著者:清水健一郎
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一枚のクレドカードに込められた企業の経営理念と経営理念を常に携帯することの意味

クレドとは何か?
今回の著者である実島氏が、クレドを導入することで実島氏が代表を務めるトリプルグッド税理士法人が、第一回会計事務所甲子園で日本一位になったり、Great Place to Work Institute Japanが実施している、「働きがいのある会社」ランキングで1位になった理由が、本書の22ページのタイトルである『一枚のクレドカードに込められた企業の経営理念、経営理念を常に携帯することの意味』の題名からもわかりました。

クレドを導入したにもかかわらず、会社が良い方向に進んでいかない。
何の変化もない。
このような、クレド経営の失敗は、ここにあるのです。

一枚のカードに込められた企業の経営理念
経営理念を常に携帯することの意味(22ページより引用)

クレド経営の失敗は、クレドをカードにして常に携帯する重要性を理解していなかったことにあります。

私のリッツ時代の元上司で、私の経営する飲食店バスティアンクントラーリのお客様第一号にもなってくださった故林田正光氏が、生前によく仰っていたのが、

「クレドは作ってからがスタート、作るよりもスタッフに浸透させるほうが難しい」
「スタッフに浸透させなければクレドの意味がないというのに、大事に机の引き出しにしまっている経営者があまりにも多い」

正社員も契約社員もアルバイトも全てのスタッフが、クレドカードを携帯して初めてクレド経営のスタートになるのです。

全スタッフがクレドカードを携帯するのは、あくまでスタートです。
携帯しただけでは、学生手帳と同じです。
私は学生時代、学生手帳を開いて読んだことなど一度もなかった記憶があります。
せいぜい生活指導の先生に持ち物検査で注意されないようにカバンの一番奥に入っていた程度です。

林田さんが言っていた「机の引き出しにしまってある」と、同じですね。

クレドカードを携帯し活用しなければ、スタッフに経営理念が浸透しづらく、クレドを導入した意味がなくなります。

よく成功者達なら必ず行っている作業と同じ。
つまり、携帯している自身の手帳に夢や目標を書き込んで、定期的に読み返しては確認し、自身の夢や目標に対してブレが無いように意識を定期修正する作業と同じなのです。

では、どのようにクレドを活用するのか?
今までコラムを読んでいただいた方はもうお分かりですね。
そう、ラインナップです。
ラインナップをご存知でない方のためにご説明させていただきます。

ラインナップとは、毎日リッツ・カールトンで行われている、就業前に行うミーティングの事で、よく一般企業の朝礼に近いものと思われています。
しかしその中身は大きく違っています。

朝礼は会社、上司からのインフォメーション(業務報告)が中心なのに対して、ラインナップはインフォメーションから始まり、クエスチョン(質問)。
そして、ディスカッション(討論、議論)に至りますが、ラインナップの中心はディスカッションです。

なぜ、ディスカッションするのかと言いますと、クレドカードに書かれている内容は、サービス業に従事されていない方でも、一度読んでいただくとサービス業として当たり前の事が書かれていると感じるはずです。

例えば「リッツ・カールトン・ホテルは、お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することを、もっとも大切な使命とこころえています」など、殆どの方が「当たり前の事だね」と思い、そこで考える事をやめるのです。
「当たり前」と思われても実際、「お客様への心からのおもてなし」を分っておられる方は、実は少ないと思うのです。

「お客様への心からのおもてなしとは、具体的にどの様なおもてなしですか?」と質問され答えられる方はどのくらいおられるのでしょうか?
そのため、リッツでは「お客様への心からのおもてなしとは、具体的にどの様なおもてなしですか? そして、どの様な事を実践していますか?」とスタッフに質問して、1人が答え、その後は皆でディスカッションしていました。

たま、世界中のリッツ・カールトンで実践された伝説的サービスエピソード“ワァオストーリー”をラインナップで紹介して、リーダーが「あなた達なら、この場合どんなアイデアを出しますか? どう実践しますか?」と質問をして、ラインナップに参加しているスタッフでディスカッションして、明確なアイデアを出し、各々の現場ですぐに使える様に変化させ、さらに進化させてしまう場もラインナップでした。

クレドカードに書かれた内容からは、毎日1つの項目を読み上げ、質問をもらいディスカッションしていました。

よく若いスタッフ中心に質問し、ディスカッションし、明確な答えを出します。
もちろん答えは無数にあります。
クレドカードに書かれた内容を一日一つづつ質問する事で、日頃、取るべき行動が明確になっていき習慣化すれば、クレドを無意識に実践できるようになります。
これが、クレドをスタッフに浸透させ実践させる一番の方法だと私は信じています。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

以前、清水先生が現役時代のときのお話を聞いた時、リッツ・カールトン大阪がオープンした時よりも日本のホテルランキングで1位になり、メディアで紹介されるようになると多くの方がホテルの施設を利用するようになりクレドカードを欲しがるお客様が増えたそうです。

私はその話を聞いていて、クレドカードをもらうのが目的だったんだろうなと思いました。
クレドカードを読んでみると、リッツ・カールトン大阪の成功はクレドがあったから。

そんな風に言われていたので、ものすごく期待してカードを読んでみたところ、だれでも知っているようなことしか書いていない。
だれでも作れるようなことしか書かれていないことに多くの経営者はがっかりしたんじゃないかと思います。

私も初めてクレドカードを読んだときはそう思いました。
でも、当たり前と思うことでも、なぜこれが採用されているんだろう? その意図はなんだろう? なんて考えると意味が想像できますよね。

それからクレドを定着させて機能させるにはどうしたらいいか?
その方法も答えも今回の清水先生のコラムの中に書かれていますね。
クレドの内容をディスカッションする場所と機会を用意することです。

たぶんこのコラムをお読みになっている方の会社に朝礼があると思うのですが、この朝礼を少し変えることでリッツ・カールトンでやっているラインナップができるようになります。
ラインナップがあればクレドは会社とスタッフに浸透しやすくなりますね。

 

《つづく》

 

記事を書いた人/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。

リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

 

編集/友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。

本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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