いちばん大事なことを最初に伝える / 伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法 ホルスト・シュルツ(著)
いちばん大事なことを最初に伝える
入社初日の驚くべき体験
今回の話題は、入社日やホテルの開業について、いかに初日が大切か、そして、どのように従業員一人一人に当時社長だったシュルツ氏の想いを伝えるかについて、触れられておられます。
入社や開業だけでなく、人事異動や入学式という初日は、イベントのようなもので肝心だと思います。
23年前、日本初となるリッツ・カールトン大阪の開業準備、私の入社の日、当時は新卒入社の若者だったこともあり、分からなかった事や覚えていられなかった事もありましたが、今回の著書を読み進めていく事により、入社したあの日が、いかに大切だったのかを振り返り、今になって教えられた気持ちになりました。
シュルツ氏は書籍の中で、スタッフに対して想いの伝えかたを分かりやすく紹介してくださっています。
その伝え方は、やはりシュルツ氏は偉大なリーダーだと私はそう感じました。
少し紹介させていただくとすると
(強いドイツなまりで、)
「おはよう。私はホルス・シュルツ。社長兼COO.ここでは、私はきわめて重要な人間だ。」
そこで私は少し間をあける。そして、なんて傲慢なオヤジだ、という会場の気配を確かめると、こう言葉を続ける。「きみたちも、同じ様に重要です。隣にいる人より自分のほうが重要だと言える人間は、世界中に一人もいません。この会社では、きみたち一人ひとり、全員が重要です。私がそうであるように。」(134ページより引用)
「うまいな~」、「インパクト残すな~」と、言うのが私の正直な感想です。
人の感情を大きく動かして、インパクトを与え、忘れられない経験にしているのです。
挨拶、スピーチの際、一番初めに以外な事を言う。
予想もつかない事をする。
シュルツ氏のように相手を苛立たせたあとに納得のいくフォローを入れる場合もあります。
例えば、私のセミナーの場合、私の挨拶よりも前に、おもしろ動画を流したり、場違いな音楽をかけたり、とてもこれからセミナーや講演が始まるとは思えない事をすることでインパクトを与えたり、受講者の頭をリセットしたりして、インパクトを与え忘れられないセミナー、講演にします。
場合によっては「セミナーの内容は、そんなに覚えていないけど、セミナーの最初に大音量で音楽がなって始まったセミナー」ということで、何年も覚えている。
そんな記憶に残るセミナーを心掛けています。
私はシュルツ氏の様に、カリスマ的でカッコいい人ではないので、上記の抜粋のようにスマートなスピーチをする事はありませんが、シュルツ氏のスピーチ同様、私なりのやりかたで、初めに受講者の感情を大きく揺さぶるようにしています。
と、ここまでは、誰にでもできる事で、そんなに難しくはないのではないでしょうか?
リッツ・カールトン初代社長シュルツ氏のスピーチが、他の社長と一味違うのは、いくつかのポイントがあると私は思っています。
まずは熱量。
実際、会ってお話を聞いた時、伝わってきた情熱は半端ないものだったと記憶しています。
新卒スタッフは、それまで何度も読み返していただけでなく、シュルツ氏にいきなり質問を受けてもパスできるようにクレドカードに書かれていた内容は暗記していました。
しかしクレドを再度、シュルツ氏に熱く説明され、シュルツ氏が伝えたかった細かな内容は、新卒と言うこともあって理解できなかったかもしれません。
全部を理解できなかったとしても、あれだけ熱くクレドを語るシュルツ氏を見る事で、いかにクレドが大切なのかは心で理解できました。
もう一つのポイントは、説明の分かりやすさ、そして、シュルツ氏自身の言葉で伝えるということ。
日本の若者が国会答弁を見ても何を言っているのかよくわからないという状態は想像に苦しくありません。
聞く方も集中力がなくなりますし、官僚の書いたシナリオを読み上げている国会議員の言葉は、他人事の様に聞こえてしまします。
その証拠に国会議員ですら居眠りしてしまうのですから。
そして、会社のミッション、シュルツ氏の夢に末端の従業員も引き込んでしまう事です。
「きみたちが仕事をするのは、私のためでも上司のためでもない。われわれの仲間に入って、一緒に夢を追いかけてほしい」(136ページより引用)
会社の夢、シュルツ氏の夢は同時に従業員一人一人の夢であると、従業員一人一人に理解してもらうのです。
人は、たえず夢をかなえたいと思いますが、その前に夢を持ちたいと考えているものです。
そして、夢を持たずに生活している人は、とても多いのです。
ですから、リッツ・カールトンは夢を与え、夢をかなえる存在として従業員一人一人に認識されていました。
いつの時代でも大業を成し遂げるリーダーに必要な共通点だと思います。
私たちが誰であるか、私たちの夢が何であるか、そしてなぜ私たちが組織として存在するのかを、しっかりと理解させることだ。(133ページより引用)
【編集後記】
クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
「私は会社の社長で重要な人物だ」と言われたら、私じゃなくても誰でも「なんやー(博多弁)」と感じるはずです。
でもその後に「あなたたちも重要」って言われたら、心に刺さる深さがかわりますよね。
シュルツさんはマーケティングや人の心を掌握する一流のテクニックをお持ちなのだろうと思いますが、その土台には『愛情』もあるんだろうなと感じさせます。
そんなシュルツさんといっときでも間近で仕事ができた清水先生をうらやましく思います。
この記事を書いた人
著者/清水健一郎
清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。
2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる