著者:清水健一郎
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ゴールド・スタンダード/ジョゼフ・ミケーリ(著)

 

ゴールドスタンダード
ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー
世界最高のお客様経験を作り出す5つのリーダーシップ法
ジョゼフ・ミケーリ

ミスティーク(神秘性)

今回ご紹介したいのは、ミスティーク(神秘性)なサービスを実践する際の注意点です。
以前のコラムで紹介させていただいたリッツのサービスの基準の1つであり、最高のサービスであるミスティーク(神秘性)についてです。

1.インフォメーションサービス(お客様にインフォメーションされて提供する)

2.インテリジェンスサービス(お客様が欲しているのをインフォメーションされる前に提供する)

3.リッツ・カールトンミスティーク(お客様自身が欲している事に気付いていない。提供されて、初めてお客様自身も欲している事に気が付くサービス)

このミスティークサービスを実践するためには、リーダーシップ、スタッフに与えられている権限や心意気、サービスを実践できるシステムや社内のチームワークなどが必要になります。

そしてミスティークを実現するために、リーダーシップ、スタッフに与えられている権限や心意気、サービスを実践できるシステムや社内のチームワークなど、本来それら1つ1つを紹介し理解してもらいます。

そして今回、私がとても面白く勉強になったと思えたのは、そんなミスティークを実践できる際の注意点です。
なんと、実際にリッツ・カールトン内で起きた失敗を出して紹介されているところでした。

リッツ・カールトンのスタッフは、絶えず良いサービスを提供する。
ミスティークを実践すると言う意識を持っています。

そんな、高ぶった意識からくる思い込みで、本当のお客様の姿が見えなくなっていたり、初対面のお客様に過度な期待を持たせてしまい、ガッカリさせてしまった実話を紹介されています。

例えば
メキシコのリッツ・カールトンに滞在されたお客様が、いつもお部屋でマリアッチの音楽を聞いていました。
そのため、プレファランス・パッド(お客様情報カード)に「お客様の好きな音楽はマリアッチ」と記入されました。

そしてこのお客様がフィラデルフィアのリッツ・カールトンに泊まった時には、部屋に入るとマリアッチの曲で迎えられるようになりました。

ところが、お客様がマリアッチを聞いていたのは、メキシコの雰囲気をより楽しむためであり、特別好きなわけではなかったのです。

そしてもうひとつ。
アメリカの歯科医の連合組合の担当部長グレッグ・アンダーソンは、サンフランシスコのリッツ・カールトンに宿泊するため電話で予約を取りました。

その電話予約のとき、ホテルスタッフが「アンダーソンご夫妻の滞在を特別なものにしたいので何かできないか?」とアンダーソン氏に聞いてきました。

そのためアンダーソン氏は「家内がカフェイン抜きのダイエットコークを愛しているので何本か用意してくれたらありがたい」と伝えるとホテルスタッフは快諾し、そのときついアンダーソン氏が口を滑らせて家内の誕生日のことも伝えたそうです。

そうすると、スタッフは受話器の向こうで興奮し、ホテルのスタッフから彼女の一番好きなデザートを聞かれたので、チェリー入りのアイスクリームだとアンダーソン氏は答えたそうです。

しかし、実際にホテルに滞在してみるとアイスクリームどころかダイエットコークも用意されておらず、誕生日についても何もいわれなかったそうです。

この原因は様々と想像できますが、ダイエットコークとチェリー入りアイスクリームを合わせてもせいぜい5ドル程度です。
しかし、過度な期待を持たせたうえ、アンダーソン氏を裏切ってしまったため、50万ドルのビジネスチャンスを失ったそうです。

リッツ・カールトンの目指す最高のサービス、ミスティーク(神秘性)は、複雑で難しい。そして、そんなサービスに絶えず挑戦していくというのはリッツ・カールトンという組織が出来上がっていたとしても、つねにリスクは伴います。

そうかといって、リッツでしかできないサービスをお客様が求めているのも確かです。
ですから、リッツでサービスを実践するというのは難しくもあり、やりがいにも感じる。
私がリッツ在籍中、何度も感じたことでした。

著者のジョゼフ・ミケーリ氏は

「実際、自分の好みを知られたり、記録されたりするのが嫌いなお客様もいます。個人の好みを追跡することは、細心の注意を要する困難な取り組みだ。お客様のプライバシーを尊重しながら、お客様がどの程度ならしられてもかまわないと思っているのかを見極めなくてはならない」

これはリッツのミスティークだからではなく、サービス業に従事する者すべての基本だと私は思います。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

私は、リッツも失敗するんだと思いました。
それだけミスティークが難しいということですよね。
とはいえ、失敗を恐れていてはお客様を喜ばせることはできません。

先日、お世話になった方の葬儀に参加したのですが、葬儀中に遺族も驚くことがおこりました。
司会の方が故人をしのぶお話を会場のマイクをとおして静かにお話ししてくれていたとき、誰にも話したことがない遺族しか知らない出来事を司会の方が話しました。

偶然私はその故人の思い出は知っていたので、司会の方のおかげで故人をしのぶことができました。
遺族の方も故人を思い出し、ほっこりとした場面でした。

葬儀のあと、遺族の方に司会の方が話した故人の思い出のことを聞いたところ、司会の方からインタビューはまったくなく、葬儀の準備を斎場の方とやっているときに何気なく話した内容のひとつだったそうです。

それを聞いたときに、斎場でもすばらしいサービスだなあと思いました。
もちろん、失敗する可能性もありますが、その気持がうれしいなと。
そして失敗を恐れず故人と遺族にむかう斎場と斎場のスタッフさんの姿勢に感動しました。

クレドのようなものがおそらくあるのだろうなと想像できました。
失敗しても、それに恐れずに磨いてほしいと思います。
まさか実家で葬儀でミスティークを体験するとは思いもしませんでした。

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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