著者:清水健一郎
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リッツ・カールトンのクレド、ベーシック11番

クレドを支えるベーシック

 

リッツ・カールトンのクレドに書かれていたベーシックに焦点を当ててみましょう。今は、バリューと名を変えて存在しているそうです。

 

私の在籍中には、クレドカードには、クレド、サービスの3ステップ、モットー、従業員への約束、そして、20個のベーシックが書かれていていました。

クレドカードの内容は、何度も何度も読み返しました。

 

もちろん、ラインナップ(リッツ式朝礼)の際に、読み上げて、読み上げたところについて、参加しているスタッフ全員でディスカッションしていましたが、この20個のベーシックの役割、書かれてある内容よりも、その奥にある意図を考えてみましょう。

 

今回、なぜベーシックが存在し、その意図を考えるに至った経緯は、クレドを作成するうえで、ベーシックはとても重要だと理解しているにもかかわらず、クレドが作れても、次にクレドを支えるベーシックを作る事に頭を抱える事が多いからです。

 

しかし、リッツのベーシックをお手本として、そのベーシックの意図を理解していけば、その意図に添ってベーシックが作られていくからです。

では、今日はベーシックの10に書かれている内容の奥にある意図を考えていきましょう。

 

 

ザ・リッツ・カールトン・ベーシック11番

11.妥協のない清潔さを保つのは、従業員一人一人の役目です。

これは、ホテルだけでなく、どんな職場にも当てはまる、いわゆる「当たり前」の事ではないでしょうか?

 

しかし、飲食業に20年以上従事している私と社会人1年目のスタッフとでは、「妥協のない清潔さ」も大きな差が出ていると思いませんか?

 

そんな差を埋める為に日々、先輩や上司から指示を受けるのも一つだと思いますが、先輩や上司も人によって差があるのでは、新卒スタッフ達は戸惑ってしまいます。

経験者達もラインナップでのディスカッションで、「妥協のない清潔さ」の価値観を共有する必要があるのです。

 

場合によっては、ディスカッションによって、「妥協のない清潔さ」を高め合う事にもなりますし、掃除と一言で言っても奥が深かったりするものです。

その為、日頃からディスカッションする事で、掃除のスキルも向上させる必要がありました。

 

例えば、私がリッツに在籍していた時の会話の一部です。

先輩「清水、メニュー、テーブルや壁の簡単な油汚れは何で落とす?」

清水「中性洗剤やしつこい油汚れは、アルカリ性の洗剤です。」

先輩「メニューを中性洗剤やアルカリ洗剤で拭くのかおまえ、いつもアルコールスプレーで拭いているだろ、アルコールは油を分解するんだ、消毒や除菌の為だけにアルコールスプレで拭いているんじゃないぞ。」

 

その他にも椅子についた靴墨の汚れや、彫刻の誇りの取り方などなど、様々な掃除方法をラインナップでのディスカッションで学びました。

また、掃除箇所を全てリストアップして、毎日の掃除、週一回の掃除、月一回の掃除と、掃除のチェックリストを作って実行し、その確認や新たな改善などもラインナップの際に話し合いました。

 

こうして、リッツの目指す「妥協のない清潔さ」が、スタッフ達に定着していったのです。

あなたの職場の「清潔」について、定期的にディスカッションしませんか?

会社が内側から輝き始めますよ。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。

本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

 

人の考え方は、10人いれば10種類。

100%伝えたつもりでも、伝えたあとに「しっかり伝えたはずなのに」とか「分かりましたって言ったじゃん!」ということが、仕事をしていると度々発生します。

これは、どうも人間の精神構造上、仕方がないことみたいです。

 

でも、そうなんだ、じゃあ仕方がないね。というわけにはいきません。

『妥協の無い清潔さ』が、新人とベテランで違うのは仕方がないことですが、リッツ・カールトンにはちゃんと修正の機会があるところがすごいですね。

 

その機会の主な場所が『ラインナップ』です。

今回の清水先生のコラムで、清水先生と先輩のやり取りが紹介されていましたが、あれが一対一で行われたものだとしたら、すごくもったいないのです。なぜかというと、新人1人にしか伝わっていなから。

 

しかし、始業前のラインナップで行われるので、みんなが聞いています。

だから、聞いているみんなのレベルも上がるのです。

もしかしたら、先輩の同僚も『あ、そうなんだ、参考になった』といこともあるかもしれません。

 

素晴らしいクレドは誰でも作れます。

でも、浸透させるのが難しくもあり、楽しいことなのだと思います。

だって、どんどんスタッフが成長するんですから。

 

クレドは、社是や社訓、経営理念を分かりやすく、行動しやすくしたものです。

クレドを軸にスタッフが働くようになれば、価値観も共有できて、理想の会社になっていくと思います。

 

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。

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