頼するデメリットは、クレド作成に多額の費用がかかることです。
一括で費用を支払う場合もありますし、毎月かかった費用を支払う場合もあります。
クレドは作ることももちろん大切ですが、全従業員と会社にクレドが浸透して機能するようになることが大切です。
ですからクレド作成を他社に依頼する場合は、クレド作成だけでなくクレドの浸透についても指導してもらえる会社を選んだほうがいいでしょう。
自社(自分たち)でクレドを作る
・自社でクレドを作成するメリット
自社でクレドを作成する場合のメリットは、少ない費用でできることです。
そして自分たちで作ったクレドなので愛着もあり大切にします。
・自社でクレドを作成するデメリット
自社でクレドを作成する場合のデメリットはクレドの作成方法やクレドを浸透させる方法を手探りで探さなければならないということです。
クレドをテーマにした書籍でもクレドの作り方を書いた書籍と書いていない書籍もありますし、クレドの作成方法が詳しく書かれていないものもあります。
できればすでにクレドを導入している会社の経営者やクレドの導入に詳しい人からアドバイスをもらう、またクレドやリッツ・カールトンをテーマにした本をひと通り読むことをオススメします。
クレド導入事例1 : クレドが有名な企業の具体例
ここでクレド導入企業の代表的な2社をご紹介します。
ザ・リッツ・カールトン「ゴールド・スタンダード」
『クレド』といえばザ・リッツ・カールトンと言われるほど、ザ・リッツ・カールトンのクレドはあまりにも有名です。
ザ・リッツ・カールトンは世界有数の一流ホテル企業。日本には東京・大阪・京都・沖縄にホテルがあります。
そしてホテルの数はアメリカ・カナダ・メキシコ・南アメリカ・ヨーロッパ・アジア・中東・アフリカ他100ヶ所を超えます。
ジョンソン・エンド・ジョンソン「我が信条(Our Credo)」
クレドを語る上であまりにも有名なジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは『Our Credo』、『我が信条』と表現されています。
我が信条は第一の責任から第四の責任の4部構成になっていてそれぞれに責任をおう対象が変ります。
クレドを導入している会社やお店の導入事例はこちらに掲載しています。
▼クレド導入事例まとめ
https://business-study.com/credo_dounyu_matome/
クレド導入事例2 : クレドを作成・導入している会社が増えています
クレドに興味を持ち、自分の会社やお店にクレドを導入したいと考えている経営者が増えています。
これは昨今、アルバイトや従業員によるコンプライアンス違反で引きおこされる事件の影響も少なくありません。
クレドは大企業だから導入に成功する、中小企業などの小規模な会社やお店では導入は無理と考えている経営者や管理職の方も多いと思いますが、決してそんなことはありません。
今からご紹介する事例は、クレド導入の一部です。
ご覧のように様々な業種、業態の会社やお店がクレドを作成、導入しています。
一般企業のクレド導入事例紹介
株式会社神田屋鞄製作所
こちらのページでは、クレドだけではなく、経営理念、経営理念の解釈、クレド・行動指針が掲載されています。
開業医のクレド導入事例紹介
明石アップル歯科
全部で14の使命が掲載されています。
WEB制作他IT関連会社のクレド導入事例
株式会社 エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ
企業理念とサービスビジョンと行動指針、そして行動規範が掲載されていて、それぞれ詳細のページが用意されています。
店舗導入事例紹介
Honda Cars 仙台北
Honda Cars 仙台北の存在意義、クレド、お客様との約束、社員との約束が掲載されています。
Honda Cars 仙台北のクレドは全部で14あります。
会社存亡の危機をクレドで乗り切ったジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは1943年に三代目社長のロバート・ウッドジョンソンによって発表されました。
そしてジョンソン・エンド・ジョンソンは、このクレドを活用することによって会社存亡の危機を乗り切りました。その会社存亡の危機とは、当時のアメリカ国民を恐怖に落とし入れた「タイレノール事件」です。
アメリカ国民を恐怖に落とし入れた「タイレノール事件」とは?
このタイレノール事件は1982年にアメリがで起こった事件でした。
タイレノールはアメリカの家庭で常備薬として普及している頭痛薬です。
ある日このタイレノールを飲んだ人たちが相次いて死亡する事件が起こります。
このタイレノールを製造販売していたのがジョンソン・エンド・ジョンソンでした。
この事件は、何者かがタイレノールに毒物を混入させたことが発端の第三者による凶悪な犯罪でした。事件発覚後、ジョンソン・エンド・ジョンソンに100万ドルを要求する脅迫状が届きます。
そしてジョンソン・エンド・ジョンソンで対策会議が開かれました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンがとった行動とは?
