リッツ・カールトンの『モットー』は仮面ライダーの変身ベルトと同じである
今度のコラムは『リッツ・カールトン20の秘密』です。
この本の著者、井上富紀子さんはリッツ・カールトンの関係者ではありません。
なぜ、リッツ・カールトンの部外者である井上さんが、リッツ・カールトンの名前が付いた、しかも当時、ザ・リッツ・カールトン東京総支配人だった、リコ・ドゥブランクさんの解説付きの本が出版できたのか?
いくら井上さんが会社経営者であっても、そんな本が出版できるはずがありません。
そうなる、キッカケがあったはずです。
そのキッカケは、同じく会社経営者だったご主人の代わりに出席した、リッツ・カールトン大阪でのホスピタリティセミナーでした。前払いしたセミナー費用がもったいないからと出席したそのセミナーで、リッツ・カールトンが世界に59ヶ所あることを知り、59ヶ所に宿泊したら何かが変わるかも! と思ったそうです。
質疑応答の時に、セミナー登壇者の一人、リッツ・カールトン大阪クオリティー部長、桧垣真理子さんに「世界59ヶ所のリッツ・カールトンに宿泊できたらご褒美ください」みたいなことを言って、この旅がはじまりました。
すごいですね。
会社経営、主婦業、そして両親の介護、フルマラソンとボディビルの挑戦、ポジティブな活動とネガティブになってしまいそうな家庭の事情、そういうものをグチャグチャに抱えながら、何か直感めいたひらめきで、世界のリッツ・カールトンを巡る旅を井上さんははじめました。
ツアーを一切使わず、ホテルの手配から飛行機、レンタカーの手配、その他諸々すべて自分でやったそうです。発想もぶっ飛んでいますが、バイタリティーも凄いです。
当時のリッツ・カールトン59ヶ所をすべて制覇しているのですからね。
制覇したからこそ、その『ご褒美』として、この本の出版もあったのかな? と思います。
こんなお客様がいたら、リッツは放っておかないでしょうね。
モットー
井上さんが最初に訪れたリッツ・カールトンは、ザ・リッツ・カールトン・ロッジ・レイノルズ・プランテーション
すごい敷地ですね!
960万坪の土地に5つのゴルフ場があります。
グーグルマップで観ると、レイノルズ・プランテーションの大きさが実感できますね。
アトランタから車で1時間半ほどの場所になります。
井上さんは、プールサイドでくつろぎたくなって、ホテル内を歩いてプールサイドに歩いている時、ホテル内が広すぎて道に迷ってしまいました。
その時、ハウスキーピングの女性に道を訪ねます。
女性は「ご案内しますね」と、案内してくれました。
彼女の名前はブレンダさん。
プールサイドにつくまでの間、気軽に話しかけてくれて、ポケットからクレドカードを取り出してクレドカードの説明してくれたそうです。
「ここには私達スタッフがすべきことが、すべて書かれているんです。いつも持って歩いています。何度読み返しても新たな発見があるんですよ」(24ページより引用)
清水先生から聞いていたことですが、アメリカのリッツ・カールトンでも同じなんですね!
ちょっと感動しました。
“We are Ladies and Gentlemen serving Ladies and Gentlemen”
それは、リッツ・カールトンの「モットー」を示した箇所だった。
「私はこの部分がいちばん気に入っています」
言葉には出さずとも、彼女の表情は誇りに満ちて、”こんなことをいうホテルはほかにはないのよ”ち胸を張っているように見えた。(24ページより引用)
モットーが出てきました。
ブレンダさんは、井上さんがこれから、世界中のリッツ・カールトンを制覇しようとしていること、『クレド』の知識を持っていることを知りません。(ミスティークで、実は知っていたりして)
でも、普通のゲストに対しても、楽しませようとしてくれる姿勢、それはハウスキーピングの仕事でも変わらないことが、理解できました。
リコ・ドゥブランクさんの解説です。
『クレド』はラテン語です。
カトリックのミサの信仰宣言の初めの句、「われは信ず」に由来するそうです。
宗教的な典礼文から派生した言葉とはいえ、私たちにとって「クレド」は宗教の戒律ではありません。もちろんマニュアルでもありません。
Belief……まさに信条なのです。(28ページより引用)
クレドを業務マニュアルと考える人もいますが、ここにも書いている通り、クレドはマニュアルではありません。
モットーの話に戻ります。
リッツ・カールトンが考える、Ladies and Gentlemen つまり紳士淑女とは、どんな時でも周りの人たちを心地よくさせる存在であるべき。と言っています。
それが本当の大人で、紳士淑女なんだと。
紳士淑女にお仕えする私たちも紳士淑女。これはお互いを尊敬し合う精神で、へりくだったり、召使いではないのです。
このモットーがあるから、スタッフは紳士淑女に『変身』できる。
例えるなら、普通の青年が、正義の味方、仮面ライダーに変身できる、変身ベルトと同じものです。
以前読んだ『伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし』の著者、前田さんも書いていましたが、オンオフの切り替えはとても大切で、仕事場はステージだと。
だから、主人公が変身ベルトが無いと正義の味方、仮面ライダーに変身できないように、リッツ・カールトンのスタッフも、モットーが無いと紳士淑女にはなれなかったはず。
やはり、クレド、そしていつでも読み返し、確認することができるクレドカードが必要なのだと思う、今日のエピソードでした。
《つづく》
記事/友松はじめ
クレド勉強会 友松はじめ
勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる
現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中