著者:清水健一郎
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どんなリーダーがもとめられているか
どんなリーダーがもとめられているか
ビジョンを実現するために必要な決断
ベスト以下の結果で妥協しない(216ページより引用)

ビジョンを掲げたら、目指しているレベル以下で妥協してはならない。自分自身にも、部下にも、言い訳をゆるしてはならない。(217ページより引用)

冒頭から厳しい言葉が出てきました。
そう、誰もがわかっているんです。
でも、誰もが最も難しい事の一つだと認識していますよね。

私がリッツ・カールトンに在籍していた時、シュルツ氏は非常に厳しい方だと上司達は恐れていました。

シュルツ氏が、リッツ・カールトン大阪に宿泊される際、数日前から上司達は、ソワソワして部下たちにバックヤードを隅から隅まで掃除を指示し、いつもよりもさらに清潔な状態をキープさせましたし、「お客様の前に立てば、社員もアルバイトも関係ない。リッツ・カールトン大阪のスタッフだ。」と、いつもより念入りに社員、特にアルバイトにクレドの教育を行っていました。

そして、シュルツ氏からいきなり飛んでくる、どのような質問にも即座に答えられるように、シミュレーションされていた事を思い出します。
今、思えばシュルツ氏は、スタッフに厳しい方でしたが、自分自身に対して一番厳しい人だったのだろうと思います。

だからこそ、リッツ・カールトンの初代社長に就任し、結果を出し続けてこられたのだと今では実感しています。

今回の著書の中で紹介されているエピソードは、大雪のためにホテル利用者が少なくなったボストンのリッツ・カールトンの話を出されています。
総支配人に電話で、

「どうしたんだ?なぜ55%(目標は68%)しか達成できなかったんだ?」
「あの、ご存知だと思いますが、こちらは先月厳しい吹雪に見舞われました。街中が雪と氷で覆われたような状況で・・・ひどい目に遭いました。」(217ページより引用)

この総支配人の気持ちは痛いほどよくわかります。
私が店を経営している滋賀県彦根も冬には雪が降ります。
そして、雪が降れば田舎町の主な交通手段である車は使えなくなり町が麻痺する事もあります。

当然ながら私は、お客様が来ない事を雪のせいにして自分に言い訳をしています。
「ま、こんな日もある。自然には勝てないし」と。

しかし、そんな日が1日2日くらいなら、自分に言い訳して店をやってはいけますが、何日も続くと言い訳できる状態ではなくなってくるのです。
その時、思うのが「もっと早くアクションを起こしていれば・・・」

つまり、やった事ではなく、やらなかった事に後悔し始めます。
そのため大雪の時でも、じっとして耐え忍んでいるのではなく、とにかく何かをしようとします。

ピン!と来ない方もおられると思いますが、なんでもいいのです。
とにかく動く、アクションを起こす事が大切なのです。
じっとしていては、何も解決策を見つける事ができないのです。

座って解決策を考えるくらいなら、掃除をしたり仕込みをしたりしながら考えましょう。
「いや、座ってじっくり考えないと解決策は出てこない。」と、言われる方がおられるとすれば、その方は素人であってプロフェッショナルではありません。

全ての仕事、プロフェッショナル共通というわけでは決してないのですが、プロは日常のルーティン作業くらい無意識でできます。
そんな、売り上げ不振を大雪のせいにしていた総支配人に対して、シュルツ氏は

私は「説明」をしてもらうために、社員に給料を払っているのではない。説明の先にある「解決策」を見つけるためにはらっているのだ。(219ページより引用)

ごもっとも! でございます。
「厳しい!」と思われた方、少なくないと思いますが、ここで総支配人に「そうだね。大雪だし、しょうがないよね。」と共感してしまえば、今後、この総支配人は、問題がぶち当たった際に、問題を解決するために考える事をせず、言い訳をする癖が付いてしまいます。

彼だけでならまだしも、他のリッツカールトンホテルの総支配人も、彼とシュルツ氏のやり取りから同じ様なスタッフになってしまうのです。

今回の大雪でシュルツ氏が、総支配人に檄を飛ばしたエピソードが、他の総支配人たちにも伝われば、皆、大雪、自然災害、その他のアクシデントに見舞われ時でさえ「解決策」を考える癖がつくのです。

シュルツ氏の今回の行動は、総支配人たちのレベルが下がることなく、向上するためのアクションだったと私は思います。

今回の大雪のエピソードも、次の年には解決され、ボストンにある他のラグジュアリーホテル、ライバルからお客様を引き抜くことに成功したそうです。(詳しくは著書をご購読ください。)

ビジョンを掲げたら、目指しているレベル以下で妥協してはならない。自分自身にも、部下にも、言い訳をゆるしてはならない。
言い訳や説明には何の意味もなく、ただみっともないだけだ。そこからは、道を切り開く力は生まれない。(217ページより引用)

誰もが分かっていて、誰もが実行するのに苦労されている事、これらを実行し続けるのに必要なのは、やはり、このシュルツ氏のような情熱をリーダーが持ち続ける事なのだと思います。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

今、コロナ自粛で困っていない人はいない状況の中で、Facebookを見ていると不安に包まれている人と今は何をやっても状況は悪いけれど、これからどうするかを考えたり行動したりしている人の二極化が見て取れます。

私は「説明」をしてもらうために、社員に給料を払っているのではない。説明の先にある「解決策」を見つけるためにはらっているのだ。(219ページより引用)

というシュルツさんの言葉が深く刺さります。
今はこうだけどこれからどうするか、5分先だって何が起こるかなんてわからないんだから、間違っていようと考える、行動するということが大切だと思いました。

NLPには、『失敗はない、フィードバックがあるだけ』という考え方があります。
そう、失敗したら成功に近づくだけなんです!

 

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この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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