なぜ、クレドによって業績が向上するのか?クレド経営とは? 1枚の「クレド」が組織を変える!/実島 誠(著)
今回の章の冒頭から、クレドの導入で連年20%の業積アップ(実島氏の経営されておられるトリプルグッドグループ)と、書いてあります。
本当に凄い結果を出されていますね。
しかも、実島氏の税理士の業界は、税理士の登録数が増加し続ける環境の中での成果だそうです。
そして、その要因はクレド経営であり、今回はそのクレド経営の特徴について語られておられます。
では、リッツカールトンでクレド経営を一従業員として経験した私が、実島氏のクレド経営の説明について、今回のコラムを進めさせていただきます。
今回のクレド経営について、著者の実島氏は2つの事に触れられています。
「カリスマ経営の問題点」(57ページより引用)
「経営者と経営理念を分離する」(58ページより引用)
カリスマと聞くと、皆さん悪いイメージはないのではないでしょうか?
カリスマ店員、カリスマ美容師などなど、是非ともカリスマと言われる方々に対応してもらいたい、髪をカットしてもらいたいと、思うはずです。
しかし、著書のなかで著者の実島氏が仰るように
経営者の属人的な個性で組織を統率している経営では、往々にして経営者に依存する体質になります。(57ページより引用)
カリスマ店員、カリスマ美容師がそのお店を辞めてしまったら、お店のお客様が激減してお店、会社の経営が傾いてしまうこともあります。
そして、カリスマと言われている方々は、自身がカリスマと言われる事について、「まんざらでもない」と思っている事が多く、自身の仕事を部下や弟子に任せる事が出来ないため、部下や弟子が育ちにくいと言う環境を作ってしまいがちです。
そこで、とんでもない伝説のカリスマを紹介させてください。
リッツカールトンの初代社長、ホルスト・シュルツ氏です。
ホテル業界では、伝説のホテリエであり強烈なカリスマですね(笑)
そんなカリスマの彼が私達スタッフに直接言ってくださった言葉に
「サービスは科学だ。1人の特殊能力に頼ってはいけない」と、言うのがあります。
サービスは再現性のある科学であり1人のカリスマ(サービススタッフ、料理人などなど)の能力に頼ってはいけないと言うことでした。
では、なぜシュルツ氏と言うカリスマは、リッツカールトンの経営を成功させたのか? もちろんクレドを使ったクレド経営なのですが、そこは著者の実島氏が著書の中で仰っている
経営者と経営理念を分離する。(58ページより引用)
と言うところです。
経営者もシュルツ氏も人間です。
以前、自身が言った事と、違う事をスタッフ達に言ってしまうなんて事もあると思います。
誰にでもある事ですね。
つまり、1人の経営者、カリスマがルールの会社、職場では、その時、その時の経営者、カリスマの言う事に振り回されてしまいます。
しかし、クレドを基軸として経営をすれば、経営者が、以前言った事が異なるなんてなくなります。
人はブレる事もありますが、クレドは文章化されスタッフ1人1人が持ち歩けるカードにしていれば、ブレる事もなくなります。
しかも、クレドと言うのは、会社、組織の法や憲法のようなもので、経営者もクレドに沿った経営をしなければなりません。つまりクレドは、経営者、カリスマよりも権限を持っているのです。
むしろクレドにその権限を与えなければ、クレドとして機能しないのです。
ここで、私の大好きな漫画「キングダム」で、斉の大王に中華統一と法を語る秦の大王の場面を紹介させてください。
斉王
「多種多様な文化・風習・信仰
これ程 複雑に分かれる中華の全人民を同じ方向に向かせるなど
逆にこれまでにない強烈な支配力を持つ者達が上に立たねば実現不可能だ」
秦王
「その通りだ斉王
この中華統一の成功は全中華の民を一手に実行支配するものにかかっている
だがそれは絶対に“人”であってはならない!」
斉王
「人でないなら何だ?」
秦王
「“法”だ
“法”に最大限の力を持たせ“法”に民を治めさせる
“法”の下には元斉人も秦人も関係ない
王侯貴族も百姓も関係なく
皆 等しく平等とする!
斉王よ
中華統一の後に出現する超大国は五百年の戦乱の末に
“平和”と“平等”を手にする“法治国家”だ」
秦王と斉王のやり取りの抜粋が少し広いと思う方もおられるかもしれませんが、斉王が「多種多様な文化・風習・信仰 これ程 複雑に分かれる中華の全人民を同じ方向に向かせるなど逆にこれまでにない」と口にしましたが、リッツカールトンのクレドが生まれたのは、多種多様な人種、文化、風習、信仰が複雑に分かれて、今でも様々な問題が発生しているアメリカです。
つまり、リッツカールトンのクレドは、そんなアメリカ人を今日まで一つにまとめ世界的なホテルチェーンにした根本なのです。
そこには、初代シュルツ氏の情熱なしには到底なしえなかった結果です。
先程も話ましたが、間違いなくシュルツ氏は、伝説のカリスマですが、彼はクレド沿った経営を成功させたクレドのカリスマだったと言うことだと私は思います。
シュルツ氏ですら、決断をする際、必ずクレドに沿って英断されていました。
秦王の言う、王侯貴族ですら“法”の下だという事です。
私がクレドは会社、組織にとって法であり憲法だというのはそこにあります。
その力は甚大です。
著者の実島氏も(以下抜粋)p56
人財育成はもちろん、人事評価、人材採用、組織文化の形成、サービスの向上から、マーケティングまで、多面性に経営によい効果を発揮するのです。
クレドを経営の中心に据えるこのような経営手法のことを、クレド経営と呼びます。
今回の著者の実島氏も私もクレドに関係する皆さんが受ける質問第一位、「クレドは最強のマニュアルですよね?」「クレドは、人材育成に役に立つものですよね?」と、スタッフ教育、育成のためのものだと言う質問をよく受けます。
それは、実島氏も私もクレドに関係する方全てに言わせると、クレド経営の効果の一でしかないと言うことです。
【編集後記】
クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
人はブレるときがありますし、ブレない人はかなり強靭な精神を持っているんじゃないかと思うわけです。
カリスマと言われるような人には直接会ったことはありませんが、会社の細かなところまですべて自分で判断をしている経営者の方にはお会いしたことがあります。
会社のルールがこの経営者の方々自身なので、いろんな状況で会社のルールは変わっていきます。
その都度従業員はそれに合わせていきます。
大変です。
人間は小さなときから作り上げてきた既存のプログラムを使って考えたり行動したりすることが多いとNLPでは考えられているため、新しいルールができたとしても、ルールが人間だとまた元に戻ったり、更に新しいルールができる恐れがあります。
NLPの中にメタ・プログラムというスキルがあるんですが、このメタ・プログラムの中に理由のフィルターというものがあり、その中に可能性というパターンがあります。
このパターンは新しいルールや仕組みを作らないではいられないのです。
このパターンは誰もが持っていて、それが強いか弱いかという違いがあるだけなんですが、ルールが人間だったならこれは変化が激しくて大変なことになりそうだなと想像してしまいます。
だからこそ今回のコラムのように、カリスマをクレドにしてしまうというのはとても妙案だと思ってしまいます。
経営者でさえもクレドをカリスマと思って従う、これならバリエーションはあっても根本がぶれないので一貫性のある会社に成長しそうですね。
実際そうだったからこそ、この本の著者の会社もどん底から復活し、受賞を勝ち取るまでになったのですから。
《つづく》
記事を書いた人/清水健一郎
清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。
2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。
編集/友松はじめ
勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる
現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中