それは本当にやりたかった『朝礼』ですか? – クレドの朝礼で組織と従業員がプラスに変わる
朝礼をおこなっている会社やお店は多いと思います。
朝礼は企業理念を共有し仲間同士の連帯感を育てるほか、頭を仕事モードに切り替えて気持ちよく仕事をスタートさせる大切なものです。
しかし実際はみんなで企業理念を唱和して決まった内容を報告するだけの毎日同じパターンを繰り返すだけの朝礼になっている会社も少なくありません。
毎日の朝礼に疑問とストレスを感じている従業員も多いのではないでしょうか。
毎日同じことを繰り返す朝礼はまるで儀式のようです。
それでも朝礼は会社の目的をみんなで共有するとても大切なものなのです。
いっぽうでクレドを取り入れた朝礼で成功している会社も存在します。
クレドを朝礼に取り入れて毎日朝礼でクレドを唱和するだけでも仕事に迷ったときの判断の指針になる場合もあります。
またクレドで従業員同士の結束が強くなる効果も期待できます。
バイトテロや情報漏えいなどで従業員のコンプライアンス遵守のため従業員教育のひとつとして、今クレドが注目されています。
朝礼をもっと業務に活かしたいと考えているならクレドを取り入れた朝礼を考えてみてはいかがでしょうか。
今回はクレドを導入した企業でおこなわれている朝礼とはどんなものなのか。
そして朝礼を改善することで会社や従業員にどんな効果が期待できるのかについてご紹介していきます。
朝礼本来の目的
朝礼の目的とは何でしょうか?
ここであらためて整理してみたいと思います。
朝礼の目的のひとつは『教育と訓練の場』であることです。
- 会社の経営理念を浸透させる場
- あいさつやコミュニケーションの習慣をつける場
- 毎日の連絡報告の場
- 目標の進捗状況の確認の場
- 仲間意識、連帯感を育てる場
- 人前で話す練習の場
- 従業員教育の場
このようなことが考えられます。
ですから朝礼は会社やお店にとって非常に大事な業務のひとつであるはずなのです。
しかし実際にはどうでしょうか?
あなたの会社の朝礼は満足な効果を出せているでしょうか?
- 交代制で朝礼のスピーチをさせても心にひびくスピーチが従業員からでてこない
- 従業員にやる気が感じられず朝礼にしまりがない
- 社長の話が長い、上司の話が長い
- 朝礼で従業員を叱責する
- 企業理念・社是・社訓をみんなで唱和するだけで想いが従業員に浸透しない
- あいさつ・整理整頓などスローガンを唱和するが誰も守っていない
ダメな朝礼の典型をあげるとキリがありません。
私も会社員時代にいくつかの会社で朝礼を経験しましたがどこも朝礼はこのような状況でした。
朝礼をもっと意味のあるものにしていきたいと考えている会社の経営者やお店の店長は少なくないと思います。
それでも朝礼が変わらないのは、どうしたら朝礼が会社やお店そして現場で働く従業員にとって意味のあるものになるのか、参考になる朝礼のモデルや方法が無いからではないでしょうか。
朝礼本来の目的は、創業者や経営者の想いがつまった経営理念の浸透、組織の連帯感の育成、基本的マナーの習慣化、従業員教育の機会であるはずです。
朝礼はもっと活用されるべきなのです。
脳科学からみた朝礼
脳科学の分野では午前中のことを『脳のゴールデンタイム』といっているそうです。
人間の脳は起きてから2~3時間は疲れていないのです。
そして疲れていないだけでなく脳内が非常に整理されている状態なので高い集中力がだせる、つまり脳のパフォーマンスが1日の中でもっとも高い時間帯なのです。
ですから優秀なビジネスマンはこの脳のゴールデンタイムの時間帯を論理的な業務など高い集中力を必要とする仕事に使っているといいます。
このことは多くのビジネス書でもいわれていることです。
この貴重な時間帯に従業員のモチベーションを朝礼で下げてしまうのか、それとも従業員の気持ちもやる気も集中力も朝礼でグッとあげて一日の業務をスタートさせるのか。
これは朝礼のやり方にかかっているといっても言いすぎではないでしょう。
朝礼の問題点
実際多くの会社やお店でおこなわれている朝礼の状況はどうでしょうか?
私は多くの会社を見たわけではありませんが、私が在籍していた会社の朝礼はこのような典型的な朝礼でした。
- 朝礼をやるのがあたりまえ
- どうせやるなら何かしよう、でも何する?そうだ持ち回りで司会をさせよう
- 毎日担当を決めて気の利いた話を従業員にスピーチさせよう
- みんなでラジオ体操しよう
このような朝礼で毎日何か得るものがあり続けているでしょうか?
