著者:清水健一郎
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あなたは何者で、何を目指すのか? ビジョンやミッション

なぜビジョンが必要か
あなたは何者で、何を目指すのか?

今回のコラムは、ビジョンとビジョン・ステートメントについて語られています。
先ずコラムを進めていく前に、著書の中に度々登場する言葉、ビジョン、ミッション、ビジョン・ステートメント、ミッション・ステートメントについて、軽く触れたいと思います。

 

■ビジョンとは

企業が将来的な実現を目指している目標や夢。
ドリームより実現性があり実現を重視しているのが、ビジョンです。

 

■ミッションとは

使命、誕生理由、存在理由です。
私の経営するレストランバーのミッションの一つに、「この土地に、洋食文化を根付かせる。」と言うのがあります。
レストランバーのミッション(使命)は、「この土地に、洋食文化を根付かせる。」
レストランバーのミッション(誕生理由)は、「この土地に、洋食文化を根付かせる。」
レストランバーのミッション(存在理由)は、「この土地に、洋食文化を根付かせる。」
これで、ご理解いただけたと思います。

では、ステートメントですが、言葉の意味は「声明」、「声明書」です。
つまり、ビジョンやミッションを、はっきりと会社の仲間、従業員、だけでなく世の中に告げ、声明書としても発表することです。

例「わが社のビジョンは、〇〇です。」そうすることで、自社のイメージが世の中に知られる事になり、「〇〇だったら、あの会社にお願いしよう。」とか、「〇〇を仕事にしたいから、あの会社に就職しよう。」と、「〇〇」に強いイメージが世の中に付きます。

ここで、まずシュルツ氏は、ビジョン・ステートメントのまちがった扱い方を指摘されています。

4年ごとに共和党と民主党が発表する公約―政治理念や願望のごった煮―のようなもので、誰も読みもしないし、聞きもしないではないか。大統領候補の指名大会が終わって数日もすれば忘れられてしまう。要するに作文にすぎないというわけだ。(230ページより引用)

公約をビジョン・ステートメントとして説明されていますが、これほど分かりやすく世界的に使える例えはないのではないでしょうか?
つまり、ビジョン・ステートメントも正しい使い方をしなければ、効果は出ず、時に逆効果になってしまう事もある。と、著書の中でシュルツ氏は、指摘されています。

「フレンドリーな空に飛び立とう」というキャッチフレーズで宣伝を展開しながら、全然そうではないやり方で乗客を扱った某大手航空会社は、痛い思いとともにそのことを経験した。(230ページより引用)

では、なぜ効果がでなかったのでしょうか?
「フレンドリーな空に飛び立とう」と言うキャッチフレーズどおり乗客を扱えなかったのでしょうか?

やはり、よくある事だと思いますが、会社のトップが一度だけ声明を上げて、それだけに終わってしまっているからです。
つまり、従業員にビジョンが浸透していないのです。

従業員一人一人が、ビジョンを理解し、ビジョンに沿ったサービスを提供していれば、某航空会社は痛い思いを経験することはなかったのではないでしょうか?

では、次は、どのような方法で、ビジョンを従業員に浸透させるのでしょうか?
今まで私のコラムを読んで頂いている方は、もう、お分かりですね。そうクレドです。
そして、クレドとセットのリッツカールトン式朝礼ラインナップですね。

今回の著書の中では、クレドとラインナップと言う言葉は出てきませんが、シュルツ氏が行った事は、私がリッツカールトン大阪で経験させていただいたラインナップの部分です。
とにかく、シュルツ氏は、ただひたすら従業員に話かけたそうです。

何を話かけたかと言うと、リッツカールトンのモットー「紳士淑女をもてなす私たちも紳士淑女です。」だったそうです。
紹介されている従業員に語るシュルツの言葉は、サービス業に従事する者として胸が熱くなります。
気になる方は、是非、今回の著書をご購読ください。

