成功するクレド運用方法 – すでにクレドを作っている方へ
「クレドを作れば会社がよくなると思っていた」
「クレドカードを従業員に携帯させれば会社がよくなると思っていた」
「もしかしたらクレドを作ったあとが大事なのかもしれない」
クレド作成のコンサルタントに依頼して作ったクレド、ネットを検索してたくさんの会社のクレドを参考にして作ったクレドを従業員が運用してくれない。
クレドまでは作れたがクレドの運用までは考えていなかったなど、せっかく作ったクレドを活かせていない会社やお店は多いのではないでしょうか。
世間を騒がせるバイトテロや従業員によるコンプライアンス違反から、クレドが注目されています。
たしかに従業員に悪いことをさせないためのルールとしてクレドに注目するのも間違いではありません。
しかし本来のクレドは、社是、社訓、企業理念、そして経営者の想いを実現するための考え方であり、これらを実現するために具体的で理解しやすく、スタッフが業務を遂行するうえでの行動指針となるものをまとめたものなのです。
ですから今回は、すでにクレドを作っていて会社やお店にクレドを導入している会社やお店のためのクレドの運用についてご紹介していきたいと思います。
素晴らしいクレドを作ることはできるけれどクレドの運用ができていない
クレドの作り方は主に3つあります。
- クレド作成ができる会社に依頼する
- 経営者自らがクレドを作る
- 従業員と経営者、会社全体でクレドを作る
▼クレドの作り方はこちらの記事をご覧ください。 >> クレドは作れる! – クレドの作り方の手順・費用・期待できる効果とは?
どの方法でも素晴らしいクレドを作ることができます。
そしてクレドの導入でむずかしくもあり、また会社やお店が、そして従業員が成長して企業文化が形作られていくやりがいを感じられること。
それが『クレドの運用』です。
1997年にザ・リッツ・カールトンが大阪に第一号ホテルをオープンして、日本ではまだ無名だったにもかかわらず、わずか2年で関西のホテルランキング1位、オープンから5年後には日本のホテルランキングの1位を獲得しました。
その成功の原動力となった『クレド』がホテル業界にとどまらず日本のさまざまな業界で一気に注目されるようになりました。
そしてリッツ・カールトンやクレドのことが多くの雑誌やビジネス書で取り上げられるようになりました。
リッツ・カールトンの日本での成功は本当にすばらしいことです。
リッツ・カールトンが題材となった書籍を読むと成功するべくして成功したことがよくわかります。
だからこそ、
「クレドさえ作れば我が社は成功する」
と思う人がでてくるのも当然です。
リッツ・カールトン伝説のオープニングスタッフの一人だった、『社会人として大切なことはすべてリッツ・カールトンで学んだ』の著者、清水健一郎氏は、リッツ・カールトンがホテルランキング1位になった頃から、宿泊客ではない人たちが毎日、入れ替わり立ち替わりクレドカードをもらいにホテルを訪れていたといいます。
ホテルを利用しない人たちにも快くクレドカードを配ることになっていたためいつも多めにクレドカードを携帯していつでもクレドカードを差し上げられるようにしていたそうです。
リッツ・カールトンのクレドを参考に自分たちの会社のクレドを作り、クレドカードを印刷して携帯したようです。
しかしクレドを作っても目に見える変化は起きなかったとききます。
リッツ・カールトンのクレドカードに書かれた内容は、誰でも知っているような、そして誰にでもできるような、あたり前の内容しか書かれていないのにです。
なぜクレドを作ったのに会社やお店が変わらないのか?
なぜクレドカードを従業員に配っても従業員がクレドを使ってくれないのか?
これはクレドが悪いわけでも、クレドを使わない従業員が悪いわけでもありません。
これはクレドを作ることに注意がむいてクレドを運用するところまで考えられていないからではないかと考えられます。
クレドは運用してはじめて効果を発揮するものなのです。
クレドを作っても職場が変わらない理由
クレドを作った。
従業員全員にクレドカードも携帯させた。
しかし目に見える変化はない。
従業員が積極的にクレドを使っている様子も見られない。
クレドもクレドカードもあるのに、本や雑誌に書いてあるリッツ・カールトンのようにならない。
その理由は明らかです。
リッツ・カールトンのクレドは創業のときから運用されています。
つまりリッツ・カールトンではすでにクレドがあり、クレドがある状態で人を採用しています。
そしてクレドに適正がありそうな人を採用してトレーニングをおこない、クレドを仕事で活用してもらうからです。
今からクレドを導入する場合はすでに会社にいる従業員にたいしてクレドを作り、運用していくことになります。
そこがクレドを作っても職場が変わらないリッツ・カールトンのようにならない決定的なちがいであり、クレドを作っただけでは効果がでない理由のひとつとなっています。
人は変化を嫌う。クレドの運用も同じ。
もともとクレドがなかった職場にクレドを導入するのですからクレドを機能させるためには準備が必要になります。
しかし機能させるための準備をおこなう前に確認しておくことがあります。
それはクレドを受け入れることができる会社の文化があるかどうかです。
クレドも会社にとっては『新しい取り組み』ですからクレドを作れば会社に変化が起こりはじめます。
しかし基本的に人は新しいことや変化をきらいます。
組織や自分の環境に変化は無いけれどいい結果だけはほしいというのが人です。
今までも新しいことを導入してきた経験があると思いますがその時の従業員の反応はどうだったでしょうか?
