著者:友松はじめ
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心のこもったおもてなしを実現するサービスの手帳

元ザ・リッツ・カールトン大阪営業統括支配人/林田正光

 

第4章 サービスを超えたホスピタリティを実践する

 

サプライズ。

人を喜ばせる時に、一つの大きなポイントとなる要素ですよね。

サービス業でも、お客様に喜んでいただくために、サプライズは大切です。

 

しかし、「サプライズ」の意味を、「相手(お客様)をビックリさせること」と解釈されていることがあります。

これは、間違いではありませんが、誤解を生みだす考え方だと私は思います。

 

では、私の考える、そしてリッツで教えられてきたサプライズとは、いったい何なのでしょうか。

私の恩師、林田さんの著書から引用すると、、

 

「サプライズとは、お客様をビックリさせることではありません。予想や期待を上回ることなのです」

 

お客様がご来店される際、予想を超えるレベルのサービスをご提供すると、そこに驚きが生まれます。

これが、サプライズだと言っています。

 

私も想像もしていなかった良いサービスを受けると人の感情は動かされ「感動」になる。

と、常日ごろ思っています。

これらは、感動を生む元となる「ミスティーク」なサービスになりますし、様々なところで語られる、

ワオストーリー(WOW stories)につながるサービスにもなりますね。

 

林田さんは、その例え話としてリッツ大阪で起きたエピソードをご紹介されています。

お客様の忘れ物に気が付いたスタッフが、新幹線に飛び乗り東京まで届けに行った話です。

 

しかし、「そんなのはうちの会社では不可能だよ。」と考える方々が多いのではないでしょうか?

 

そこで、私がリッツ在籍時代に学び、自身が経営するフレンチダイニングバーで実践している実例をご紹介します。

言葉が悪いと思われるかもしれませんが、よくお客様に言われる言葉なので、あえて使います。

それは、「期待を裏切る。」と、言う事です。

 

例えば、よくワインは肉料理に赤、魚料理に白、というのが常識かの様に思われています。

私は「肉に赤、魚に白と言うわけではないですよ。」と、よくお客様に説明させていただいています。

(ここで、ワインと料理の相性の話をしだすとキリがないので、はぶかせていただきます。)

 

お客様から「メインディッシュが羊だし、濃厚で渋い赤をください。」と注文されることは多々あります。

しかし、調理の仕方によっては、羊料理にとって赤ワインよりも白ワインとの相性がよい事もあります。

 

そんな時、私は「いつもでしたら、おっしゃるとおり赤ワインが良く合うのですが、今日の羊料理は白ワインがおススメです。

もし、気分が赤ワインになっておられるようでしたら、おっしゃった赤ワインをご用意させていただきます。」と、

お客様のプライドを傷つけたり、押し付けがましくならないように白をおススメします。

 

その際、お客様が興味を持たれ、私にワインと料理の相性についての話を聞いてこられたら、

「肉に赤、魚に白と言うわけではないですよ。」という話をさせていただきます。

この場合、ほとんどの方は、羊という肉料理に白をおススメされると、試してみたくてしょうがなくなるのです。

 

結果は、「良い意味で裏切られた気分だ。」と言って喜んでいただけます。

そして、ご友人やご家族に、このエピソードをお話し下さるわけですね。

 

もし、あなたがワイン好きで、料理好きで、肉には赤、魚には白と考えていたとしたら、

印象に残る体験になると思いませんか?あなたの中の常識が、良い意味で覆された経験だからです。

 

しかし、このようなサービスも、

「あなたのワインの知識は間違っているから教えてあげた。すごいでしょ?」

と、お客様に接するスタッフの顔、態度に出ていたとすれば、お客様は感動してくださるでしょうか?

 

林田さんは言います。

あくまでも、目的は、お客様の御期待や予測を上回る高いレベルのサービスをご提供することです。

そして、その根底にあるべきは、お客様に心のこもったおもてなしを提供したいという思いなのです。

 

お客様を驚かせることのできる知識、技術だけ持っていてはダメ、やはり根底に必要なのは心なのではないでしょうか?

 

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。

リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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