私は朝礼の問題はルーティーンによる『マンネリ化』だと考えています。
ルーティーンは考えなくてもできてしまうことをあらわす言葉です。
考えなくてもできる仕事のことをルーティーンワークなんて言いますね。
マンネリ化した朝礼もそうです。
いつも同じことの繰り返しで変化がありません。
次にやることや言うことがわかっているので新鮮な驚きも感動もいつもの朝礼にはありません。
従業員の成長の機会をうばう『考えない朝礼』
考えなくてもできてしまう。わかってしまう。
この『考えない』ことも典型的な朝礼の問題点です。
せっかく非常に脳が整理された朝という素晴らしい時間帯に『考えない朝礼』をやるのは従業員の成長の機会をうばっているといっていいと思います。
人間の脳は楽をしようとします。
これは安心・安全な状態にして自分を守るために誰にでもそなわっている脳の機能なのです。
そのためできるだけ危険がなく安全にすごせるように1日の行動を習慣化しようとします。
新しいことをしようとすると従業員の反対がありますがそれは脳が安心・安全を求め、新しい変化に不安を感じるからなのです。
このような理由から私たちの脳は1日の行動をできるだけルーチン化しようとするのです。
考えなくてもできるマンネリ化した朝礼をおこなって1日の業務をスタートする。
そうすると人間の脳はそのまま昨日と変わらない今日を過ごそうと動きはじめます。
昨日、そして今日1日、何をしたかよく思い出せないときがあるのは、考えないですむ時間が増えているひとつの証拠といえます。
必要だからと思ってやっている毎日の朝礼が、実は従業員のモチベーションやパフォーマンスをおとしている原因になっている可能性があるのです。
朝礼の理想とは?
ここまでお話してお気づきの方もいらっしゃると思いますが、いつもの朝礼を変えるポイントはこの2つ。
- 『マンネリ化しない』
- 『考える機会』
そして、『信頼』と『感謝』の気持ちを毎日の朝礼で育てることができたら、朝礼をやるごとに組織や従業員が変わっていくことが期待できます。
そして毎日すばらしい一日のスタートを切ることができるはずです。
朝礼の理想
- 『マンネリ化しない』
- 『考える機会』
- 『信頼をつくる』
- 『感謝の気持ちを育てる』
今の朝礼が満足行くものではないのに、うまくいくのかと思う方もいるかもしれません。
しかしこの4つを満たしている朝礼を毎日おこなっている会社は実際に存在します。
その会社は外資系の会社で日本に支社を設立した当時、無名にちかい存在でしたが数年後、その会社は業界でトップクラスの会社に成長しました。
参考にすべきは『リッツ・カールトンの朝礼』
朝礼の理想のポイントとして上げた『マンネリ化しない』『考える機会』『信頼をつくる』『感謝の気持ちを育てる』4つのポイントが取り入れられた朝礼。
これを実施している会社は『ザ・リッツ・カールトン』です。
リッツ・カールトンでは毎日始業前の20分ほどの時間をつかって朝礼をおこなっています。
この朝礼をリッツ・カールトンでは『ラインナップ』と呼んでいます。
ラインナップの特徴は『ディスカッション』です。
朝礼を担当するラインナップリーダーが参加者に質問し、質問された従業員はその場で考えて答えます。
そしてその答えに対してラインナップリーダーからアドバイスやさらなる質問がくわえられディスカッションをしていきます。
参加した従業員たちはラインナップに参加することにより、他の従業員が経験したこともケーススタディとして学ぶことができ業務の対応力があがります。
リッツ・カールトンの従業員はホスピタリティのあるサービスのレベルが高いといわれますが、その理由の一つが『考える機会』がある朝礼、ラインナップを毎日おこなっているからです。
理想の朝礼とは従業員が成長し売上が上がり会社が成長することです。
それを満たす朝礼の完成形のひとつがリッツ・カールトンの『ラインナップ』ではないでしょうか。
リッツ・カールトンの『ラインナップ』には参考にすべき点がたくさんあります。
クレドを導入した朝礼の成功事例:リッツ・カールトンのラインナップとは?
ではリッツ式朝礼『ラインナップ』についてお話したいと思います。
リッツ式の朝礼、ラインナップをおこなうことで以下のような効果が期待できます。
- 毎日、若手スタッフは、上司、先輩に様々な質問を投げかけられ、答えなければならないため、上司先輩たちは若手スタッフの質問への理解度が分かり、理解がずれていたら その場で修正でき、若手スタッフの教育、職場の底上げになる
- 自分で考えて行動できる従業員が育つ
- 予算をかけずに効率よく従業員を教育して顧客満足度を上げることで売上アップにつながる
- 接客を担当する従業員だけでなく、裏方の従業員のサービスクオリティまで向上させられる(業種は問わない)
- どんどん新しい事を社内に導入しても従業員は対応できるようになる (クレド6ステップ導入マニュアルより引用)
毎日のラインナップは『クレド』をもとにおこなわれています。
クレドについて詳しくはこちらのページをお読みください >> クレドとは?
リッツ・カールトンの従業員は全員クレドカードを携帯しています。
仕事で迷ったときはいつでもクレドカードに書かれている内容を読み返し業務をおこなうための行動指針としています。
クレドカードには、ビジョン、ミッション、ミッションステートメント、クレド、サービスバリューなどが書かれています。
このクレドカードに書かれたことを従業員1人1人のスタンダード(普通)にするために、毎回ディスカッションする内容を決めて、始業前にラインナップのなかでディスカッションをします。
ディスカッションを始めるときの質問は、取上げたクレド関連の文章に対して…
- あなたは、どのように行動しますか?