トップダウンで指示を出し導入したものの、いつの間にかだれもやらなくなっていたという経験がある場合は、クレドも『新しい取り組み』のひとつですから、同じような結果になる恐れがあります。
クレドを作って結果を変えていくには、その結果を生み出している環境を変えないと望む結果には近づきません。
成功するクレドの運用に必要な3つのポイント
クレドをどのように運用していくかを考えることはクレドを作るのと同じくらい大切です。
クレドが運用されるようになると会社も従業員も成長しはじめます。
その過程でクレドも進化させる必要が必ず訪れます。
ですから重要なのはクレドを運用して会社と従業員に浸透させていくことです。
それでは今から成功するクレド運用に必要な3つのポイントをご紹介したいと思います。
クレドの運用に必要なポイント1:信頼関係の土台
クレドが運用できるようになると、社内の異業種やカラーのちがう従業員同士がまとまり会社がかかげる目標に導かれていきます。
これはクレドのメリットの1つです。
このクレドのメリットを活かすためには会社と従業員、そして従業員同士の信頼関係を作ることがポイントです。
クレドを作っても変化が起きないのは、この信頼関係の土台を作っていないからといえます。
信頼関係の土台作りはだれにでも作ることができます。
信頼関係の土台ができることで得られるメリットは主にこの3つです。
- 職場の雰囲気をポジティブに変える
- 従業員同士がお互いのいいところを見つけ合う
- 従業員同士がお互いを深く知りあうことができ従業員同士のつながりが強くなる
クレドの運用に必要なポイント2:新しいことを前向きに受け入れられる環境
新しいことを前向きに受け入れられるようになるために必要なのは、自己承認欲求を満たすことができるコミュニケーションの機会を作ることです。
キーワードは『感謝』と『祝い』です。
従業員を幸せにするという行為は、お客様を幸せにすることにつながっています。
そして最終的には経営者に返ってくるものです。
新しいことを前向きに受け入れられる環境が整うことで得られるメリットはこちらです。
- 職場が「ありがとう」「感謝」の言葉でいっぱいになる
- 部門を越えたチームワークが実践しやすくなる
- がんばったスタッフにねぎらいの言葉をかけやすくなる
- 人事査定の役に立つ
- 生産性や売上があがる
- ポジティブな職場・会社になる
- 誰かをお祝いすること、人をよろこばせることが好きなスタッフが増える
- 「お客様をよろこばせるには?」と考える従業員が増えるのでサービスのクオリティが自然にアップする
- 経営者は従業員の顔と名前をおぼえるキッカケになる
- 従業員が会社を好きになる理由の1つになる
従業員が家族や友人のように会社を大切にしようと思うようになれば、クレドの導入や運用が成功しやすくなります。
クレドの運用に必要なポイント3:会社と従業員が価値観を共有できる場所がある
クレドの運用の前に、社是、社訓、経営理念、企業理念のいずれかが、会社にあるのではないでしょうか?
この社是、社訓、経営理念、企業理念を…
従業員は言える状態でしょうか?
言えるとして、意味は言えるでしょうか?
意味を言えたとして、それを実際の仕事に活かせているでしょうか?
