著者:清水健一郎
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お客様の希望に寄り添った対応

お客様の希望に寄り添った対応

リッツ・カールトンのクレドに書かれているサービスの3ステップの2ステップですね。
ここでサービスの3ステップをご紹介させていただきます。
前回の「心からのあいさつ」はサービスの3ステップの1ステップでした。

サービスの3ステップ

1.あたたかい、心からのごあいさつを。
お客様をお名前でお呼びするよう心がけます。

2.お客様のニーズを先読みしお答えします。

3.感じのよいお見送りを。
さようならのごあいさつは心をこめて。
できるだけお客様のお名前をそえるよう心がけます。
(リッツ・カールトンのクレドカードから引用)

このサービスの3ステップ、サービス業に従事されている方々からすると、特別ではなく、ごく当たり前の事が書かれています。
しかし、前回のコラムに書かせていただいたように、ラインナップ(リッツ式朝礼)のディスカッションにより無限に広がっていきます。

話は少しそれるかもしれませんが、リッツ・カールトン以外のサービス業に従事されている方々は、このサービスの3ステップやクレドカードに書かれている内容を読まれ、多くの方が、

「クレドって、別にたいしたことないね」
「クレドって、当たり前の事しか書いてないね」

と仰ることが、とても多かった。
というよりも、ほぼ皆さん、このように言われました。

つまり真に

  • 「あたたかい、心からのあいさつ」とは何か?
  • 「お客様をお名前でお呼びする」のはなぜか?
  • 「お客様のニーズを先読み」とはどういったことか?
  • 「ニーズの先読み」は、どうやって先読みするのか?
  • そしてそれを従業員にどの様に伝えるのか?
  • どのように実践してもらうのか?
  • 「感じのよいお見送り」や「さようならのごあいさつは心をこめて」はなぜ必要なのか?

などなど、リッツ・カールトン在籍中、先輩、上司からラインナップで投げかけられた質問の数は無数にあります。
唱和する事にあまり意味が無いとは言いません。

しかし、質問される、質問する事、ラインナップでのディスカッションがいかに重要か、お分かりいただけます。

話をもどすと、シュルツ氏は、

ここで大事なことはお客様の意向であって、あなたの事情ではない。あなたは売りたいと思っている。当然だ。しかし、大切なのはお客様がどう考えているかだ。

私は、このシュルツ氏の言葉を本当に理解できたのは、リッツ・カールトン在籍中ではなく、実は地元のダイニングバー“ハッシュ”で、当時のオーナーと仕事をさせていただいた時にオーナーから教えていただきました。

ハッシュのオーナーが、「ワインを売っていきたい」と、言う事だったので、私は、リッツ・カールトンの時と同様に、お客様にワインをおススメして売りだしました。

数か月後には、「地元でワインを楽しむならハッシュ」と言われるほど、「ワインの店」と言うブランドが出来上がっていて、お客様におススメしなくてもワインが売れる店になりました。

ある日、ハッシュのオーナーが常連のお客様に、私がいかにしてワインを売っているのかを話した時がありました。
その時の話が、私にとって少し衝撃的だったので、今でも鮮明に覚えています。

それは、「ケンちゃん(私の事です)は、別にワインを売ろうとしてない」というのです。もちろん私はワインを売るためにお客様におススメしてきましたし、ワインの種類を増やしたり、ワインが売れるために自身のワイングラスを店に持ってきて飾ったりしていました。
そこもこれも、ワインを売るためです。

しかし、なぜハッシュのオーナーは、
「ケンちゃん(私の事です)は、別にワインを売ろうとしてない」
と、言ったのか?

それは、オーナー曰く
「ケンちゃんは、お客様の欲しがっているものをおススメしている。時にお客様自身も何が欲しいのか明確に分かってらっしゃらない場合は、ケンちゃんから質問することでお客様の要望を明確にして、ピッタリのアイテムを提案している。つまり、ワインにこだわっているわけでなく、お客様の要望にこだわっていて、その要望を満たすアイテムとしてワインをよく提案しているだけ」といったのです。

正直、リッツ・カールトン在籍中は、当たり前すぎて気が付く事が出来なかった事の一つでした。

書籍の中でもシュルツ氏は

「よろしけれは、お手伝いしましょうか?何なりとお申し付けください」
そして、お客様の言葉に耳を傾ける。お客様が何を考えているかを、頭をフル回転させて探しあてる。はっきりした答えが返ってこないかもしれないし、探しているものをうまく説明できずに手こずるかもしれない。そんなとき、あなたは探偵のようにならなくてはならない。

リッツ・カールトン在籍中、スタッフ全員が探偵でした。
映画やドラマに出てくる探偵の多くは、同業の探偵に対してライバル関係だったりしますが、リッツ・カールトンでは、恐ろしくチームワークの良い探偵達です。
そして、その探偵達を育てたのが、クレドとクレドを使ったディスカッションなのです。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

ワインがほしいわけでもないし、お客様が何を欲しいのかもわかっていない場合は、探偵になったつもりで提案するという考え方はサービスの3ステップのステップ2に通じる、わかりやすいたとえ話が入った清水先生の今回のコラムでした。

私が経験した職場の状況でいえば、5人ほどの営業マンがいる小さな会社で一人だけチャラい営業マンがいました。
その人は実家がお金持ちでこの会社に入る前まで会社員になったことがありませんでした。
数年ひきこもって一日中オンラインゲーム三昧。
なぜこの会社に入社したのか経緯は忘れましたが、この人が営業成績トップでした。

この人のモットーが、「相手と友だちのように仲良くなること」だったのですが、大事な友だちが困らないために会社の商品を提案するし、できないことはできないというし、大事な友だちのために仕事をしている。
全ては友だちのため。

しゃべり方も仕草も相変わらずチャラいんですが営業部長になってました。
お客様からの信頼も厚いみたいです。
今回の清水先生のコラムを読んで、その人のことを思い出しました。
できる人は、人それぞれに信じて疑わないものがあるんですね。

 

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この記事を書いた人

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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