深刻な事態にどう対処するか / 伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法 ホルスト・シュルツ(著)
深刻な事態にどう対処するか
今回のコラムも、前回の続き苦情対応ですが、前回までの苦情対応よりさらに深刻な事態の対処のしかたを説明されています。
謝罪しただけでは、お客様の怒りを鎮められないことがある。(中略)訴訟沙汰になった場合はどうすればよいだろうか。
(89ページより引用)
前回のコラムで、リッツ・カールトン在籍中、いくつも苦情を頂きましたが、「物取りのための苦情」だと思った事はありませんでした。しかし、町場の飲食店で働くようになった時、本当に物取りの苦情が少なくない事に気が付きました。
相手も「リッツ・カールトンと言う世界的企業なら顧問弁護士もいるだろうし、物取りのために苦情を言っても時間とお金の無駄」と考えますが、若者が経営している飲食店など、なめられると、そんな人が近づいてきます。
と、少しお話していました。
さすがに訴訟沙汰にはなった事はありませんでしたが、警察沙汰になった事は何度かありました。
- 酔った勢いで店のドアを蹴り倒して、店のスタッフに絡んできた人
- いつも座っている席に他のお客様が座っている事が気に入らないらしく、店のスタッフに怒鳴り散らしていた人
- 来店と同時に「金貸してくれや」とスタッフに言って困らせた人
- 店内で、他のお客様に聞こえるように「料理がマズイ!」と大声で言い、他のお客様が嫌な顏をしているのを見て喜んでいる人
- アルバイトがオーダーミス(実際はミスをしていなかったと思います)をし、お会計を無料にしようとしていた人(この行為に慣れている人は、金銭を要求する事はなく、ただ「誠意を見せろ」と何度も言ってきます。今の時代、金銭を要求したり入れ墨を見せた時点で警察に連れて行ってもらう事が出来ます)
その他のエピソードを書き出していくとコラムが終わってしまうので、これくらいで話を進めさせていただきます。
こういった行為を受けた際に私は毎回、「では、警察に来ていただいて話をしましょうか?私が間違っていてあなたに迷惑をかけているわけですし、あなたを守るためにも警察に来ていただきましょう」ほとんどの場合、この一言で相手が正気に戻るといいますか大人しくなります。
中には「お、呼べや!呼んでみろや!」と、引くに引けず顏を引きつりながらも強気になる人もいますが、実際、警察官が来ると借りてきた猫になります。
ま、中にはそうでもない人もいますが…本当に呼ぶと思ってなかったんでしょうね。
私は自身の携帯を110番登録していただいているので、携帯で110番を打つだけで事情の説明もなく10分程度で、店に警察官の方が来てくださいます。
サービス業のスタッフでは対応できない場合、警察、弁護士に任せるのが一番です。
著書の中でシュルツ氏も、
訴訟を持ち出されたら、対応を切り替える必要がある「そういうことでしたら、私たちは直接お話しすべきではありません。あなたの弁護士に、当方の弁護士に連絡するようにお伝えください。(中略)」正式に訴訟が提出されたら、対応を弁護士に委ねなくてはならない。
(89ページより引用)
さすがに私には顧問弁護士はいませんが、お店の常連のお客様に弁護士、検察官、裁判官の方々がおられるので不安になる事はありません。
しかし、苦情対応のほとんどがこのような訴訟沙汰、警察沙汰ではありませんよね。
前回、前々回のコラムでお話させていただいたように、真摯に話を聞いて理解を示し「誠に申し訳ございませんでした」と謝罪をすれば許していただける事ばかりです。
そんな、苦情対応の中には対応の良さで、お客様から信頼され顧客になっていただける事もあります。
著書の中でもシュルツ氏が、車をホテルの玄関で乗り逃げされ、怒り心頭のお客様を迅速な対応で、落ち着かせ、安心させ、感謝され、これまで以上に良い関係を結ぶことのできたエピソードを紹介されています。
その対応方法は、前回までのコラムで紹介させていただいた7方法です。
1.軽く扱わない。
2.自分の事として引き受ける
3.「私が」と言う
4.ゆるしを求める
5.こちらの都合を押し付けない
6.専門知識を誇示しない
7.物取りのための苦情だと思ってはならない
(82~85ページより引用)
リッツ・カールトン大阪開業時、世界中のリッツ・カールトンから集まったトレーナーの方々の口癖が、「自信を持って失敗を恐れるな」でした。
それから数えきれないほどの失敗を経験する事になりました。
その中にはお客様からおしかりを受けた事も数知れず、オーダーの取り間違い、料理提供の遅れ、お客様が食事をされているその隣で、大量のグラス、お皿を割ってしまったこともあります。その他数知れず・・・
その度に「大変申し訳ございませんでした」「私の責任です」と、謝ってばかり。
滋賀県の田舎から出てきたばかりの若者ということもあってか、特に年配のお客様には、「もういいよ。それよりも頑張って立派なホテルマンになりや」と言っていただけ、それからは、私の成長を楽しみにホテルに通っていただけたお客様もおられました。
リッツ・カールトンオープニングでのトレーニング、オープン後のラインナップでのディスカッションのおかげで、大切な事を身に着けていたのだと後になって、改めてリッツ・カールトンに感謝しました。
【編集後記】
クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
清水先生が今回コラムに書かれたクレームの内容を読みましたが別におどろきもしませんでした。
私は食品通販の会社で働いていましたが毎日クレームはありました。
それはもう日常茶飯事でした。
それに不思議なものでたくさんのクレームを受けていると、そこに悪意があるのか本当の苦情なのかが分かるようになります。
でもクレームをいってくる人をクレーマーだと決めつけるのはよくないことは今回のコラムでもわかります。
火のないところに煙は立たないわけで、やはり性善説にたって対応するのが苦情を受ける時の対応ではないかなと思います。
ただそれにつけこむ人はいるわけで、むずかしいところですよね。
この記事を書いた人
著者/清水健一郎
清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。
2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる
記事/友松はじめ
クレド勉強会 友松はじめ
勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる
現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中