以上のことができているのであればクレドは運用できると思います。
しかし、そうでなければクレドの運用は思ったほどうまく進みません。
運用が進まない理由は『会社と従業員が価値観を共有できる場所』が職場に無いからです。
成功するクレドの運用方法 ステップ1~3
クレドは会社でたとえると『社是』『社訓』『経営理念』『企業理念』(以下まとめて経営理念)にあたります。
経営理念には創業者や経営者の想いや目指すべき理想がつまっているものです。
経営理念のある会社は全従業員に理念を徹底させるために、理念を印刷して額に入れたものを会社のいたるところに飾り、従業員がいつでも目にすることができるようにしています。
そして毎日の朝礼で全従業員が経営理念を唱和するなど、それぞれの会社で経営理念を浸透させるための工夫をしています。
しかし従業員は経営理念が会社にあることは知っていても仕事をするうえで経営理念をそんなに重要視していないケースが多いのではないでしょうか。
実際私もそうでしたし経営理念をどうやって仕事に活用したらいいのかわかりませんでした。
それに経営理念は仕事に活かすものと考えもしていませんでした。
では会社に経営理念があるにもかかわらず、なぜ従業員に浸透しないのかというと従業員と経営者の間にズレがあるからだと感じます。
経営者が見ているものと従業員が見ているものがちがうのです。
もちろん経営理念は会社が目指すべき理想だと理解はしているはずです。
しかし経営理念をどうやって日々の仕事に活かしていけばいいのかわからないし、経営理念を意識しなくても仕事には支障がない場合がほとんどです。
繰り返しになりますが、経営理念を実現させるために経営理念を印刷して額に入れて会社のいたるところに飾っても毎日の朝礼で全従業員に唱和をさせても、従業員たちはその経営理念をどうやって活かし活用していけばいいのかわからない状態ではないかと感じます。
リッツ・カールトンでは全従業員がクレドカードを携帯し、仕事で問題が起こったときはクレドを読み返してどう対応するかを考えて行動する習慣がついているといいます。
クレドは経営理念を従業員が理解しやすく使いやすくした『行動指針』です。
ですからクレドが運用されていれば従業員がそれぞれちがう判断で仕事をしたとしても、向いている方向はクレドによって一緒になるのです。
ステップ1:クレドの運用の土台を作る
クレドの運用の最初のステップとして強く推奨したいのが、職場で働く人どうしの前向きなコミュニケーションです。
クレドを作っても変化が起きない原因のひとつは今までなかった新しいことを会社に導入しようとするにあたり、新しいことを受け入れるための土台が従業員にできていないからです。
クレドで有名なリッツ・カールトンでは、創業からすでにクレドがありました。
クレドがあるなかで人材を採用します。
つまりクレドに適正のある人材を採用して、トレーニングををおこない、クレドを仕事で活用してもらうのです。
しかし、クレドを今から導入する場合は、クレドを作り、すでにいる従業員に対してクレドを運用し浸透させて活用してもらわなければなりません。
そこがクレドで有名なリッツ・カールトンとの決定的な違いであり、クレドの導入の失敗やクレドを運用してもうまくいかない原因のひとつとなっています。
ですから、クレドを運用するためには従業員のこころのストレッチをおこなってクレド導入の土台を作ることを推奨しています。
このクレド導入の土台は毎日の朝礼にアイスブレイクを取り入れることで作られます。
アイスブレイクを朝礼に取り入れることで期待できる効果はこちらです。
- 予算も時間もかけず 職場の雰囲気を良くし売上げアップにつながる
- 失敗の経験から失敗を単なる失敗に終わらせない考え方が浸透する
- どんな経験からも自分の糧になるものを探して見つける力と習慣が身に付く
- 良い出来事を自ら探すように自然と意識が良い出来事にフォーカスされていく
- 働くことが好きになり、楽しくなり、賞与などお金がかからずに従業員の満足度が上がる
- 従業員同士のコミュニケーションが向上し、新しいことを導入しやすい環境になる
- クレド、ミッション、ミッションステイトメントなど、導入しやすくなる
アイスブレイクを朝礼に取り入れたとしても増える時間は5分~10分です。(1分程度×人数)
クレド運用の第一歩は『コミュニケーションの機会をつくり』と『1つでも多くお互いを知る事』です。
そのためにアイスブレイクをオススメします。
従業員同士がお互いを知れば知るほど、お互いの警戒心が解かれ、深い絆を作りやすくなります。
従業員同士の信頼関係が出来ていない状態で、頭ごなしにクレドをつくって運用してもなかなか機能しません。
だからこそクレドをつくり運用して、クレドの浸透を最終目標に持つ経営者の方々にお伝えしたいことは、従業員同士の信頼関係をつくることができるアイスブレイクを軽く見ないようにしていただきたいのです。
アイスブレイクを毎日、1ヶ月間続ける事ができれば、クレドを導入する下地がかなり出来上がります。
クレドを導入するまでもなく、多く方がこの時点で成果を感じることもあるでしょう。
アイスブレイクを毎日、まず1ヶ月は続けてください。
