著者:清水健一郎
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リッツ・カールトン流苦情対応

今回のコラムも前回からの苦情対応の続きです。

話を苦情対応にもどすと、この7つの説明をご紹介するとなると、著書の丸写しになってしますので、私なりの解釈で説明させていただこうかと思います。
気になる人は、是非、本をご購読ください。

では、私なりの解釈ですが、例えば、これからお付き合いをしたい女性をデートに誘う事に成功しました。
しかし、彼女は、まだあなた(彼)の事をそんなに気にかけているわけではありません。それなのに緊張したせいかデートで数々の失敗をしてしまいます。

飲んでいたジュースを彼女の服にこぼしてしまったり、映画上映の時間を間違っていたり、注文した料理が提供されるのに時間がかかるなど、あまりいいとこなしという状態です。
そんな失敗続きで彼女の機嫌が悪くなっていくのが目に見えて分かりますよね。
そんな時、

1.軽く扱わない
自分からすれば大したことではないハプニングでも、彼女からすれば腹ただしい事かもしれません。
「そんな事でイライラするなよ」といった顏をする。
言葉に出したのではデートは悪い方にしか進んでいきませんよね。
彼女の事を彼女以上に気に掛ける、心配する、これをお客様に置き換えましょう。

2.自分の事として引き受ける
・飲んでいたジュースを彼女の服にこぼしてしまった。
「ジュースの入ったグラスが倒れやすいグラスだったから」
「ジュースの入ったクラスが倒れ、ジュースが服にかかる前に立ち上がるなりして回避できた」

・映画上映の時間を間違っていた
「実は友達に時間を聞いていて、その友達が間違った時間を自分に言ったんだ」
「数日前は、この上映時間だったんだ」

・注文した料理が提供されるのに時間がかかる
これに関しては完全にお店の責任にされそうですね。
私はオーダーを受ける際に、時間のかかる主菜系のお料理は後で追加注文していただくと、待っていただく時間がでてくるので、必ず始めにその旨を伝え「いかがですか?」とお伺いし、早く提供できる前菜などのお料理もおすすめする様にしています。
それでもお店側の話を聞かずにオーダーし『料理が遅い』という方はおられます。

この時点で彼女が彼の事を好きになっていくでしょうか?
お付き合いしてもいいと思うでしょうか?
正直、カッコ悪い男性ですよね。
お客様対応も同じですね。
自分以外のせいにばかりにして全く誠意を感じる事ができません。
「もういい!」と呆れてあきらめるか、火に油を注ぐ結果になります。

3.『私が』という
そんな時、仮に自分の責任ではなくても『オレが悪かった』『オレが何とかする』『店員さんが悪いわけではない。俺がヘマやったからだ』
と、自分に責任があると言う態度をとると、少しはカッコ良く見えてきませんか?

これからお付き合いするのであれば、こういった姿勢を持てる男性の方が良くありませんか?
『今回のデートは良くなくとも次回は』と思えるかもしれません。
お客様対応も『今回は良くなくとも次回は』と思っていただけます。
実際、私はこのパターンを何度も経験してきました。

4.ゆるしを求める
これからお付き合いしたい彼女相手なら、たいていの男性が、ためらわず『ごめん』と言えるのではないでしょうか?
私はそうです。
そうすることで、彼女の高ぶった感情をひとまず鎮める大きな効果があります。

彼女の感情が高ぶったままでは、何も話を聞いてもらえませんし、次の展開に持っていくこもできません。
お客様は『これからお付き合いしたいと思っている彼女』これは私の持論です。
長年連れ添っている妻にもこの態度は大切です。(笑)

5.こちらの都合を押し付けない
自分に腹を立てている彼女に対して、自分の都合を押し付けた事のある人には、実によくわかる事ではないでしょうか?
火に油を注ぐ行為ですよね。
彼女もお客様も「あなたの都合など、知った事ではない!」

6.専門知識を誇示しない
20年以上の接客経験から言わせていただくと、頭でっかちな人、いつも机上の空論ばかり言う人、サービス業に従事していても、ほとんど現場に出ていない、恋愛経験が少ない人ほど、専門知識を誇示する様に思います。

