著者:清水健一郎
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業務マニュアルとクレド、どちらが優先されるべきか?

●業務マニュアルとクレド

●作業手順書とクレド

 

クレドコラム

業務マニュアルとクレド4

 

ここまで、業務マニュアルとクレドのお話をさせていただいてきました。

その中で、様々な疑問を持たれた方は少なくないと思います。

 

きっと、私が想像もできない疑問を持たれた方もおられると思いますが、よくいただく疑問をご紹介させていただきます。

それは、クレドを浸透させるより業務マニュアル、作業手順を浸透させる方が早く従業員を生産的な仕事をさせられるのでは?実践的になるのでは?と、言う質問です。

 

とても理解できます。

 

私が1997年リッツ・カールトン大阪の開業を経験させていただいた時、ホテルオープン目前と言うのに、新卒のレストランスタッフに皿の持ち方も練習させない。

メニューの勉強もさせない。勉強させる事と言えば、クレド! クレド! です。

 

クレドの勉強が8割9割と、「これでホテルがオープンできるのか?」スタッフ全員、不安でしょうがなかった事を覚えています。

そして、オープンを迎えましたが、問題に次ぐ問題、失敗に次ぐ失敗、もちろんお客様からの苦情の数も少なくなかったのが正直なところです。

 

しかし、数年後、そんな問題だらけ、失敗だらけ、苦情だらけのホテルが全国の名だたるホテルを抑えて,その名を世に示す事になったのは、疑う事なくクレドとクレド教育のおかげだったのです。

 

よく、職人気質の方は、後輩や部下と仕事をする際、仕事を教えるのがめんどうになり、自分でやった方が早いし、正確で、なにより自分が納得するからと言って、仕事を教える事をおろそかにして、自分でやってしまう方、多いのではないでしょうか?

 

実は、私もその一人です。

しかし、皆さん、自分の後輩を育てる。部下を育てると言うのは、会社のためになるだけでなく…

 

将来自分自身のためになる。

楽ができる。

次のステージにレベルアップする。

 

つまりは、自分自身に返ってくることを分かってはいるのです。

しかし、教えるのが面倒。自分がやった方が早い。安心できる。

と、考えてしまいます。

 

つまり、即戦力、即作業効率を向上させる事が目的であれば、業務マニュアルの方がクレドより勝っているかもしれません。

 

しかし、会社の将来、スタッフの将来を考えれば、業務マニュアルではスグに頭打ちになってしまうのです。

マニュアルが浸透した職場では、マニュアル以上の仕事、アイデア、教育を求めない心境になっている事がほとんどだからです。

業務マニュアルのクオリティが、仕事のクオリティになるからです。

 

しかし、マニュアルを超えたところにこそ、仕事の楽しさや、人の心に響くサービスがあると、私はリッツで教えていただきました。

マニュアルを超えたサービス、マニュアルを超えた仕事のために、リッツではクレドが存在していたのです。

 

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。

本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

 

リッツ・カールトンオープン前に、お皿の持ち方さえ練習させなかったなんて、ちょっと驚いています。オープンしてからしばらくは問題山積みだったと清水先生から聞いてはいましたが、こういうことだったのですね。

今回のコラムを読んでつながりました。

 

でもこれ、クレドが浸透しているリッツ・カールトンだからできたことではないでしょうか? クレドの導入を進めている私が言うと元も子もないのですが。(汗)

普通は、できるだけトラブルやお客様にご迷惑をかけないようにトレーニングもしますよ。

 

でも、私も今までリッツ関係の本を読んだり、清水先生から指導を受けたりした上で、このコラムを読むと、これはリッツらしいと言うのだろうか? と思ってしまいました。

絶対に、リッツ・カールトンの経営者はオープン後、しばらくすれば落ち着くと分かっていたのでしょう。

 

それに自分で考えて自分で動くスタッフが、クレドとラインナップで育っていくのですから、私が経営者でクレド導入の効果が分かっていたら同じことを選択したと思います。

それに、確かオープンして2年くらいで、大阪のホテルランキング1位を取ったのではなかったでしょうか?

 

そのリッツ・カールトンのオープン前からオープン、そしてリッツ・カールトンが日本中に知れ渡るまでの伝説の歴史と言われる時期を経験してきている清水先生から話が聞けるので、さらにクレドの研究が進みますね。

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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