クレド導入の土台作りだけでなく、この習慣はクレドを効果的に運用するためのラインナップにもつながります。
ステップ2:クレドの運用前に職場を前向きな姿勢に整える
クレド導入の土台作りにおいて、アイスブレイクで従業員同士の信頼関係の基礎がつくれたら、次は職場を前向きな姿勢に整えていきます。
人は「ありがとう」と言われたり、「感謝」される事で良い気分になる人がほとんどです。
ですから職場にも「ありがとう」や「感謝」の数が多い方が気分の良い職場環境になるはずです。
例えば、一人の従業員が同僚の仕事を手伝ったとします。
「手伝ってくれてありがとう」、「どういたしまして」という会話で終わるやり取りを想像してみてください。
もし、ここで感謝の気持ちをさらに目に見える形で相手に伝えることができる仕組みがあったとします。
そうすると新たな「ありがとう」と「感謝」が生まれます。
通常のやり取りよりも、さらに相手に感謝の気持ちを伝える仕組みを導入するだけで職場の「ありがとう」や「感謝」の数が、この時点で2倍になるのです。
そんな「ありがとう」や「感謝」の言葉と気持ちがいきかう職場環境を気持ち良く感じて、いろいろな「ありがとう」や「感謝」を探す従業員が出てきます。
また、伝える仕組みがあることで相手に「ありがとう」や「感謝」をさらに伝えやすくなります。
しかも見える形で相手に伝えることができる仕組みを導入すれば「ありがとう」や「感謝」を贈った従業員もその双方の行動を公平に人事査定に反映することができるようになります。
これでもう従業員は「ありがとう」や「感謝」を伝える仕組みを利用するしかありません。
なぜなら「ありがとう」や「感謝」は言う方も、言葉を贈られる方もいい気持ちになるからです。
必ず「ありがとう」と「感謝」でいっぱいの職場になり、クレドの導入前に職場を前向きな姿勢に整えることができます。
ステップ3:『 リッツ式朝礼 』 ラインナップをクレドの運用に活用する
ラインナップとはリッツ・カールトンで始業前の約20分、毎日おこなわれる『リッツ式の朝礼』です。
このラインナップを導入することで期待できる効果はこちらです。
- 毎日のラインナップで従業員は上司からのさまざまな質問に答えることで、上司は従業員の理解度を把握することができる。そして理解がずれていたら その場で修正できるため教育の底上げになる
- 自分で考えて行動できる従業員が育つ
- 予算をかけずに効率よく従業員を教育し顧客満足度を上げることで売上アップにつながる
- 接客スタッフのみならず、裏方スタッフのサービスクオリティまで向上する
- 新しい事を導入しても、従業員が対応できるようになる
このようにクレドを導入してもラインナップがなければ、クレドは機能しずらいのです。
・ラインナップの方法
実際のラインナップの内容をカンタンにご説明します。
ラインナップに必要な要素はこの3つです。
- インフォメーション
- 質問
- ディスカッション
ラインナップの中心はディスカッションです。
ディスカッションは以下のようなカンタンに説明するとこのような内容になります。
- 名言を1つ取りあげて会社・職場・従業員の振り返りの機会にする
- 今日誕生日を迎える従業員の報告
- お客様からの感謝や苦情の言葉、経緯の報告
- クレドカードの中から1つ読みあげて実践しているかディスカッションする
- 顧客情報や業務内容の確認
- 本日の予定業務の発表
- 売上報告と本日の戦略を考えるディスカッション
ディスカッションででたアイディアは、それぞれの現場ですぐに使える様に変化させ、さらに進化させてしまう場がラインナップだと考えてください。
ラインナップは上司からの一方通行のインフォメーションではなく、従業員一人一人が考える機会を与えられています。そうすることで、ランナップは参加者全員で意思疎通ができ、価値観や方向性を確認し、良いアイデアを出す機会になります。
ラインナップでディスカッションすることによって、あらゆる機会の対処法をシュミレーションして、いざと言う時に躊躇なく行動できるように準備しておく事ができます。
そして毎日クレドカードから1つ読みあげて実践しているか、どのように実践しているかディスカッションすることでクレドが従業員に『仕事に使える経営理念』や『行動指針』として浸透していきます。
まとめ
今回はクレドの運用についてお話しました。
クレドを作ることは大切です。クレドを作らなければラインナップができません。
ですからクレドは最初に作るものなのですが、今回お話しましたようにクレドは作った後が大切なのです。
クレドの作り方や成功事例は書籍を読んだりネット検索をすれば見つけることができます。
しかしクレドを運用・浸透させる方法は見つけることがむずかしかったのではないでしょうか。
もしよかったらこの記事をクレド運用の参考にしてください。
クレドは運用して従業員に浸透していく過程ではじめて効果が期待できます。
記事/友松はじめ
クレド勉強会 友松はじめ
勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる
現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中