ジョンソン・エンド・ジョンソンはこの会議でこの2つのことを決定します。
- この事件は第三者による犯行であること
- ジョンソン・エンド・ジョンソンが犯人から脅迫をうけていること
これをありのまま消費者に伝えることが決まりました。
この決定はクレドにそって行われたものでした。
そして、記者会見ですべてを公表した後、ジョンソン・エンド・ジョンソンはタイレノールをアメリカ全土の薬局や家庭からすべて回収することを宣言し、そして実際に回収を行いました。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは回収を行いながら、異物混入を防ぐため新パッケージの開発にも着手していました。
新しいパッケージの改良点はこの3つでした。
- 外箱の折蓋はすべてノリ付けにする
- ボトルキャップはプラスチック製のバンドで密封する
- ボトルの入り口を強いファイルで密封する
新たに開発された新パッケージは現在の薬局で売られている薬のパッケージンの手本となるものでした。
このタイレノール事件で失墜するかと思われたジョンソン・エンド・ジョンソンの信用は、タイレノールの回収宣言と実際に全商品を回収したことで、かえって高まることになりました。
その後、しばらくして2度目のタイレノールが起こりますが、このときもクレドにしたがってタイレノールをすべて回収し対応しました。
このような対応はクレドがなければできないことでした。
我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。(ジョンソン・エンド・ジョンソン我が信条から引用)
このタイレノール事件はクレドが会社を救った大きな事例といえます。
お客様との絆を育くむ奇跡のサービス「ワォ・ストーリー」
それではクレド導入企業を代表するもう一つの会社、リッツ・カールトンをご紹介します。
リッツ・カールトンの従業員はクレドが書かれたクレドカードをいつも携帯し、クレドにそって仕事をしています。
そして世界中のリッツ・カールトンで、お客様と従業員の間でワォ・ストーリーという感動的なサービスが日々生まれています。
ワォ・ストーリーとは?
リッツ・カールトンの従業員とお客様の間で生まれた感動的なサービスのことをワォ・ストーリーといいます。
毎週2回全世界のリッツ・カールトンで生まれたワォ・ストーリーの中から最もすばらしいサービスがラインナップのときに紹介されます。
そして自分たちのホテルで同じようなサービスをおこなうとしたらどんなサービスが実現できるかをディスカッションしているそうです。
伝説のワォ・ストーリー
それでは、これこそワォ・ストーリーという伝説的なサービスのお話を引用します。
アメリカ・フロリダ州にあるリッツ・カールトン・ネイプルズでの出来事です。
ビーチ係が、砂浜に並んだビーチチェアを片付けていました。そこに1人の男性のお客様がやってきて、こう告げました。「今夜、この浜辺で恋人にプロポーズしたいんだ。できれば、ビーチチェアを1つ残しておいてくれないか」
時間が来たら椅子を片付けるのがそのスタッフの仕事でしたが、彼は「喜んで」と言ってにっこりと笑い、ビーチチェアを1つだけ残しておきました。
ここまでは少し気のきいたホテルマンなら誰でもできることです。ところがそのスタッフは違いました。彼は椅子のほかにビーチテーブルも1つ残しておいたのです。そしてテーブルの上に真っ白なテーブルクロスを敷き、お花とシャンパンを飾りました。
またプロポーズの際に男性の膝が汚れないように、椅子の前にタオルを畳んで敷いたのです。さらに彼はレストラン従業員に頼んでタキシードを借り、Tシャツに短パンといういつものユニフォームから手早く着替えました。手には白いクロスをかけ、準備を整えてカップルが来るのを待っていました。
お客様が言葉にされた要望は、ビーチチェアを1つ残しておくことだったのにもかかわらず、です。(社会人として大切なことはすべてリッツ・カールトンで学んだ / 清水健一郎[著]25ページより引用)
ワォ・ストーリーは、クレドをもとにして従業員が自らの判断で行動するからこそ生まれる感動のサービスです。
クレドは自ら考えて行動する従業員が育つという一つの一例です。
まとめ
今回はあらためてクレドについての説明のほか、クレドの作り方やクレドを作る費用、そしてクレドを導入したときに期待できいる効果などについてご紹介してきました。
クレドを導入している企業としてザ・リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンはあまりにも有名ですが、企業の規模や業種に関係なくクレドを作り導入し、浸透させていくことはコンプライアンスの遵守はもちろんのこと企業と従業員の成長にもつながっています。
現在企業の規模や業種に関係なく自分たちのクレドを作り、導入に成功している企業やお店が増えています。ぜひあなたもオリジナルのクレドを作り会社経営に活かしてください。
またクレドの導入ははやいと思っている場合でも、今のうちからクレドを学んでおくことは決して無駄ではないと思います。
記事/友松はじめ
クレド勉強会 友松はじめ
勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる
現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中