著者:清水健一郎
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ザ・リッツ・カールトン・ベーシック12番

クレドを支えるベーシック

 

リッツ・カールトンのクレドに書かれていたベーシックに焦点を当ててみましょう。

今は、バリューと名を変えて存在しているそうです。

 

私の在籍中には、クレドカードには、クレド、サービスの3ステップ、モットー、従業員への約束、そして、20個のベーシックが書かれていていました。

クレドカードの内容は、何度も何度も読み返しました。

 

もちろん、ラインナップ(リッツ式朝礼)の際に、読み上げて、読み上げたところについて、参加しているスタッフ全員でディスカッションしていましたが、この20個のベーシックの役割、書かれてある内容よりも、その奥にある意図を考えてみましょう。

 

今回、なぜベーシックが存在し、その意図を考えるに至った経緯は、クレドを作成するうえで、ベーシックはとても重要だと理解しているにもかかわらず、クレドが作れても、次にクレドを支えるベーシックを作る事に頭を抱える事が多いからです。

 

しかし、リッツのベーシックをお手本として、そのベーシックの意図を理解していけば、その意図に添ってベーシックが作られていくからです。

では、今日はベーシックの12に書かれている内容の奥にある意図を考えていきましょう。

 

 

ザ・リッツ・カールトン・ベーシック12番

 

12.最高のパーソナル・サービスを提供するため、従業員には、お客様それぞれのお好みを見つけ、それを記録する役目があります。

 

私が在籍中、お客様それぞれのお好みを記録するカードがありました。

「お客様カード」です。

 

お客様のお名前、分かればお泊りの部屋番号、記入者の氏名と部署名を書いて、ゲスト・リコグニション・コーディネーターと呼ばれるスタッフがいるオフィスもしくは、オフィス前にあるボックスにいれます。

 

ゲスト・リコグニション・コーディネーターは、この情報を当時クラスシステムと言われたシステムに登録します。その結果、スタッフ達が集めたお客様のお好み情報は、世界中のリッツ・カールトンで共有され活用されたのです。

 

例えば、リッツ大阪でご宿泊されたお客様が、そば殻の枕がお好みだとわかります。スタッフは、カードに記入しゲスト・リコグニション・コーディネーターがクラスシステムに登録しました。

次の日、このお客様がニューヨークのリッツにご宿泊された時には、すでにそば殻の枕がお部屋に用意されているのです。

 

お客様の情報で、驚き、感動を与えるサービスを生み出す。カードとクラスシステム

ベーシック12番の意図、「お客様カード」の存在をラインナップで、ディスカッションする事で、スタッフがお客様のお好みを見つける。記録する。と、言う癖をつける事ができます。そして、お客様の情報は宝であり社内のスタッフ全員で共有し活用しなければならない。

 

スタッフ個人だけの情報、スタッフ個人の力に頼っていては、サービスクオリティにむらが出ます。サービスは科学です。

 

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。

本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

 

今回のコラムで取り上げられたベーシック12番。

今回の清水先生のコラムに取り上げられたベーシック12番について、以前に読んだ『リッツカールトン20の秘密』に取り上げられていたエピソードを思い出しました。

 

この『リッツカールトン20の秘密』は、著者である井上富紀子さんが、当時世界63箇所にあったリッツ・カールトンを全て回ると決意して、1年10ヶ月かけて宿泊し、その時のエピソードをまとめた本です。

 

この本の中で、井上さんにはある『朝の儀式』というのがありました。それは朝に熱いいれたてのコーヒーを飲む、というものでした。必ずどこに行っても、どんなときでも朝コーヒーを飲まないと体の調子が良くないため、宿泊先にコーヒーメーカーが無い場合はスーツケースにコーヒーメーカーを入れて旅に出るという徹底ぶりでした。

 

井上さんは、リッツ・カールトンにはコーヒーメーカーが無いことを事前に知っていたため海外のリッツ・カールトンに泊まった時も持参したコーヒーメーカーを部屋に設置していたそうです。

 

その後、面白い現象が起こったと本に書いてありました。

それは、いつのまにか宿泊するホテルにコーヒーメーカーが設置してあったというのです。あるリッツ・カールトンでは、おそらく井上さんのために用意されたであろう新品のコーヒーメーカーが設置されていたといいます。

 

いつの間に調べたのか? 井上さんの朝の儀式にコーヒーが欠かせないということをどこかのリッツ・カールトンのスタッフが察知したわけです。そして、ベーシック12番に書いてあるように行動し、お客様カードに書き全世界のリッツ・カールトンに知らせたということなのでしょう。

 

井上さん自身は、どこで朝の儀式のことを知られたのか全くわからないそうです。

そして、こういう心遣いは本当に嬉しかったし、思い出に残ったと書いていました。

日本のリッツ・カールトンだけでなく、全世界でクレドは徹底されているのですね。

 

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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