著者:友松はじめ
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クレドってそもそも何?

第四章、クレドの作成に入ってきました。
ここで改めて著者の林田さんがクレドについて説明をしてくれています。
クレドのことがよくわからない人もクレドのことをよく知っている人も読んでいただけたらうれしいです。

 

クレドは社訓でしょ?

林田さんは51歳の時、30数年勤めた会社を辞めて、一般採用でリッツ・カールトンに幹部候補として入社しました。
入社してすぐに、ラミネート加工された3つ折りにすると名刺サイズになるカードをホテルからもらいました。
それがクレドカードでした。

カードの内容について特に説明がなかったようで、林田さんはカードの内容を読んで社訓のようなものだろうと思ったのでした。
そしてクレドカードを渡されてしばらくたったころ、ホテルのマネージャーからクレドについて、こう質問されたそうです。

「あなたはクレドを部下にたいして具体的にどのように指導していますか?」

この言葉で、自分はクレドをもとにして仕事をしていなかったことに気がつきました。
そしてクレドには、あーしろ、こーしろと事細かく書かれていないのは、クレドを自分なりに考えて毎日の仕事の中で実践するものなんだということに気がついたそうです。

リッツ・カールトンの成功の秘密はクレドであることは多くの人が知っています。
そしてそのことは多くの書籍に書かれています。
でも、入社当時の林田さんのように、クレドのことを『社訓のようなもの』と思って読んでしまうと、あまりにも普遍的なことなのでガッカリするかもしれません。

実際、私もはじめてクレドを読んだときには、書かれている内容があまりにも当たり前すぎて、この文章のどこに、あれだけのリッツ・カールトンの成功に結びついているのかまったく理解ができませんでした。

でもリッツ・カールトンではクレドがすべての行動のよりどころになっているのは間違いないわけです。
よりどころになっていなければ、1997年に大阪にグランドオープンしてたった1年で完済ホテルNo.1、その後も数々の賞を受賞するようなレガシーは実現不可能なんですよね。

クレドをマニュアルととらえるなら、行動を細かく決めたマニュアルになっているはずです。
でもリッツ・カールトンのクレドはシンプルです。

リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。

私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。

リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。
(ザ・リッツ・カールトン公式ホームページより引用)

細かな行動は書かれていません。
このクレドからスタッフたちは自分ならどうするのか? と考えて行動するそうです。
考えたり行動したりする基がこのクレドなので、人は違っても統一感はでてくるようです。
また、統一感が出せるように毎日のラインナップでディスカッションをしてクレドの浸透をしているのですが。

 

NLPのポジションチェンジや多重記述と同じ

自分ならどう考えるか、どう行動するか?
お客様の感じるこころのこもったおもてなしとはどんなものだろうか?
同僚が心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気をお客様に楽しんでもらうとしたら、どんな行動、サービスになるだろうか?

こういったクレドを基にした思考は日常茶飯事だそうです。
もう習慣化ですよね。
シンプルなクレドを基に思考したり行動したりすること、自分だったら、お客様だったら、同僚だったら、後輩だったら、上司だったら、会社だったら……

このように考えるのはNLPでは多重記述と言ったり、ポジションチェンジと言ったりします。
リッツ・カールトンの事例だけだと、

『リッツ・カールトンのスタンプが優秀だからできること』

と考えてしまう人もいます。
そう考えてしまうと、思考も行動もストップしてしまいます。
そうじゃないんです。

NLPにも多重記述とかポジションチェンジというテクノロジーがあって、やり方が分かれば実際にだれにでもできることなんです。
人間はこういった考え方があることを知らないとどうしても自分を基準に考えてしまいがちです。

自分を中心に考えてしまうと思考も行動も広がりません。
そういう意味でもクレドを基本にして思考や行動を考えることは自分ではない状態で思考することになると私は考えます。
NLPのポジションチェンジや多重記述と同じですね。

多重記述は、自分ではない第三者になりきって感じたり考えたりして新しい思考や行動のパターンを自分に取り入れるというテクノロジーです。
ポジションチェンジも同じように、自分の視点から抜け出して、相手の視点や自分とも相手ともまったく関係の無い第三者の視点になって思考することができるテクノロジーです。

多重記述やポジションチェンジが日常的にできるようになると、つねにニュートラルな状態でいられるので思考や行動が偏ることがありません。

クレドもこれと同じようなもので、しかもリッツ・カールトンというフレームがあるので大きく逸脱するおそれもありません。
そういう意味でもクレドは会社に導入するメリットが大きいと思います。

クレドを社訓として理解してしまうと、そこで思考はストップしてしまい、リッツ・カールトンのような効果は期待できませんが今お話したようなメリットがあることを理解してクレドを眺めて見ると、クレドを会社に導入した後には、たくたんのメリットが生まれてくることがイメージできると思います。

 

《つづく》

 

《参考文献》伝説のホテルマンが説く IT企業のホスピタリティ戦略 / 林田正光(著)

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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