著者:清水健一郎
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サービスを提供していると、色んなことが起こります。
色んなお客様が来店されますし、トラブルもあるでしょう。

その中でも、新しい仕事を作り出し、取り組んでいくときには、リスクが伴うものです。
不慣れであったり、クリアすべきハードルがたくさんあったり・・・

こういった時、どのような考えで取り組んでいくかで、プロかどうか、が分かれてくるように思います。

そこで今回は、プロのサービスマンとして、だけではなく、ビジネスマンとしての非常に大切な考え方についてお伝えしてみたいと思います。

できない理由を探してしまう

たいていの場合、私たちの頭は、「できない理由」を考えようとします。

「このサービスを新しく提供してみたい。でも・・・これは経験したことない(できない理由)し・・・」
「これ面白いと思うけど・・・予算的に無理(できない理由)か・・・」

など、色々な「できない理由」をポンポン思いつきます。
試しにやってみてください。いくらでも出てくると思います。

もちろん、この事に関して
「そんなことはない。」
「自分の抱えている問題は、そうはいかない。」
と考えられる方は、少なくないのではないでしょうか?
時に私もその一人になっている事があります。

そこで、私が貯金、貯蓄ほぼ0と言う状態で独立の際、経験したエピソードを1つご紹介します。

私がバスティアンオープンのため、資金集めにかかり始めた頃、私の幼馴染に銀行員がいる事を思い出し電話をしました。

「M(幼馴染の友人)久しぶり、健(私)やけど元気してる?」

Mは、私からの電話に喜んでくれたようで、

「おおー!健、久しぶり、今、何してるん?」

とテンションが少し高めでした。
そして、私がこれから飲食店を開業するための資金について、 Mに色々と聞いてみようと思い電話した事を伝えると、

「開業って、オーナーになるのすごいねぇ。で、貯蓄は幾ら持ってて、担保とかあるの?」

と銀行員としては当然の質問、それに対して私は、

「貯蓄は0 に等しい。担保なんかあるかいな。」

と上機嫌に答えました。
Mから帰ってきた答えは、私の事を思っての説教入りの言葉でした。

「俺達、もう30歳やぞ! 貯蓄もない。担保もない人間にお金を貸す金融機関なんて存在せんぞ。もうちょっと、将来考えて行動したほうがええ。」

久々の友人との会話、私の事を心配しての説教など、彼のそんな私を大切に思う言葉を聴いていると、私はとてもテンションが上がっていました。
そして、彼との会話が終わると私は、

「ありがとう!久しぶりに声聞けて嬉しかったし、ますますやる気が沸いてきた!頑張るわ!」

その言葉にMはあきれた様で、数ヶ月後に何度も電話を入れたのですが、 電話に出てもらえませんでした。

実は、その前に私は、独立開業の手引きをしてくれた親友(彼も24歳の時、資金0から独立の経験あり)に、一つアドバイスされていました。

「これからオマエ(私、清水)が出す結果は、常識的な結果ではなく、一般的には非常識的な結果になる。そこで、知人に常識的な専門家がおったら、一度相談してみろ。今から資金集めするわけやから、銀行員とかがいい。そこでわかるのは、普通の専門家は出来ない理由を全て知っているから専門家や。だから友達やったら必ずお前の行動を止めようとしてくれるはず。そこで、止めてくれる事に感謝する事。しかし、専門家が出来ないと言っても、これからお前はやるのだから、そこでお前の精神にブレが生じる事がないか確認してみろ。ブレが生じなかったら、余計自信が沸いてくるから。」
と言われていたのです。

Mとは数年後、また連絡を取り合う仲になっていました。
電話をする相手も、私はMで本当に良かったと思いました。
物心つく頃からの幼馴染で、声を聞くだけでも元気になれましたし、私の事を親身になって止めてくれた事と、そのMの心のこもった言葉ですら私の精神にブレが全く生じなかった事で、更なる自信に繋がったのです。

例え、どんなに大喧嘩したとしても、許しあえる自信があったからです。私は、親友とは、分かり合える者同士ではなく、許しあえる者だと思います。だからこそ、Mに連絡したと思っています。

どうすればできるか、という思考で取り組もう

私の恩師である林田さんは、著書「心のこもったおもてなしを実現するサービスの手帳」の中で、最後にこう仰っておられます。

できない理由をさがすのは、今この瞬間からやめましょう。そのかわりに、「どうすればできるか」を考えてください。

新卒入社で、リッツで働いていた20歳の頃、毎日、考えていたのは
「どうすればリッツを日本一のホテルにすることができるのか?」
「どうすれば、日本一のサービスを提供できるのか?」
ばかり考えていました。

もちろん、私一人だけではありません。

そして、なぜ20歳の若者達がこんな事を毎日考えていたのか、それは、毎日ラインナップの際、ラインナップリーダーがクレドをもとに、私達に
「どうすればリッツを日本一のホテルにすることができるのか?」
「どうすれば、日本一のサービスを提供できるのか?」
という質問を投げかけられていたからこそ、考える癖がついていたのだと確信しています。

その考える癖が、私の場合、独立の際に役にたったのだと、また改めてリッツに感謝せずにはいられなくなりました。

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