著者:清水健一郎
Pocket
LINEで送る

ついにきた!

この本が日本で出版される事を知った時。
そして実際に手にした時。
私は「ついにきた!」と少し興奮気味になりました。

リッツ・カールトン関連の書籍は、日本で出版されているものだけでも50冊以上あるのではないでしょうか?
なのに、なぜ創業者であるホルスト・シュルツ氏の書籍が世に出てこないのか?
私は長年期待をしつつも、なぜホルスト・シュルツ氏は出版しないのだろう?
と、いう疑問を持ち続けていました。

そして、ついにホルスト・シュルツ氏、初の書籍を手にする事が出来ました。
ホルスト・シュルツ氏は私がリッツ在籍中、社内ではたいへん厳しい方で、当時のマネージャー達から様々なエピソードを聞いていました。

「社長が話をしている時によそ見をするな。かりに壁を見ていたら社長は話すのを止めて君の前まで来て、『壁がそんなに気になるのならホテルの仕事をやめて、内装屋に就職して壁にペンキを塗る仕事でもしたらどうだ?』と、冗談抜きで言ってくるぞ!」とか、「眠そうな顏して社長の話を聞いていたら、君の座っている椅子を蹴飛ばしにくるぞ!」とか。

当時のマネージャー達は、かなり真剣な顏で私達に忠告していました。
当時のマネージャー達からすれば、新卒である私達は学生気分も抜けていなくて、いつホルスト・シュルツ氏の逆鱗に触れるかとヒヤヒヤしていたと思います。

そして、リッツ大阪開業の際、シュルツ氏を目の前にして聞かせていただいた話のほとんどが、「クレド」「モットー」「サービス」ばかりで、シュルツ氏本人の話は、ほとんど聞けなかった事を記憶しています。
自分自身のサクセスストーリーよりもこれから開業するリッツ大阪の成功のための話ばかりだったと記憶しています。

なので、シュルツ氏の書籍が読めるのは嬉しくもあり今の私には怖くもあります。
シュルツ氏が私自身を書籍の中で、叱咤激励してくださる。
そうポジティブに考えるとともに、読んでいる途中で、へこまされる覚悟を決めて読み進めていきたいと思います。

プロローグ

プロローグ:少年時代の夢から生涯の仕事の法則をみつけた

このプロローグでは、少年時代にホテルで働くを事を決め、下積み時代のお話を中心にシュルツ氏が仰る「生涯の仕事の法則をみつけた」を紹介されています。
私がリッツ在籍中、シュルツ氏の話で一番印象的だったのが、シュルツ氏が15歳の時から皿洗いを初めてリッツ・カールトンカンパニーの社長になったという話でした。

私もシュルツ氏と同じ様なスタートを切ったつもりでいましたし、皿洗いからリッツ・カールトンカンパニーの社長になれたという話は、私に勇気を与えてくれました。
確実に仕事に対するモチベーションが上がったのを覚えています。
まさにサクセスストーリー!
そんな、シュルツ氏の個人的な経験談を読み進めていきましょう。

書籍の中でシュルツ氏は、「サービスの心を教えてくれた師との出会い」(以下)でレストランのメートル・ドテル(支配人)とのエピソードを紹介しています。

そして、厳しくも優しくホテルという仕事に情熱をもっていた師、カール・シュトラー氏からは様々な刺激を受けたそうです。
数か国の言葉を操りサービスを行うカール・シュトラー氏の姿は誰からも尊敬されました。

カール・シュトラー氏のサービスを受けるお客様が次々に魅了される様子は、若いシュルツ氏に働く意欲を注入してくれたそうです。
そしてホテルの仕事はいつも高い水準を要求されるため、時にはシュトラー氏の逆鱗に触れることもあったとのこと。
また、残ったステーキをポケットに入れて持って帰ろうとしたところをシュトラー氏に見つかり熱々のソースをポケットの中に突っ込まれたなど、私にとってとても親しみを感じるエピソードになりました。
そんなシュルツ氏の話から私もリッツでの下積み時代を思い出し嬉しくなりました。

私がリッツ・カールトン大阪で働いていた当時、フランスとイタリアのレストランでサービスマンとして修行した経験のある先輩が私を可愛がってくれました。
当時、料理人では多くの方が本場フランス、イタリアへと渡り修行して帰ってくる。
そのような話はよくありましたが、サービスマンでこの様な経験をされた人は、ほんの一握りでした。

先輩は英語、フランス語、イタリア語を使いお客様を喜ばせていた姿を今でも鮮明に覚えています。
そして、私の著書にもある「サービスとおもてなしの違い」など、様々なサービススキル、哲学を教えてくださいました。
おそらく、シュルツ氏がシュトラー氏に叱られた回数よりも、私が先輩に叱られた回数の方が多いのではないかと思います。

このプロローグのエピソードから人生には何人かのメンターが必要だということを教えていただきました。
そして、メンター達がメンターになるには、メンターになっていただけるだけのこちら側の姿勢、努力が必要だということ。

若かったシュルツ氏は毎日、朝7時から夜の11時まで働いたと書いています。
思いおこせば私も下積み時代は一日15、16時間必死で働いていました。
今の世の中、そんな長時間労働の話をするのもどうかと思うのですが、そこまで仕事に従事していたからこそ、私も先輩に目にかけてもらえたのだと思います。

 

一番効果のある腕立て伏せの回数

同僚たちと腕立て伏せを10回する際、一番効果があるのは何回目だと思いますか?
答えは11回目です。
もちろん11回12回と増やしてもいいと思います。

そのプラス1回、2回が、自身の腕力になるのはもちろん、その努力を見てくれていた先輩や上司に認められるという大きな差になります。
もし、シュルツ氏にサービスの心を教えてくれた師カール・シュトラーさんもシュルツ氏が真剣にホテルの仕事に従事していなければ、メンターとして接してくれなかったでしょう。
そしてシュルツ氏自身がシュトラー氏をメンターだと気づく事もなかったのではないでしょうか?

定時に帰宅する。
確かに文句を言われる事もないかもしれません。
しかし認められ信頼される事もないのではないでしょうか?

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加