著者:清水健一郎
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顧客サービスをすべての社員の仕事にする 「心からのあいさつ」はあるか

顧客サービスをすべての社員の仕事にする
「心からのあいさつ」はあるか

今までサービス業に従事してこられたにもかかわらず、「この質問にガツン!とやられた」と、仰った方々、私は何人も知っています。

その中には、リッツ・カールトン大阪の開業準備の際、尽力された元リッツ・カールトン大阪の営業支配人である故林田正光氏も入っています。
数ある林田さんの著書にこのエピソードは何度も出てきています。

それくらいサービス業に従事されておられる皆さんは、「心からのあいさつ」を正しく理解していないようです。
著書の中でシュルツ氏が言うように、多くのサービス業従事者が「心からのあいさつ」がいかに重要であるかを知ってはおられるのです。

 

しかし、「心からのあいさつ」とは具体的にどんなあいさつなのか?

  • 会社の中で実践されているのか?
  • どの様に実践されているのか?
  • 従業員にはどの様に教育して実践させているのか?

という質問を投げかけると具体的な答えが返ってくることは、ほとんどないそうです。

 

私はと言うと、入社一年目からこのように先輩、上司からラインナップ(リッツ式朝礼)で質問詰めに何度もあっていたので、リッツ・カールトン在籍中は、当たり前のように答える事が出来ました。

では、リッツ・カールトン退社後はどうかと言いますと、同じ質問に即座に答える事が出来なかったのです。
質問される事も、ほとんどなくなってしまっていましたが、その時、定期的に唱和する大切さ、特に質問されて考える機会の大切さに気が付きました。

そして、周りの環境にも左右されている自分がいるのに気が付きました。
リッツ・カールトン退社後、一つのホテルで派遣社員として働いていた時、そのホテルの管理者や先輩達に質問をしたことがあります。

「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」とは?と。
しかし、その職場の上司がこの答も持ち合わせていない事もありました。
会社内で社員それぞれが違う答えの時もありました。

そんな時、派遣社員の私が、この質問に対する答えを胸張って答えにくいのです。
そのため私が「このホテルが考える『心からのあいさつ、心からのおもてなし』って、どういうものですか?」と質問してみたのです。

 

べつに「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」は、時にスタッフそれぞれでも良いと思いますが、一本筋の通った考え方が必要なのです。
できれば、定期的に唱和、さらに良いのはリッツ・カールトンのように質問される事により各々が考える機会が大切だと考えるようになりました。

そして、会社の社長から「心からのあいさつ、心からのおもてなし」について、社長の考えについて説明があれば、一本筋が入ったようで、さらに従業員は動きやすい、考えやすいのでは?と思いました。

私の初めての職場、地中海料理のレストラン、スプレンディードでサービスマンをやっていたころ、一生忘れる事ができない、しかも真似する事が出来ない「心からのあいさつ、心からのおもてなし」を当時のマネージャー、フランス人のジャン・フランソワ・ヴィニオ・テキシエ、呼び名はヴィニオさんから学ぶ事が出来ました。

彼は、リッツ・カールトン大阪の重厚感あふれる雰囲気に圧倒され緊張されている女性の手を両手で握り「どうも、はじめまして。昔からあなたのこと、愛してました。今日は、あなたのために最高の料理をご用意します」と言って女性の緊張を一気にほぐしてしまいました。

とても日本人には真似できないサービスです。
もし日本人が日本人相手にこの「心からのあいさつ」をおこなえば、必ずお客様は引いてしまうと思っていたのを思い出します。

そんな「あいさつ」が、ヴィニオさんにとっての「心からのあいさつ」なんだと、だからこそ、自分の「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」って何だろう?と考える機会、質問してもらえる機会が定期的に必要なのだと思います。

リッツ・カールトンの初代社長シュルツ氏は、少し具体的にそのヒントを著書の中で紹介されています。

私はホテルのスタッフに、お客様が3メートルの距離まで近づいたら、何はさておき、歓迎の気持ちを表しなさいと教えている。直ちに、真心を込めて、「いらっしゃいませ」とか、「おはようございます」といった言葉をかけなくてはならない。

と、著書の中で説明されています。
遠すぎても近すぎても具合が悪い。
遠くから声を張り上げても、「心からのあいさつ」でないことが、誰にでもわかる。

近すぎても「いらっしゃいませ」の声をかけてもらうまでの間に緊張が走るのではないでしょうか?
3メートルの距離での「心からのあいさつ」。これがないと、お客様が「自分はここにいてもいいのか?」という不安にもなるとシュルツ氏。

ヴィニオさんの様な「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」は、私達日本人には少し難しいかもしれませんが、私達にしかできない「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」があります。

著書の中でシュルツ氏は

お客様とホテルの接触のうち、最初の4つ、たとえば電話予約オペレーター、ドアマン、ベルパーソン、レセプション・クラークとの接触など、が気持ちよく完了すれば、その後の滞在でお客様から苦情が出ることはほぼ皆無である、ということだ。そころが、最初に何か気まずいことがあると、その後も次々と不満が出てくる。場合によっては、ありもしないことで苦情を言われる事さえある。

つまり、日本人からすると、「いき過ぎてませんか?」と思えるヴィニオさんの「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」に当時、私達の様な新人サービスマン達は大変助けて頂いていたというわけです。
間違いなくヴィニオさんは、心から楽しんでいました。

シュルツ氏は、言います。

顧客サービスは、あなたとお客様が接した最初の瞬間から始まる。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
ヴィニオさんのお客様の手をとって感謝の気持ちを伝えるサービスは、清水先生の著書で知っていました。

正直に言いますが読んだ時、引きました。(汗)
日本人が日本人に同じことをしたらヘタをすると通報されかねません。(汗)
ただ、今回の清水先生のコラムを読んで、これはヴィニオさんの「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」の形なのだと理解しました。

サービスする人たちは、目に見えるものを見てマネするのではなく、自分の「心からのあいさつ」「心からのおもてなし」はどんなものなのかを考えることから生まれるんですね。
考える機会は何度もあったほうがいいですね。
そのためにラインナップがあります。

 

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この記事を書いた人

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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