- あなたは、どのように理解していますか?教えてください。
- あなたなら、どう伝えますか?
- あなたなら、どう実践しますか?
- 具体的に言うと、どういったことですか?
- その場所は、どこですか?
- それを実行に移す前に、何か知っておかなければならない、勉強しておかなければならない事がありますか?
このような内容でラインナップリーダーが質問してディスカッションがスタートします。
ここでクレドコンサルタントの清水先生がリッツ在職中に体験したラインナップの例をお話します。
ラインナップリーダー:「本日のスタンダードは、『妥協のない清潔さを保つのは、従業員一人一人の役目です』です。これに対してみなさん日頃何を意識して、何を実行していますか?」
スタッフ:「職場で誰が汚したか分からない汚れでも、見つければ自分が掃除しなければならないと言う意識を持ち、すぐに綺麗にします」
ラインナップリーダー:「もし、誰が汚したか知っていてもですか?」
スタッフ:「『妥協のない清潔さを保つのは、従業員一人一人の役目です』ですから汚した人に注意はしますが、その汚れを放置すればクレドに対しての責任放棄になると思います」
(クレド6ステップ導入マニュアルより引用)
このようにクレドについてディスカッションすることでクレドが従業員に浸透していきます。
クレドは約束や信条という意味をもつラテン語ですが、日本ではビジネスで使われる場合が多く、ビジネスの世界でクレドは『企業理念』や『行動指針』として使われています。
ザ・リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド経営は世界的に有名ですが、クレドを導入している企業は、企業活動の中での意思決定や従業員の行動指針、そして経営理念としてクレドをつかっています。
社是、社訓、企業理念は創業者や経営者の想いがつまったものです。
クレドはこの想いを実現するための考え方です。
そしてこの想いを実現するために従業員が業務を遂行するうえで理解しやすい行動指針としてまとめたものがクレドです。
ですから、リッツ・カールトンでは毎日のラインナップで社是・社訓・企業理念にあたるクレドを取り上げてディスカッションすることで創業者や経営者の想いがすべての従業員に伝わっていくわけです。
ここでリッツ・カールトンのラインナップだけを参考に自分たちの朝礼を改善していくことはけっしてまちがってはいません。
しかしラインナップだけではなくクレドと朝礼をセットにして改善したほうがいいでしょう。
クレドとラインナップを導入すること、これはあなたの会社でもできることです。
クレドの朝礼『ラインナップ』の導入方法
最後にクレド朝礼であるラインナップの導入の手順をカンタンにご紹介したいと思います。
ラインナップではクレドを題材にしますが、クレドがない場合は今ある企業理念や社是や社訓で代用もできます。
1.従業員どうしの信頼関係をつくる
朝礼に*アイスブレイクを導入して従業員同士の信頼関係をつくる場にします。
(*アイスブレイクとはこころのお互いの壁をこわして信頼関係をつくることができるエクササイズの総称です)
2.会社と従業員、従業員同士の感謝の気持ちを育てる
従業員をお祝いしたり、従業員同士で感謝の気持ちをつたえる仕組みを導入します。
これは朝礼に導入するものではありませんが、朝礼以外でおこなうことでクレドの作成や導入がそしてラインナップがスムーズにすすみます。
3.ラインナップを部分的に朝礼に取り入れる
ラインナップを一部朝礼に導入します。
すでにクレドがある場はクレドをつかってもいいですし、クレドがない場合は企業理念を代用します。
4.クレドを作成する
創業者の想いがつまった社是、社訓、企業理念をもとにクレドを作成します。
5.本格的にラインナップを導入する
クレドができあがったら本格的にラインナップに導入して、従業員にクレドの浸透をおこなっていきます。
クレドの朝礼まとめ
今回は朝礼とクレドについてお話しました。
クレドは企業理念、社是、社訓をもっと従業員が理解しやすく使いやすくした行動指針と考えていただくとわかりやすいと思います。
そしてラインナップはクレドを従業員に浸透させる大事な仕組みです。
クレドとラインナップを会社やお店に導入することで、いままでマンネリになっていた朝礼が有意義な朝礼に変化することでしょう。
そしてあれだけ毎日唱和いしてもまったく浸透しなかった企業理念が、クレドを導入してラインナップでディスカッションすることで一人ひとりの従業員に浸透し、あなたの会社の理想の従業員として生まれ変わることでしょう。
朝礼の理想としてあげた4つのポイント
- 『マンネリ化しない』
- 『考える機会』
- 『信頼をつくる』
- 『感謝の気持ちを育てる』
これらが実現し従業員や組織が成長する仕組みの導入方法やクレドの作成方法はクレドコンサルタントの清水健一郎が開発したクレド導入マニュアルに掲載されています。
興味がある方は読んでみてください。
従業員同士の信頼関係が生まれ、感謝の気持ちがいきかう組織に成長し、リッツ・カールトンのようなクレドやラインナップが導入できたら会社もお店も大きく変わることでしょう。
記事/友松はじめ
クレド勉強会 友松はじめ
勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる
現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中