著者:清水健一郎
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ザ・リッツ・カールトン・ベーシック8番

クレドを支えるベーシック

リッツ・カールトンのクレドに書かれていたベーシックに焦点を当ててみましょう。今は、バリューと名を変えて存在しているそうです。

私の在籍中には、クレドカードには、クレド、サービスの3ステップ、モットー、従業員への約束、そして、20個のベーシックが書かれていていました。

クレドカードの内容は、何度も何度も読み返しました。

 

もちろん、ラインナップ(リッツ式朝礼)の際に、読み上げて、読み上げたところについて、参加しているスタッフ全員でディスカッションしていましたが、この20個のベーシックの役割、書かれてある内容よりも、その奥にある意図を考えてみましょう。

 

今回、なぜベーシックが存在し、その意図を考えるに至った経緯は、クレドを作成するうえで、ベーシックはとても重要だと理解しているにもかかわらず、クレドが作れても、次にクレドを支えるベーシックを作る事に頭を抱える事が多いからです。

 

しかし、リッツのベーシックをお手本として、そのベーシックの意図を理解していけば、その意図に添ってベーシックが作られていくからです。

では、今日はベーシックの5に書かれている内容の奥にある意図を考えていきましょう。

 

ザ・リッツ・カールトン・ベーシック8番

8.ホテル内に問題点(MR BIV)がないか、従業員一人一人が、いつもすみずみまで注意を払いましょう。M(mistake)ミス R(rewark)やり直し B(broken-down)破損 I(inefficiently)非効率 V(variety)ばらつき

 

つまり問題点です。

M( mistake )ミス

R( rework )やり直し

B( broken-down )破損

I( inefficiently )非効率

V( variation)ばらつき

の頭文字を取り、覚えやすいようにMrBIVにしているのです。

 

このMrBIV、会社、職場にとって本当に凄い結果がでます。

私が導入すべきおススメのベーシックでもあります。

なぜ私がそう思うのか、私がリッツ在籍中のお話ですが、リッツ大阪オープン時に当時のリッツ大阪No1マネジャーだった大原マネジャーの職場立て直し劇を当事者として経験したからです。

 

リッツ・カールトン大阪のオープン時、当時の私の職場であるスプレンディードは立ち上げに苦戦していました。

売上も伸び悩み、利益も出ていない状態でした。

そんな時、スプレンディードの立て直しに大原マネジャーが行った事は、先ず問題点をリストアップし、徹底的に問題点を改善していったのです。

 

人の体に例えると、筋力と言う売上を伸ばそうとしても、本人が風邪と言う問題点を抱えているのであれば、先ず風邪を完治してから、筋力強化を行うべきで、多くの人が利益、売上を伸ばす事ばかりに意識を取られ、会社、職場の問題点を放置したまま利益、売上を伸ばそうとしがちなのです。

その結果、さらに風邪、問題点を悪化させてしまいます。

 

やり方は朝礼やラインナップ(リッツ式朝礼)に導入し、定期的に従業員にMrBIVについて質問しディスカッションすることで、問題点の発見、改善にコミットするようにスタッフが育つと言う事です。

 

質問例

1.「皆さんの職場でMrBIVはいませんか?発表してください。」

2.「〇〇さん、いつも皆さんが犯しがちなM( mistake )ミスは、ありませんか?」

3.「では、その改善策は考えていますか?考え途中でも発表してください。皆さんでディスカッションしましょう。」

4.「改善する際、上司に報告した方が良いと思いますか?報告するとしたら誰に報告、相談すればよいですか?」

5.「仕事中、皆さんの動作にやり直し、非効率、ばらつきはありませんか?一度、思い起こして発表してください。」

6.「もし、今3人で行っている作業を2人で行わなければならなくなったら、職場の道具、物の配置はどうしますか?」

7.「移動距離を縮めるために道具、材料までの距離を考え直しましょう。」

8.「頻繁に使う道具、材料は手の届く範囲に用意していますか?」

9.「目的を考えてスペースを使いこなしていますか?」

 

MrBIVが会社、職場で根付けば、自然と売上も利益も向上している事でしょう。

 

売上が悪いからと言って、広告に大金をつぎ込むのは、風邪という問題点を持つ体に、一時的だけ元気になる解熱剤を飲ませるようなもので、風邪の根本であるウイルスに効果はありません。

悪くなっている状態というのは、先ず悪くなっている状態の根本を潰さなければ、元の木阿弥です。

 

その為には管理者、経営者だけが問題を発見し、意識し、改善を考えていても職場、会社に浸透しません。

経営者から末端の従業員まで、問題を発見し、意識し、改善を考える必要があるのです。

このMrBIVは、末端の従業員にまで、問題点を発見し改善策を考える癖を付けてもらうには、最高のノウハウだと思います。

 

どうですか?

ベーシックにMrBIVを導入してみては?

 

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。

本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

 

MrBIV、いいですね。

会社で起こる問題点は、分類すると5つしかないということではないでしょうか。

ベーシックにMrBIVを入れて、毎日ラインナップすることで、従業員も問題点に意識が向かうというわけです。

 

清水先生がレストラン・バーをオープンさせる前に勤務していたお店では、人が足りず、とても忙しい状態だったそうです。

そこで、オーナーに許可をもらい、MrBIVを導入しスタッフを指導したところ、お店の問題点がなくなり、お店の業務が効率化されたと、清水先生から聞いたことがあります。

 

やっぱり、問題解決! 問題解決! と言ったところで、一度や二度のミーティングでブレストやって問題点を出して改善したって、問題点を継続して見つけてその場で解決できる仕組みを入れなきゃ、問題点の無い職場なんてできませんよね。

だって、問題なんて絶えず出てくるものなんですから。

 

問題がどんどん減っていく仕組みMrBIV、導入するのにお金はかからない。

すごいですよね。

 

 

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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