一部を紹介させていただきます。

「全ての客が紳士淑女というわけではありませんよね。とんでもなくタチの悪い人もいます」
「もちろん知っています」と私は答えた。「しかし、そう判断してレッテルを貼るのは、私たちの仕事ではありません。そういうお客様は、人に気難しく振舞うと決めてそうするのかもしれませんが、私たちホテル側は、それとは関係なく、そのお客様に敬意を持って接すると決意するのです。それが私たちの価値観であり、アイデンティティです。どんなお客様が相手でもそうするのが私たちなのです」(233ページより引用)

ものすごく分かります。
私も20年以上サービスの仕事をしていると、過去、何人も横柄なお客様を接客させていただいた事があります。
それこそ、サービススタッフを見下し召使かのような扱いをするお客様を何人も見てきました。

そんな時、「イラっ!」とした態度、顏をせずに、自分が紳士になって、相手を紳士として接してみてください。
大半の人が、横柄な態度を取った自分が恥ずかしくなって、おとなしくなります。
私は何度も経験しました。

もちろん、時にそれでも横柄な態度を取りたがる人がいますが、そんなスタッフの紳士的態度に居心地の悪さを感じてしまうので、リピーターになる事は、まずありません。
横柄な態度を取って、気持ちよくさせてくれる店のリピーターになります。

サービススタッフを見下し召使かのような扱いをするお客様にたいして、「イラっ!」とした態度、顏をせずに、自分が紳士になって、相手を紳士として接する事ができるのは、ビジョン・ステートメントがあるからです。

真剣に考え抜かれたビジョン・ステートメントは、会社にとって夜空の北極星となり、進むべき方向を示してくれる。
(中略)
私たちは1990年代を通じて、世界ナンバーワンのホテルブランドであり続けた。その大きな理由の一つが、このビジョン・ステートメントにあったと私は信じている。(233ページより引用)

今一度、リッツカールトン大阪での修行時代を思い出し、日々のサービスを引き締めたいと、少し反省いたしました。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

清水先生のコラムを読んでまたビジネスユースNLPの視点でいろいろ考えてしまいました。
『他人は変えられない、自分を変えることで相手が変わる』的な話はよく聞きますよね。
たしかにそれはそうなのですが、経営者として従業員にやってほしい、変わってほしいと思う場面って多いと思うんですよ。

今回のコラムに登場したビジョンやミッションもそのひとつ。
大統領の公約の話がコラムに出てきましたけども、私たちも同じ経験がありますよね。
それは選挙です。

日本は大統領制じゃないので首長や議員の選挙です。
選挙期間中に候補者さんは自分が当選後に行う公約を掲げます。
でもあんまりというか全然、公約の内容を覚えてないですよね。
私、自分が投票して当選した議員さんの公約なんて覚えてません。

小さな会社内でも社長や上司が言ったことがウヤムヤになることも多い。
なぜこんなことが起こるのかということの答えはコラムの中に書かれていますが、何度も触れる機会を設けないと体の中に浸透していかないのは本当だと思います。

浸透させやすくするためには、五感を刺激することがいいのですが、リッツ式朝礼ラインナップはディスカッションを通して参加者にケーススタディさせます。
ラインナップの様子は清水先生から何度も聞かされているのですが、上司や先輩からかなり追い込まれるようです。(怒るとかイジメとかじゃないですよ)

そして同僚どうしてもラップバトルのように終わりのないディスカッションが繰り広げられることも多かったようです。

NLPに『学習の4段階』という考え方があります。
何かを学ぶ時にとても励みになる考え方なので少し紹介してみますね。

人が学ぶ時にはこの4つの段階があります。
1.知らないからできない
2.知っていてもできない
3.考えながらできる
4.考えなくてもできる

1は当たり前ですよね。
2は知っているだけ。
3は習ったことを思い出しながらならできる
4は身についたということです。

この学ぶ時の4段階を頭の片すみに置いておけば、言っても変わらない場合や学びが遅い人を見ても客観的に今の状況を判断できるのではないでしょうか。
やっぱり、経営者が考えていることを従業員に浸透させたいと思うなら、言うだけ、指示するだけでなく繰り返し触れる仕組みをつくる必要があると思います。

 

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この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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