著者:清水健一郎
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リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ
四方 啓暉(著)
出版元 河出書房新社

クレドには、ステークホルダーの幸せや満足が盛り込まれています。
ステークホルダーとは、利害関係者。
こう書くとややこしいのですが、要は会社の内部のみならず、取引先や地域社会を含んだ、関わる人や環境すべて、ということです。

今回は、そんな中でも、「尊敬」ということに焦点を当ててみたいと思います。

「尊敬される」ということは、どういうことか?

「尊敬される」ということは、どういうことでしょうか?
色々な形の尊敬があると思いますが、「リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ」を読みながら、考えてみたことがあります。

実はこの本の中で、最も私の興味を誘った部分がありまして、それはp31に書いてある、この言葉でした。

「ホテルの総支配人は、その町の経済や文化の中心でなければいけない。だからこそ、町のみんなから尊敬される」

この言葉は、著者の四方氏が高校生の時、深夜ラジオで当時の東京ヒルトンホテル副総支配人が話していたそうです。

四方氏が言うには、ホテルには、公的な役割があり、それを統括するリーダーが総支配人と言うことでした。

私は、この言葉を聞いて、独立開業の際の初心に帰るとともに、10年間の自身の経営を振り返ってみることにしたんです。

ちょっとお付き合いください。

私は当初、ホテルほどではないにしろ、「私が経営する店は地域の交流、ビジネスの場であり、私自身、町の人達から尊敬される人間になろう。」と考えていました。

常連客の若者が、これまた常連客の人生の先輩たちから人生の指南を受ける。
飲食店ですから、そういう環境を提供することができます。

そんなブランドを確立し、優秀な従業員を絶えず雇用し続けられる店づくりを目標にして、私は自分の店をオープンさせました。

ですから、お客様に「清水さんとこの従業員さん、末永くいてもらえるといいね。」といっていただいても、
「一日も早く従業員を卒業させてやり、独立成功を誰よりも応援する存在になるのが私の使命です」
と言っています。

実際、元アルバイト達は就職先で順調に出世し、卒業したシェフは二人、1人は東京の2つ星レストランの2番手のシェフになっています。
もう1人も独立してオーナーシェフとして順調に店を切り盛りしています。
私自身、私の考えが間違っていなかったと確信できる結果を出してくれています。

なぜ私がこの様な考えにいたったのか?

なぜ私がこの様な考えにいたったのか?

ホテル業界というのは、とても人の出入りの早い業界です。
入社したと思えば退社する。
同じホテルで10年、いや5年も在籍する人は何十人に一人のように思います。

実際、リッツ・カールトン大阪も例外ではなかったと思います。
しかし、リッツ・カールトンと他のホテルでは大きな違いがありました。
それは、私を含めリッツを嫌いになって辞めていく人があまりにも少なかったのです。

私は自身の著書に退職面接の際、橋本人事部長に「清水、リッツのこと嫌いになったのか?」と聞かれ、「僕はリッツを愛しています。
なぜならリッツが僕を愛してくれたから、僕もリッツを愛する事ができました。」と言って、リッツを退社した事を書いています。

「自分の可能性をもっと試してみたい。」
「もっと、リッツ以外の世界を経験したい。」

そんな、向上心の塊の様な人がリッツでは大勢育っています。
そして、リッツは手塩に掛けて育てたスタッフ達を快く送り出してくれたのです。
そんなリッツを嫌いになる人はいません。

「人やお金の流れは川の水と同じです」
とある著名な方から教えていただきました。

会社はその川から水路を造り自分の会社と言うため池に水を入れます。
水を澄んだまま確保するためには、たくさんの新しい水をいれ、澄んだままの水をたくさん出す。
もし、会社の中の水、即ち人、お金を入れるだけで、出さなかったら、その中の水は淀んでしまいますよね。

人の体もそうです。体に良い食事を取っても、出す事をしなければ健康になりません。

リッツにたくさんの澄んだ水、つまり優秀な人材、お金が次々流れ込むのは、リッツで栄養をたくわえて、綺麗なまま出してくれるからです。
そして、リッツから出た栄養価の高い水は下流の土地をさらに潤す水になるのです。

実際、リッツ卒業には成功者が多い様に思います。
リッツを卒業後に、リッツの哲学、ノウハウを実践し素晴らしい結果をだしている人が多いのです。

そんなホテル、会社で働いてみたいと思う人は多いのではないでしょうか?
つまり、さらに優秀な人材が集まる。

ですから、リッツはホテルとしてだけでなく、会社としても世間から尊敬されなければならないのです。
つまり、総支配人、従業員、リッツで働く全ての人は、みんなに尊敬される人でなければならなかったのです。

まとめ:尊敬される人になる。

尊敬される人になる。

何から手をつけるべきか、難しい様に思いますが、私がリッツで学んだ事は、接する人、特に身近な人から尊敬すべき対象だと意識することが第一歩だと教えていただきました。
例えば両親やご先祖様です。
歴史上の偉人達は、ご先祖様を尊敬している人が多いと思います。

そして、よくアルバイト達に言っていますが、人を下から見上げる様に接することです。
人を上から見下す人というのは、いつの間にか、その人が見下されている事が多々あります。
しかし、腰を低くし人を下から見上げる様に接していると、いつの間にか、その人が見上げられている様になるのです。

私は、このヒルトンの副総支配人の言う様に、

「ホテルの総支配人は、その町の経済や文化の中心でなければいけない。だからこそ、町のみんなから尊敬される」

これは、サービス業、製造業に限らず、社会人は、多かれ少なかれ、意識しなければならない事だと思います。

そして、それを実現するツールがまた、クレドでもあるということですね。

 

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。

リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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