クレドで小さなコミュニケーションを習慣化。会社を変える考え方
前回のコラムで、上司や先輩が、仕事や仕事に対しての心構えなどをどうやって部下や後輩に理解してもらうのか?について、「自分が理解される前に、まず相手を理解する」ことの大切さをお伝えしました。
※前回の記事はこちら
上司たるもの、自分が理解される前にまず相手を理解する
それに続き、今回は、「自分が理解される前に、まず相手を理解する」ためには、さらに具体的にどうすれば良いかを考えてみたいと思います。
小さなコミュニケーションから始めよう
まず、何から始めればいいのか。
その答えについては、「絆が生まれる瞬間」の中で高野氏も触れているように、まず小さなコミュニケーションから始めればいいでしょう。
小さなコミュニケーションとは、例えば、お茶を出してくれる社員に対して、上司が「ありがとう」とお礼をいう。「ご苦労様」と労いの言葉を掛ける。
そんな一言です。
そんな一言でも、ある会社とない会社では、社内の雰囲気はまるで違うでしょう。
また、そんな一言でも、人によっては、タイミングによっては、一生の思い出になる。そんなエピソードをご紹介させてください。
私の社会人一年目、リッツ・カールトン大阪開業後2か月目の時です。
仕事ができずに上司、先輩方から毎日、毎日叱られ、悩み、あんなに熱意をもって始めたホテルの仕事をいつ辞めようか、真剣に考え始めていた頃です。
そんなある日、働いていたレストラン、スプレンディードで料理をお客様のフロアに運ぶ仕事(ランナー)をしていた時、私は視線を感じました。
視線を感じる方を見ると、お食事中の1人の紳士が私を見つめておられたのです。
そして、その方は私の悩み、苦しみ全てを包み込むかのような笑顔で一言
「お仕事がんばってくださいね。」
と軽く会釈をされたのです。
その瞬間、私は気持ちが楽になり、思わず笑顔で
「はい、ありがとうございます。頑張ります。」
と言いました。
その時は理解できなかったのですが、この一言が私の心に強く響き、ホテルの仕事を続ける原動力になりました。
そしてなんと!その6年後、その紳士の方と再会しました。
場所は滋賀県米原市リゾートトラストホテルエクシブ琵琶湖、友人の誘いでエクシブ琵琶湖主催の美食会に参加した際、美食会でのスピーチをされたのが、その紳士、リゾートトラスト専務取締役 内山 敏彦氏だったのです。
私は思わず涙ぐんでしまいました。
後で先輩に教えていただいたのですが、リッツでお世話になった福井シェフの元同僚でご友人だったそうです。
それで、福井シェフを訪ねてリッツ大阪に来られていたとのこと。
ホテルでの修業の苦悩を経験されたからこそ、修業中の私の心中をさっし、私の心によりそってくださり、心からその一言「お仕事がんばってくださいね。」の一言をくださった。
そう思えて感謝の気持ちでイッパイになりました。
この様な専務取締役がいたからこそ、リゾートトラストは日本一のリゾートホテルチェーンに成長したと思っています。
コミュニケーションを取る習慣をシステム化したのがクレド
著書の中で高野氏は言います。
本気で人と向き合うためには、相手が誰であろうと、自分の心をオープンにする必要があります。
「若い者がわからない」
と言う前に、まずは年長者が手を大きく開いて、堂々と相手に差し出す勇気を持つ。そこから絆の芽が生まれるのではないかと思うのです。
そして、その行動の第一歩が、小さなコミュニケーションなのではないでしょうか?
その小さなコミュニケーションも時として、私のエピソードの様な一生の思い出になるかもしれません。
小さなコミュニケーションを取る勇気、取り続ける習慣が人生、会社の大きな宝になると思います。
その習慣をシステム化しているのが、リッツのクレドでもあるのです。