著者:清水健一郎
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リッツ・カールトンのモットーである「紳士淑女にサービスする紳士淑女」と言う言葉

わがホテル人生のモットーとなった言葉
「紳士淑女にサービスする紳士淑女」

今回の著書を読み進めて(まだプロローグですが)、リッツ・カールトンのモットーである「紳士淑女にサービスする紳士淑女」と言う言葉が、まだ10代でホテル学校の学生だったシュルツ氏の宿題で書いた作文がキッカケだと言う事に大変驚かされました。

もちろん、シュルツ氏がこのモットーを思いつくきっかけ、モデルとなったのは、メートル・ドテルのカール・シュトラー氏だという事は、前回のコラムでも納得のいくところです。

彼がどれほど並外れた人物であるか、その一分の隙もない身だしなみ、優雅な立ち振る舞い、ゲスト一人ひとりに心からの関心を持って接している。彼が自分自身を「真の紳士」と自負していた事を思い出した。

間違いない。
私がリッツ在籍中、リッツ・カールトンが目指していたリッツのスタッフ像。

ラインナップ(リッツ式朝礼)で、「今日、ディスカッションする内容は、モットーの『紳士淑女にサービスする紳士淑女』です。皆さんは日頃から紳士淑女になるために何をどのように努力していますか?あなたの考える紳士淑女はどんな人ですか?具体的に名前を出すとすれば誰ですか?」と、ラインナップの際に、よく質問し合い、そして、話し合ったものです。

私たちに教えてくれたメートル・ドテルのように、私たちも一人の紳士、一人の淑女としての誇りを持って仕事に取り組むことができる。私たちはサービス業界のドアの陰でゲストにかしずく召使いではない。紳士・淑女と呼ばれるに値する存在になれば、私たちは誇りあるアイデンティティを持つことができるだろう。

私がリッツ・カールトン大阪のロビーラウンジで働いていた時、上司から教えられたことの一つ「片膝をついて接客をするな。」
これは、ホテルのロビーラウンジのテーブルは、リッツ・カールトンに限らずソファーに深く腰掛けゆっくり楽しんでいただくため、レストランのテーブルと違って低く作られており、お客様と話をする際は、どうしてもお客様より目線が上になってしまいます。
そのため、ほとんどのホテルのロビーラウンジでは、片膝をついてお話をしたりオーダーを取ったりサービスを行うのが通常とされてきました。

しかし、リッツ・カールトンは、お客様とホテルスタッフは共に「紳士淑女」対等だと教わりました。
「片膝をついてお話したり、ご注文を伺ったり、サービスしてはいけない。私達は『紳士淑女にサービスする紳士淑女』であって、お客様の奴隷ではない。」
と、教えられ普通に立ったままでもお客様との目線が上になりすぎない立ち位置、立ち方というリッツ・カールトン特有といいますか、独特の距離感を身に着ける事が出来ました。
そのためリッツ・カールトン以外のホテルのロビーラウンジで働いた際には、何度か注意を受けた事がありました。

今の時代、ホテルやレストラン、飲食業のサービスの仕事も地位が上がった。と、言うよりも世の中の意識が変わったと感じています。
私が店を開業した当時は、まだ飲食業、サービス業の仕事に従事している人を下に見る人達が多く、不愉快な気持ちになった事は、一度や二度ではありませんでした。

そんな時、私はどうしたか、「逆にいじわるだろ」と、周りの同業者に言われた事がありましたが、横柄な態度をとるお客様をいつもよりさらに紳士として接する事にしたのです。

おそらく、「ピン!」と来ない方もおられると思いますが、わかりやすい例えを上げるとしたら、小さな子供が聞き分けのない事でぐずっている時に、「偉いね。やっぱり、おにいちゃんだし、おりこうさんにできるよね。」と、小さな子供扱いをせずに「おりこうさんの、お兄ちゃん」として接するのです。

そうすると、ぐずっていた自分が小さな子供だったと恥ずかしくなり「おりこうさん」になる。
大人も同じで、紳士として扱えば、さっきまで横柄な態度を取っていた自分が恥ずかしくなります。

我々の業界では、時に「客を教育する」なんて言いますが、実際、ホテル、レストラン、飲食店などで人として成長した人を何人も見てきました。
言い方を変えれば、「文化を広げる」と表現する時もあります。

そんな仕事が出来ていると実感できれは、働いているスタッフ達が誇りを持つことができます。
そして、周りの人から尊敬され、自分自身に誇りを持てると実感します。
著書の中でシュルツ氏は

ぼくは誇りを持ってホテルの仕事をすることができる。周りの人から尊敬され、自分自身に誇りを持つことができる。ホテルの仕事を通して、ぼくは紳士になることができるんだ。

リッツ・カールトン大阪開業の際、シュルツ氏や世界中から集まったトレーナーたちに「プライドを持って」「君は紳士なんだ」「かならず成功する」と励ましの言葉を頂きました。
きっと、シュルツ氏も自身が紳士として経験した事を日本も若者にも経験してもらいたいと熱望していたのだと、今回の読書コラムを書き進める事で、改めて思い起こす事ができたと思います。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

リッツ・カールトンのモットー
「紳士淑女にサービスする紳士淑女」
まだホルスト・シュルツさんが10代でホテル学校の学生だった頃に書いた宿題だったんですね。
世界的なすごいことを成し遂げる人は、10代であっても観ているもの、感じているものが違いますね。

 

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この記事を書いた人

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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