著者:清水健一郎
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ベーシック16番

 

クレドを支えるベーシック

リッツ・カールトンのクレドに書かれていたベーシックに焦点を当ててみましょう。

今は、バリューと名を変えて存在しているそうです。

 

私の在籍中には、クレドカードには、クレド、サービスの3ステップ、モットー、従業員への約束、そして、20個のベーシックが書かれていていました。

クレドカードの内容は、何度も何度も読み返しました。

 

もちろん、ラインナップ(リッツ式朝礼)の際に、読み上げて、読み上げたところについて、参加しているスタッフ全員でディスカッションしていましたが、この20個のベーシックの役割、書かれてある内容よりも、その奥にある意図を考えてみましょう。

今回、なぜベーシックが存在し、その意図を考えるに至った経緯は、クレドを作成するうえで、ベーシックはとても重要だと理解しているにもかかわらず、クレドが作れても、次にクレドを支えるベーシックを作る事に頭を抱える事が多いからです。

しかし、リッツのベーシックをお手本として、そのベーシックの意図を理解していけば、その意図に添ってベーシックが作られていくからです。

 

では、今日はベーシックの16番に書かれている内容の奥にある意図を考えていきましょう。

ザ・リッツ・カールトン・ベーシック16番

16.お客様にホテル内の場所をご案内する時には、ただ指さすのではなく、その場所までお客様をエスコートします。

私が在籍していたレストランは、いつも忙しかったこともあり、なかなか実践するには、大変なベーシックであった事を覚えています。

 

ラインナップでは、先ず新卒スタッフに先輩、上司から「〇〇の場所はどこだ?」と質問され、答えられなかったら、その場所まで行ってこいと、よくお叱りを受けました。

このベーシックから出てくる質問を少し紹介しましょう。

「〇〇と言う場所をお客様に聞かれたら、エレベーター、エスカレーターどっちを使う?」

「他部署のレストラン、バー案内できても営業時間は覚えているか?」

「ご案内する際に笑顔で案内できていたか?」

「ご案内する際にお客様のお名前、なぜ今回リッツをご利用になられたか質問できたか?(お客様情報の収集)」

「ご案内する際、どのようなコミュニケーションでお客様情報を引き出したか、発表してください。」

「ご案内する際に聞き出したお客様情報は、どうする?」(ベーシック12をご覧ください。)

 

などなど、ただご案内するだけではリッツのスタッフとは言えない。

と、いつもラインナップで教えて頂きました。

 

ベーシック16番の意図

働いている職場(ホテル)を知る。

少しでもお客様とのコミュニケーションを多くとりお客様との関係を築き上げていく。

新卒スタッフでも実践できるパーソナルサービスのスタートでもあります。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。

本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

 

16番は施設の場所についてのべられていますが、もちろん場所も大事ですが、レストランやバーやショップの営業時間、何かイベントがあったらそのイベントの詳細などなど、お客様からの質問は即答できなければならなかったと清水先生に聞いています。

 

そういうお客様から聞かれそうな細かい質問はラインナップで前もってシュミレーションしていたそうです。そのためお客様から聞かれた質問に「今から確認してきます」ということはほとんどなかったそうです。

昔ですが、ネット広告代理店の営業の方が来て、提案を聞いていた時、質問をするたびに「少々お待ちください」と電話をかけて確認する人がいたなあと思い出してしまいました。

 

会社内で、自分がどんな仕事をしていても、お客様から見たら私たちは会社の代表なので、お客様の質問には100%答えないとおかしい。

昔出会った、ネット広告代理店の営業マンの能力の問題であっても、対応によっては「なんだこの人は?」ではなく「なんだこの会社は?」と思うはずです。

 

実際私も「なんだこの会社は?」と思いました。

もちろん、このネット広告代理店からの提案はお断りしました。

 

お客様のためにも、会社のためにも、どこに何があるのかはリッツ・カールトンのベーシック16番のようにできないといけないと思います。

そして、できるためにはスタッフ個々人の努力や能力だけに頼らずに、ラインナップのような仕組みを導入する必要があるのではないでしょうか。

 

簡単な書類を1枚用意して説明して「もう説明したからな、おぼえたよな」という会社は少ないと思いますが、現場スタッフのコンプライアンスの遵守が注目される中、もっとも注意するひとつのような気がします。

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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