著者:清水健一郎
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ベーシック15番

クレドを支えるベーシック

リッツ・カールトンのクレドに書かれていたベーシックに焦点を当ててみましょう。今は、バリューと名を変えて存在しているそうです。

私の在籍中には、クレドカードには、クレド、サービスの3ステップ、モットー、従業員への約束、そして、20個のベーシックが書かれていていました。
クレドカードの内容は、何度も何度も読み返しました。

もちろん、ラインナップ(リッツ式朝礼)の際に、読み上げて、読み上げたところについて、参加しているスタッフ全員でディスカッションしていましたが、この20個のベーシックの役割、書かれてある内容よりも、その奥にある意図を考えてみましょう。

今回、なぜベーシックが存在し、その意図を考えるに至った経緯は、クレドを作成するうえで、ベーシックはとても重要だと理解しているにもかかわらず、クレドが作れても、次にクレドを支えるベーシックを作る事に頭を抱える事が多いからです。

しかし、リッツのベーシックをお手本として、そのベーシックの意図を理解していけば、その意図に添ってベーシックが作られていくからです。
では、今日はベーシックの15に書かれている内容の奥にある意図を考えていきましょう。

 

ザ・リッツ・カールトン・ベーシック15番

15.職場にいる時も出た時も、ホテルの大使であるという意識を持ちましょう。いつも肯定的な話し方をするよう、心がけます。何か気になることがあれば、それを解決できる人に伝えましょう。

リッツを退職し、町場の飲食店で働き始めた頃、ホテルのスタッフを嫌っておられた町場の同業者の方々と出会いました。

一人、二人ではありません。
当時、出会う町場の飲食業従事者の5割、6割の方がホテルの同業者を良く思っていなかった様に思います。

理由のほとんどが、「町場を見下している。」と、言うものでした。
「ホテルの仕事の方が、クオリティが高い。」
「町場は、たいした仕事をしていない。」
「町場の組織は、ゆるい。」
と、考え、町場の飲食店での目に余る横柄な態度によって、ひんしゅくを買うホテルスタッフが少なくなかったのです。

実際、私も町場の飲食店で働いている際、近くのホテルスタッフに、横柄な態度を取られた事があります。当時の私は若かった事もあり、わざとリッツで働いていた事を会話のかなに織り交ぜて話ました。

それだけで、私を見る目が一変してしまうのです。

中にはめげずに「リッツに行ってサービスを受けたけど、たいした事がなかった」と言う人もいました。が、そんな横柄な態度、否定的な態度を取る事で、世間からどの様に見られるか? どの様な評判になるか? 少し考えただけで、誰でも想像は付くはずです。

しかし、お酒を飲んでいたりすると、想像がつかなくなるのでしょう。
そのため、リッツではベーシック15が存在していました。
上司と飲みに行くと必ず一回は、ベーシック15の事を言われて、気が抜けなかった事を思い出します。

ベーシック15存在の意図とは?

スタッフに職場にいる時も出た時も、ホテルの大使であるという意識を持ってもらう。
自身が雇用しているスタッフが、「さすが、〇〇社の社員さんだ」「〇〇社の社員さんは、素晴らしい人ばかりだね」と、世間から言っていただけるようにベーシック15の導入いかがでしょうか?

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

考えさせられるエピソードでした。
私は、酒類販売の会社をよく知っているのですが、清水先生がホテルスタッフの横暴を暴露したので、私も暴露すると…(汗)

私は、一部の居酒屋の経営者にあまりいい印象を持っていません。
もちろん私も大人ですから、みんなそうだとは思っていません。ただ、自分の居酒屋の運営に欠かせないお酒や飲料を販売してくれる酒屋さんスタッフ、そして飲料メーカーの社員さんをまるで召使いのようにあつかい、ちょっとここには書けない無理難題を言ってくるオーナーもいます。

酒屋さんの関係で仕事をすることになって、初めての体験だったので、最初は気のせい?
と思いましたが、そういうオーナーの元で働くスタッフさんも似たようなものでした。
高級車に乗って酒屋さんに来て、代金の支払いを待ってくれと頼みに来るオーナーもいました。部外者の私から見たらもうメチャクチャです。

そういうものを見聞きしていた頃に、清水先生の著書『社会人として大切なことはすべてリッツ・カールトンで学んだ』を読んで感動して、清水先生にメールをしたのがクレドに関わる私のキッカケでした。

社会人として大切なことはすべてリッツ・カールトンで学んだ
https://business-study.com/shakaijin_manabu/

だから、今はそんな居酒屋のオーナーさんたちには、すごく感謝をしています。

もう酒屋さんや飲食関係の関わりは無いのですが、その頃見たオーナーのお店には、それから一度も足を運んだことはありません。オススメの飲食店を聞かれたときにも紹介したことは1度もありません。

理由は、居酒屋での食事だって、心から楽しんでほしいからです。
リッツ・カールトンの『従業員も業者もすべてお客さま』という考えが私は大好きです。
自分たちに、お金を払ってくれる、利益をもたらしてくれる人たちだけがお客さまだけではありませんよね。

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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