著者:清水健一郎
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組織を磨く日々の努力。社員は単なる労働力ではない

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

組織を磨く日々の努力
社員は単なる労働力ではない

社員から人間的要素を奪ってはいけない
テイラー主義に「ノー」と言おう
(112ページより引用)

今回のコラムは組織作りに入ってきました。
組織作りは多くの経営者の皆さんが悩んでいる事の一番大きなところではないでしょうか?

著者のシュルツ氏は、作業効率を上げるために社員を機械のようにあつかう事、社員にも感情があることを無視した考えで雇用する事に対して警鐘を鳴らしておられます。

しかし、経営者の皆さんからすれば
「『社員から人間的要素を奪ってはいけない』わかってはいるよ」
「『テイラー主義に”ノー“と言おう』それじゃどうすれば?」と、なりますよね。

テイラー主義とは、工業エンジニアのフレデリック・テイラーが提唱した方法論
大量生産を効率的に行うためには、頭を使う少数の人間と、体を動かす多くの人間が必要。
(114ページより引用)

正直、私もスタッフを雇用する立場にいるので、多くの経営者の皆さんの悩みは痛いほどわかります。
では、今回は社員の人間的要素を活かす雇用について、読み解いていきましょう。

著書を読み進めていくと、いかにシュルツ氏がスタッフの人間性を大切にしておられるかよくわかります。
その事についてシュルツ氏本人もなんでそんな当たり前のことをくどくど言うのかと書いてらっしゃるくらいくどくど書いてらっしゃいます。
ご興味のある方は、是非、ご購読ください。

そして、著書の中でシュルツ氏は、こうおっしゃっておられます。

オペレーション上の特定の機能を切り出して、その機能だけ果たせばよいという発想で人を探しているのなら、近視眼的は経営と言うしかない。人間を物のように扱っていると言える。ほめられた考えでないばかりか、天が人に与えた能力と価値を踏みにじるもので、不道徳でさえある。それは、社員から人間的要素をはぎ取り、事務機械のレベルに引き上げる行為にほかならない。
(113ページより引用)

「社員から人間的要素を奪ってはいけない」「テイラー主義に”ノー“と言おう」を実践するヒントと、この二つを実践しているリッツ・カールトンでも、もちろん退職していくスタッフはいます。

そこでリッツ・カールトンを退職するスタッフと、会社に人間的要素を奪われ退職するスタッフとの違いをご紹介させていただきます。

先ず、社員から人間的要素を奪ってはいないか?
会社がテイラー主義になっていないか?
経営者は客観的な目線をもって、自社を見つめなければならないと思います。

著書の中でシュルツ氏は

「社員全員が一丸となって・・・」などと言っている経営トップの頭の中にあるのは、テイラーの理念以外の何ものでもない。その発言が実際に意味しているのは、「トップは俺だ、みんな後からついてこい、脇道それるんじゃないぞ」ということだ。
(114ページより引用)

昔ながらの日本企業そのものですね。

私がリッツ・カールトン在籍中、上司から明確に示された事それはビジョンでありゴールでした。
例えばA地点がゴールでありビジョンだとします。
A地点は明確に示していただきましたが、A地点までの行き方は「清水、お前自分で考えてみろ」でした。

つまりA地点までの道はいくつもあり私の方法で行けばよかったのです。
もちろん遠回りした事もありますし、近道もありました。

ただ、進む道を自身で選択したので責任感もありますし、遠回りしてしまっても勉強になりましたし愚痴もでません。
ビジョンでありゴールを明確に示していただいているので、途中でゴールがブレることもありませんでした。

「社員から人間的要素を奪ってはいけない」「テイラー主義に”ノー“と言おう」については、多くの経営者の皆さんは、冒頭でも私が書いた様に「『社員から人間的要素を奪ってはいけない』わかってはいるよ」「『テイラー主義に”ノー“と言おう』それじゃどうすれば?」となります。

社員から人間的要素を奪ってなくとも、テイラー主義に「ノー」と言っても、社員は人間です。
この2つを大切に、経営を続けているつもりでも、社員は「もっと、もっと」と言う状態になります。それが人間です。

実際にリッツ・カールトンは、社員から人間的要素を奪っていませんし、テイラー主義に「ノー」と言っている会社である。というのは働いていたので私にはよくわかります。
しかし数年、場合によっては十数年すれば、そんなリッツ・カールトンの社員でも、もっと大きなチャンス、チャレンジが訪れれば社員は退職していくのです。

リッツ・カールトンを退職するスタッフと、会社に人間的要素を奪われ退職するスタッフとの違いですが、リッツを退職したスタッフは、退職後もリッツ・カールトンが大好きです。

私もそうです。
リッツ・カールトン卒業者は、リッツ・カールトンの宣伝者になります。リッツ・カールトンのお客様にもなります。
よく私の著書を読んでいただいた方からは、「この本を読んでリッツ・カールトンに行ってみたくなった」「リッツ・カールトンの宣伝をしているような本だね」と、言われました。

つまり「リッツ・カールトンで学んだ事、身についた事を試したい」「リッツ・カールトンでの学びを世に広げていきたい」と思うスタッフが非常に多いのです。
それに対して会社に人間的要素を奪われ退職するスタッフは、その会社に近づくことも嫌になります。

お客様になる。宣伝者になる事はありえません。

なにがそんなにリッツ・カールトンと「人間的要素を奪われた」と社員に思われてしまう会社との違いなのか、先ずその一つに私は伝え方だと思います。
リッツ・カールトンは、クレドカードの中に「従業員との約束」と言う項目をつくり、会社が従業員に対して何をどのように努力しているかを社員同士でディスカッションする機会をもうけています。

リッツ・カールトンのスタッフは「会社は従業員に対して、何を与えてくれているのか?」を話しあっているのです。
伝わりやすいと思いませんか?

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
従業員は家族と考えている経営者の方も多いと思いますが、それでもいろんな事情で辞めていく従業員はいます。

自分の会社で実力をつけて、その実績をもとにしてもっといいところに転職をする従業員もいることでしょう。
でも従業員の人間的要素を奪うような仕事をさせていないのであれば、辞めていった従業員も今度は外部から協力してくれるような人になってくれるかもしれませんね。

 

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

 

 

この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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