ただでさえ腹が立っている。
苛立っているさなかに専門知識をいわれても、ハッキリ言って余計に腹が立つだけ、余計に苛立つだけ、そんな専門知識などどうでもよくて腹を立てている。
つまり、相手の気持ちが分かっていない。

彼女、お客様は苛立っている自分のこの気持ちを理解してもらいたい。
心からの謝罪の言葉、『ごめん』お客様なら『大変申し訳ございません』の一言が欲しいと思っているのです。

しかし、専門知識を誇示しがちな人は、相手を素人呼ばわりしてしまいがちなのです。
その気持ちは良くわかります。実は以前の私がそうでした。
経験から言わせて頂いて、専門知識を誇示し良かった事などまったくありませんでした。
著書の中でシュルツ氏は、娘の対応の事で学校に不満を伝える母親の話をユーモアのある例えで書かれています。

「たしかに、彼女は小熊を守ろうとする母熊にすぎないかもしれない。初等教育に関する学位も持っていないだろう。だが、母熊には爪も歯もあることを忘れてはならない。苦情は慎重に扱わなければ、関係者全員にとって面倒な事態に発展する可能がある」
(85ページより引用)

そう、彼女の場合は彼氏一人ですが、お客様は会社全体に影響が出てきますよね。

7.物取りのための苦情だと思ってはならない
彼女の怒りや苛立ちをすぐに物やお金で解決しようとする人がいます。
逆に逆鱗に触れてしまう事もあります。
もちろん、解決できる場合もあります。
そこに愛はありますか?

ないとはいいませんが『金の切れ目が縁の切れ目』と言う言葉を覚えておいたほうがいいかもしれませんね。

リッツ・カールトン在籍中、いくつも苦情を頂きましたが、「物取りのための苦情」だと思った事はありませんでした。
しかし、町場の飲食店で働くようになった時、本当に物取りの苦情が少なくない事に気が付きました。

相手も『リッツ・カールトンという世界的企業なら顧問弁護士もいるだろうし、物取りのために苦情をいっても時間の無駄』と考えますが、若者が経営している飲食店など、なめられると、そんな方々が近づいてきます。
この話は別の機会に経験話として、私がどう対処したのかをお話します。

今回の苦情対応とは少し離れているかもしれませんがお客様は、『これからお付き合いしたいと思っている彼女』この考え方は、昔、先輩から教えていただいた考え方です。
『これからお付き合いしたいと思っている彼女』であれば、男性は一生懸命になりますよね。

彼女の事を知ろうとしますし、何をすれば喜んでくれるか、彼女を褒めるために彼女の良い所を探そうともします。彼女の少しの変化も見逃さないようにします。
彼女に寄り添って話や愚痴を聞き、彼女が怒っている事があれば、彼女以上に腹を立てて話を聞いて彼女の味方になる。

ま、全部お客様に当てはめるのではなく微妙な力加減が大切だと思いますが、お客様も彼女も人、人の深層心理、原理原則に基づいて考えられたリッツ・カールトン流苦情対応は様々な場面で応用できます。

あなたのお店、会社のスタッフの皆さんにも応用していただく事が出来ます。
ただし、このコラムで何度も出てきていますがラインナップでのディスカッションが必要不可欠になるのは、もうお分かりいただけていると思います。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
今回のコラムを読んで企業や芸能人の謝罪会見を思い出しました。

謝罪会見には2種類ありますよね。
1.火に油を注いでしまう謝罪会見
2.批判から一気に好転する謝罪会見

だいたい1の謝罪会見が多いですが、2の見事な謝罪会見も何とは言いませんが今年2つありましたよね。
2の謝罪は、自分がやったわけではないものも含めるということです。

誤ったら全部認めたことになるじゃないかと思われますが、そうじゃないことは聞いている方もわかっているわけで、誤った後に知り得る情報を正確に時系列で話すことが大事だったように思います。
みんなそんなことわかっているのに、当事者になるとわからなくなる。
不思議ですね。

だからこそ、清水先生も言っていますがラインナップのような訓練ができるような仕組みが必要だと感じます。

 

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

 

 

この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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