著者:清水健一郎
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リッツ・カールトン流苦情対応

今回のコラムは、前回の続き苦情対応です。
社会人になって20数年の間にビジネス書を読んでいて、『誠意を持って対応する』や『こうしていれば、このケースの苦情は発生しないもんだ』と、明確に苦情対応の仕方が書かれていない本が何冊もありました。

もちろん、その中には有名ホテルの社長、総支配人といった肩書をお持ちの方も何人もおられました。
そのようなビジネス書の著者は、サービス業には長年従事されておられ、社内での地位はあるのですが、出世したため早い段階で現場を離れてらっしゃるケースがほとんどだったと記憶しています。

コラムを読んでいただいている皆様が知りたいと思ってらっしゃる事、それは、苦情が発生した際の明確な対応方法だと思います。
そして、その対処方法には基本があり実はその基本はそんなに多くありません。

前回も申したように、おそらく世界どこにいっても通用しますし、現代だけ通用するのではなく昔も今も未来永劫通用する苦情対応の原点、人間の原理原則に基づいたいたってシンプルな方法だと考えます。
そこで、今回も著者のシュルツ氏が紹介してくださる基本を基にお話を進めていこうかと思います。

シュルツ氏が著書の中で紹介されている基本は7つです。

1.軽く扱わない。
2.自分の事として引き受ける
3.「私が」と言う
4.ゆるしを求める
5.こちらの都合を押し付けない
6.専門知識を誇示しない
7.物取りのための苦情だと思ってはならない
(82~85ページより引用)

上記の7つをご覧になり
「わかりきったことだ」
「いまさら聞くまでもないのでは?」
とお思いになられた方もおられるかもしれません。
そう、今回の苦情対応の基本は既に皆さんがご存知の事だと思います。

これからお話させていただく大前提として知っておいていただきたい事は、マスターと呼ばれる方々(有名なマスター例 マスターヨーダ)は、何をマスターしているのかというと基本をマスターしているからこそマスターと呼ばれるのです。

例えば経験豊かなホテルマンがリッツ・カールトンに中途採用で働いた際、一番驚かれる事の一つなのですが、クレドカードに書かれている内容や今回の苦情対応の方法などは、数年ホテル、社会人を経験した方にとって当たり前の事ばかりなのです。
例を上げれば、クレド(信条)の一節で、

リッツ・カールトン・ホテルは、お客様への心のこもったおもてなしと、快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています
(リッツ・カールトンのクレドカードより引用)

ホテルで数年経験を積んだホテリエからすると、当たり前の事であって、特別な事が書かれているように思えません。

しかし、ラインナップ(リッツ式朝礼)で、ラインナップリーダーから質問されます。
「あなたが考える『心のこもったおもてなし』とは具体的にどのような『おもてなし』ですか? そして、その『おもてなし』をどの様に実践していますか? 後輩、部下にどのように教育し理解してもらい実践してもらっていますか? 具体的に答えてください」
実際、リッツ・カールトン大阪開業の際、集まった多くのホテル経験者が、改めて考えさせられました。

だからこそ、今回の苦情対応の基本も『当たり前の事』なのです。
その当たり前の事を質問され、考え、答え、ディスカッションする事で、さらに磨かれていくのです。
毎日、唱和しているだけでは磨かれません。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

ラインナップのいいところはクレドをつかってディスカッションです。
今回の清水先生のコラムを読んでいて気づいたことがあります。
それはあたりまえの言葉の中には大切なことが圧縮されているんだということです。
だから書いてある言葉を字面のまま読んでしまうとあたりまえすぎてガッカリする。

でも『具体的には?』と聞かれてはじめて圧縮された内容がほぐされて現れてくる。
自分の会社だったらどういうサービスや商品になるだろう?
自分だったらどんな作業をするだろう?

そう考えることでクレドが活かされるのではないでしょうか。
ラインナップのディスカッションはクレドの運用に必須だとあらためて思います。

 

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この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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