著者:清水健一郎
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お客様の3タイプを熟知する

今回からのコラムは、「お客様」の事をより深く知るための章です。
書籍を読み進めていくと、シュルツ氏はさすが「サービスは科学」と言い切った人だと思いました。

そして、22年以上サービスの現場にいる私には共感できる点が多々ある事が嬉しく思います。
では、お客様について読み解いていきましょう。

少し前 《 友達が千人いる 》 《 人脈自慢 》 《 人脈最強 》 などと言われたりして、得意げな顏をしていた人達がいましたが、はたしてそうなのでしょうか?
その事についてシュルツ氏は、冷製に分析して書籍の中で、我々に学びを与えてくれています。

先ずお客様を理解しなければなりません。
そのためシュルツ氏は、お客様を3種類に分けて、読者に理解していただいたうえで話を進めてらっしゃいます。

3種類のお客様
・不満を抱いているお客様
・満足しているお客様
・ロイヤリティのあるお客様
(94~96ページより引用)

この3種類のお客様をひっくるめて「人脈」「顧客」と考えてしまうと、ビジネスがうまくいくのもうまくいかなくなってしまうのは、誰にでもわかるのではないでしょうか?

先ず「不満をいだいているお客様」あえて苦情を言うわけではないのですが、会社、お店で不満を抱えてしまう事があった人達ですね。

 

こんなのビールじゃない

著書の中でシュルツ氏は

このタイプの顧客は、あなたの会社にいつ牙をむくかわからない反乱予備軍
(95ページより引用)

私は自分の店を立ち上げて数年は、このお客様にたいする不安でいっぱいでした。
お店のコンセプト上、このタイプのお客様を作ってしまう機会がとても多かったからです。

例えば、生ビールは当時、滋賀県で唯一当店だけの取り扱いのヒューガルデンホワイト(白ビール)などお客様から
「こんなのビールじゃない」
「ちゃんとしたビール出して」
と、なんど言われたか分かりません。

今では白ビールを飲んで「こんなのビールじゃない」と言うほうがビールの常識をしらない、分かってないといった風潮になったせいか、言われる事がなくなりました。

その他では、生ハムの原木(豚の足)をお客様の目の前でスライスすると、「豚の死体見たくない」と言われました。
その他を上げだすときりがなくなります。

しかし、続ける事で少しずつではありますが、当店で私がやりたかった事が市場に浸透していき、 《 不満をいだいているお客様 》 もいつの間にかいなくなりました。
もう二度と来なくなったお客様もおられますが、時間と共に当店のコンセプトを否定していた方々もじょじょに理解してくださいました。
ですが、残ったお客様は、けっして多くはありませんでした。

 

満足しているお客様

2つめは「満足しているお客様」
あなたに対して、特に義理を感じていない人たちである。

今はあなたの会社のサービス、お店に問題を感じておらず満足はしている。
しかしあなたの会社、お店と同じ様な商品を扱う会社、お店が近くにできて、そちらの商品が少しでも安ければ、すぐにでもそちらに乗り換えたり、また、スタッフの些細な失敗などに過敏に反応します。

例えば、お店が満席でいつも通りの対応ができなかったことで来なくなるお客様です。
つまり、あなたの会社、お店に対して義理を感じていない人たちですね。

そして、3つめは「ロイヤリティのあるお客様」
欲しいと思っていた製品やサービスをあなたが提供すれば、他社と比べたりせず、あなたから買ってくれる人たちだ。

ここで、2つめと3つめのお客様の違いを、20年以上のサービスの現場経験を持つ私の観点から言わせていただくと、先ず若いスタッフは、2のお客様を3と思いこむ事が多いです。

私もそうだったのですが、あれこれと注文が多いお客様は間違いなく2のお客様です。
決して2のお客様全員が注文の多いお客様ではありません。2のお客様の一部です。

しかも、その注文は、自信のわがままをスタッフに聞いてもらう事が目的にもかかわらず、まるでお店のレベルアップを願っての注文だと言わんばかりで、本人も自分のわがままだと気づいていない方が多いのです。

いつもVIP扱いを求めてこられる方が多いのもこの2の一部のお客様です。
この話を聞いて「ピン!」ときた方は、おそらく何年もサービスの現場で、頑張って来られた方だと思います。

 

注文が非常に少ないお客様

3のお客様はと言うと、逆に注文が非常に少ないです。
スタッフの一つ二つの失敗など笑顔で許してくださいます。

例えば、私の経営するお店の3のお客様で、席に着くなりメニューも見ずに「ワインちょうだい」そして、料理も腹のすき具合を私に伝えるだけ、値段、味なども全て私のさじ加減。

そして、店が忙しくなると「オレの料理は後回しでいいから、お客さん優先にしいや」と言ってくださいます。
お言葉に甘える事が多く、待っていただく事が多いのですが、本人はとても幸せそうな顏をしてくださいます。

まるで私の家族が、お客様として私の店に来てくれた時のようです。
特別扱いしないことが、逆に店や私の特別な存在だと言う事を理解してくださっています。

もちろん、家族の様に大切に、真に心からのおもてなしをしています。と、言うより3のお客様に対しては、サービススタッフに限らず人なら自然にそういうおもてなしをしてしまいますね。

シュルツ氏がおっしゃる通り
欲しいと思っていた製品やサービスをあなたが提供すれば、他社と比べたりせず、あなたから買ってくれる人たちだ。

ここで私がいいたいのは、2の一部のお客様は、近くに似たお店やホテルができた途端に、そちらに入りびたり、こちらには来なくなります。

2の一部のお客様を3のお客様と勘違いして、だされる多くの注文を全て聞いていたのでは、現場スタッフは心身ともに疲れてしまいます。

場合によっては、退社してしまうかもしれません。
実は2の一部のお客様の対応で心身ともに疲れて、この仕事を辞めていったサービススタッフを大勢見てきたからです。

シュルツ氏の言う
彼らはいつでもその企業や団体から離れることができるし、実際に遠慮なくはなれている。
お客様を所有しているかのように考え、行動し始めた瞬間、企業は危険な妄想の罠にはまることになる。

十分気をつけたいですね。
お客様を失うだけでなく、スタッフまでも失う結果になってしまいます。

 

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この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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