著者:清水健一郎
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何度も当ブログで引用させていただいている「絆が生まれる瞬間」ですが、この本を読んでいると、やはりリッツ時代の体験がフラッシュバックし、非常に学びが深まります。

今回も、「絆が生まれる瞬間」の中で高野氏は、「全く近頃の若い連中ときたら、一体なにを考えているのか、さっぱりわからない」というローマ時代の指導者が最近の若者に関して漏らした一言に目からウロコが落ちる思いをされたそうです。

高野氏を含め世の指導者、経営者、管理者、もちろん私も含め全く同じ悩みを大昔から持っているようです。

そこで、高野氏はアメリカ人がよく使う表現を紹介されています。

「握りこぶしでは握手ができない」

つまり、手を握っていたのでは、心を閉ざしていたのでは心からの握手ができない。
お互いが手を開き、心を開いた時、初めて心からの握手ができると高野氏は言います。

つまり、大人である我々、経営者や指導者たちから心を開いて、手を差し伸べる事で、心からの握手ができ、お互いの理解が始まるのです。

リッツ・カールトン大阪開業の際、私の職場スプレンディードで、私が経験したプチパンミーティングのエピソードをご紹介します。

リッツを日本一に押し上げた原動力の一つの姿勢

プチパンというのは「小さなパントリー」の略称。

レストラン内でパン、お茶菓子、珈琲紅茶、ジュースなどを用意する場所をパントリーと言っていました。
スプレンディードは、大きなパントリーと厨房から離れて、レストランのサービススタッフしか出入りのない小さなパントリー、すなわちプチパンがありました。

そのプチパンで、ほぼ毎晩、当時のスプレンディードのマネージャーである大原さんと個別でミーティングがおこなわれたのです。

ミーティングの理由は、大原さんがスタッフ一人一人を良く知るため、そして、スタッフが大原さんを知るため。

もちろん、話の中心は仕事についてでしたが、私がホテルに就職した時代は、レストランのマネージャーは、同じ職場にいても新卒入社の社員からすれば雲の上の存在で、個別で話をする事など、めったにない。と先輩達から聞かされました。

しかし、大原さんは
「リッツ大阪を日本一のホテルにする。」をビジョンに掲げ、「ではリッツ内のレストランのあるべき姿は?」をレストランスタッフ一人一人に問うことにして、まず、スタッフの認識を理解する事から初めたのです。

私も緊張しながら大原さんと二人でミーティングした事を昨日の事の様に覚えています。

最初は緊張していましたが、大原さんが私の話を真剣に聞いてくださったので、いつの間にか緊張もなくなり、当時の私なりの「リッツ大阪を日本一のホテルにする。」ための意見を大原さんに聞いていただきました。

当時私は新卒一年目だったので、大原さんに聞いていただいた内容は、たいした事は一つもありませんでしたが、それでも、真剣に私の話を聞いてくださいました。
そのプチパンミーティングのおかげで、確実にお互いの理解が深まりました。

そのせいか、大原さんを中心に私達のチームが、目標に一丸となって動き始めたのです。
その結果は皆さんがご存じの通り、数年後に日本一のラグジュアリーホテルになったのです。

自分が理解される前に、まず相手を理解する

高野氏は言います。

仕事上の知識や知恵、忍耐力、包容力、それらを含めた人生経験の長さ、人間としての度量の大きさ。それらを比較したとき、先輩や上司の立場は、「自分が理解される前に、まず相手を理解するという宿命」を背負っているようにおもいます。

リッツで私がお世話になった上司達は、皆さん「自分が理解される前に、まず相手を理解する」を意識されていました。

そして、明確なビジョンを持ち、私達新卒社員を導いてくださった事に感謝しています。

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