著者:清水健一郎
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私には、サービス業界で働けて、「幸せだったなぁ」と思える体験が色々とあります。

その中でも最近、ふと強く感じたのが、「絆」」の存在。
ワインだけでなく料理、サービス、マネージメントまで、横のつながり=絆が非常に強いからです。

そして、その「絆」が生み出すものが、感性の物差し。

この物差しを伸ばしていける人こそが、ホスピタリティのあふれるサービスを提供することができる人です。

と、ちょっと漠然としていますよね。
わかりやすい例をあげましょう。

感性の物差しを伸ばすとはどういうことか

絆が生まれる瞬間(高野 登氏著)の中に、こんな一文が出てきます。

ワインが好きな二人の若いホテルマンがいたとします。A君は週に一度、二千円くらいのワインを楽しんでいます。他方、B君はやはり同じようにデイリーワインを楽しんでいますが、月に一回は、さらに十人ほど仲間を募り、一人二千円ずつ出し合って二万円前後のワインを味わっています。仲間のソムリエを呼んでワインにまつわるいろいろな話を聞いています。
AもBも、好きなワインにかけるお金は同じです。

二年後の二人のワインの知識、ワインを感じる感性、そして、その知識と感性を活かしたサービスには、大きな差ができていると言う事が説明されています。

これが物差しですね。

単純にワインに触れる数も違えば、ソムリエのような専門家から教えてもらった分、知識の量や深さも大きく違ってくるでしょう。

業界範囲で次の若い世代を育てる

私は若い時、先輩や上司の紹介で他のホテルに勉強と言う名の食事に行くと、当時の若い私達の予算に合わせて様々なワインやチーズ、料理を勉強させていただきました。
技術、知識なども惜しみなく披露してくださいました。

仕事終わりに友人と二人で、百貨店のワイン売り場の試飲コーナーにいくと、担当のソムリエの方が、「君らまた来たのか。今日は特別にこのワインを試飲させてあげるよ。チーズ売り場もいいの入っているし、後から行っとき」と笑顔で試飲させていただいたものです。

ホテル範囲、会社範囲で人を育てるのではなく、業界範囲で次の若い世代を育てる。

実際、他社の同業者同士、一般の方々からはライバル関係だと思われている者同士が、とても仲良くやっているのが、私達の業界の常識です。

この様に、自身の感性を磨く向上心を持てば、だれかが助けてくれる。手伝ってくれる。
特に若者の頑張っている姿を見れば、褒めてあげたくなったり、教えてあげたくなるものです。

高野氏の言う「感性の物差し」を伸ばせる人と言うのは、絆を生み出す事の出来る人。

上記の例の様に、自分だけでワインを購入して勉強しようと思っても、限界はあります。

男性と女性の味、香りの感じ方の違い。
ワインの好みは人それぞれ、10人の感じ方、10人の感性を発言し合ってこそ、生きた知識、感性に成長していく。

絆なくして「感性の物差し」を大きく伸ばす事は不可能だと私は思います。
そんな絆を大切にしてきたこの業界に感謝せずには、いられません。

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