著者:清水健一郎
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クレドを社員個人のレベルに浸透させる

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法
著者 ホルスト・シュルツ

いちばん大事なことを最初に伝える
社員個人のレベルに浸透させる(139ページより引用)

部下は社長の言う事なら素直にきく。
「社長が言っているのであればやろうか」
でも、課長、部長が同じ事を言っても素直に言う事を聞いてくれない。

「なんで、あの人にそんな事言われなきゃならないの?」的な、そんな経験された中間管理職の方々は少なくないのではないでしょうか?

今回の話題は、中間管理職の方々にとって、とても嬉しく羨ましいエピソードが書かれている。
私はそう印象を受けました。
シュルツ氏の伝えたい内容から少し離れたかもしれませんが。

中間管理職の方々といえば、上からの指示を下にかみ砕いて伝えて実行してもらう。
その際、あまり好かれていない管理職の方、優しすぎて部下からなめられているような方のお持ちの悩みは、やはり上と下との板挟みではないでしょうか?

実は私も経験したことがあります。
もちろん部下の立場での経験も上司になってからの経験も両方です。
同じ立場にならなければ、分からない事だらけです。

今回の話題は、中間管理職の方々にとって、とても嬉しく羨ましいエピソードが書かれている。私はそう印象を受けました。シュルツ氏の伝えたい内容から少し離れたかもしれませんが。
ご紹介させてください。

シュルツ氏は、ホテルをオープンする前のオリエンテーションで、部署ごとに従業員を集めてミーティングを行うそうです。
たしかに、私の人生初の職場だった地中海料理のレストラン「スプレンディード」にも顔をだしていただいて、スプレンディードの従業員である私たちだけに向けてのお話をしていただいた経験があります。

その時、たしかに今回の著書のエピソードと同じ事を経験させていただいた記憶が蘇りました。
当時は新卒社員と言う事もあり、あの時の経験がいかに偉大な事だったのかを実感する余裕がなかったように思います。

話を著書の内容にもどしますと、オリエンテーションの際、従業員達にいくつかの質問をされます。

「最高の仕事をしたいと思いますか?」
「はい!」
「素晴らしい。それがみなさんの目標です。先日、私は会社の目標を話しましたが、それが具体的に何を意味するのかを示すのが、皆さんの目標なのです。“最高のホテル”というのは具体的にどういうことでしょうか?」
「いちばん清潔なホテル」
中略
「尊敬されるホテル」
中略
「いちばん楽しく仕事ができるホテル、というのはどうですか?」
「ああ、そうですね、それもあります!」
そのあたりで、私は部署のマネジャーに立ち上がってもらって、こう言う。
「みなさん、この人が皆さんのリーダーです。この人の仕事は何かわかりますか?それは、いまみなさんが話してくれた目標が達成されるように、みなさんをサポートするのが彼の仕事です。サポートするという意味は、いまみなさんが挙げてくれたさまざまな目標が実現していなかった場合、そこで妥協することを許さない、ということでもあります。たとえば彼が、『きみたちはいちばん清潔なホテルになりたいと言ったのに、そうなっていないじゃないか』と叱っても、腹を立ててはいけません。
中略
目標達成に協力しない人を辞めさせるのも、マネジャーである彼の仕事です。みなさんには使命があります。手抜きはゆるされません」(140ページより引用)

このように会社のトップが、中間管理職の方々の重要性を職場の従業員に示すことで、中間管理職の方々のモチベーションが上がる事はもちろん、仕事に使命感を持って当たるようになります。
そして、なによりも中間管理職の方々は、とても仕事がしやすくなるのではないでしょうか?

私の大好きな歴史のエピソードで、孫氏の兵法で有名な著者、孫武にも同じようなエピソードがあります。

呉国の国王に会ってすぐ、兵法を見せて見ろと言われ後宮の女官たちで軍隊を作るというエピソードです。
その際、孫武は王に自身を将軍であり、これから作る軍隊(女官)は正式な国の軍隊だということを認めさせます。
孫武は先ず女官たちにこの事を伝え、さっそく訓練に入りますが、女官たちはふざけて孫武の言う事を聞きません。

そこで、正式な軍隊の正式な将軍の判断として、女官軍隊の隊長に任命していた王の妃二人を処刑してしまいます。
その後、女官たちは孫武の指示に忠実に動き、統率の取れた一つの軍隊になりました。
さすがに王も孫武と約束をしていたため、孫武を妃殺しとして咎めることなく軍の司令官に任命しました。

もちろん、任命されたからといって傍若無人に振舞っていては、だれもついて来てくれなくなります。
そうなると組織も軍隊も機能しません。

そのため孫氏も自身の著書「孫氏の兵法」の中で、部下と接する際は、厳しさよりも先に優しさを与える必要があると言っています。
俗に言う飴と鞭というやつかと思われますが、私は違うと思います。

飴を与える、優しく接して好きになってもらうというよりも厳しく接する前に信頼関係を築いておく必要がありシュルツ氏は、会社と従業員、社長と従業員、中間管理職と従業員との信頼関係を築くためにオリエンテーションをされている。

私は実際お会いして、今回、著書を読ませていただいて、そう強く感じる事ができたように思います。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

孫武のエピソード、恐ろしいですね。
でも統率していくには必要なことだと思います。
ひたすら厳しく怖かった学生のころの部活動を思い出してしまいました。(汗)

とはいえ、今は少しでも厳しくすると辞めてしまう人が多いといいます。
清水先生がいうように、信頼関係を築くことで厳しさも活きてくるというのは、これからの厳しく育てる方法のヒントになりそうな気がしました。

 

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

 

 

この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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