著者:清水健一郎
Pocket
LINEで送る

リーダーの本当の仕事それでは何を測定すればよいのか

事業を拡大させると、経営者の目が会社の隅々まで行き届かなくなる事は、みなさんの周知の事実ですね。
信頼している部下に会社、現場を任せる際、何に焦点をあてて測定すればよいのでしょうか?売り上げ?コスト?利益などなど気になるポイントはありますが、特に抑えるべきポイントについてシュルツ氏が語ってくださっています。

なので、今回のコラムの内容は経営者の方々にとって、もっとも興味深いことの一つではないでしょうか?
それでは今から読み解いていきましょう。

シュルツ氏が、アトランタでリッツ・カールトン・カンパニーを立ち上げ、アトランタ内で2つのホテルをオープンさせたのち、3つ目のホテルの開業が2000マイルも離れたカリフォルニア州に決まったそうです。

それまで、シュルツ氏の理想のホテルを作り上げるために、寝る間を惜しんで働きホテルの細部まで把握していたそうです。
それが2000マイルも離れた場所にホテルを開業させる。
これは経営者みずから社内の細部まで把握する事が不可能になりますね。

そこで、著書の中でシュルツ氏は、

リーダーは何の実績を評価すればよいのか、という問題だ。
(248ページより引用)

と、言う事になります。

シュルツ氏は、ホテル事業で評価すべき重要事項は3つあると言います。
その3つとは、

  1. 顧客満足度/顧客ロイヤルティ
  2. 従業員満足度
  3. 主要な経済指標

の3つです。

 

1.顧客満足度/顧客ロイヤルティ

これについて、私もシュルツ氏と同意見です。
そして、推測では絶対にわかりません。直接お客様に聞いても、本音などお客様は教えてくださる事はない。と思ったほうが良いと思っています。

たまに、テレビなどでタレントさんが、散髪に理容院(もしくは美容院)に行き、お店スタッフにシャンプー時に「痒いところありますか?」と質問され、本当は痒いところがあるにもかかわらず、思わず「あ、大丈夫です。」と言ってしまう話。

皆さん聞いた事ありませんか?そして、その話に共感していませんか?
それだけ、自分に対して頑張って仕事をしてくれている本人を前にしていると、本音が言いにくいのです。

頑張ってくれていても、痒い所にとどいていない。どんな仕事にもある話ですよね。
そのため、シュルツ氏は、著書の中で、

定期的な調査(紙またはオンライン)を実施するしかない。
(248ページより引用)

と、おっしゃっておられます。

私がリッツに在籍していたころと全く同じです。
匿名でスタッフの顏を見ないで実施するしか、なかなかお客様の本音は聞き出せないですよね。

 

2.従業員満足度

シュルツ氏は、著書の中で、

組織の健全さを測るのが従業員満足度だ。
(249ページより引用)

リッツで働いていたせいか、シュルツ氏の意見に同調ばかりしていますが、私が働いたことのあるホテル、従業員満足度の高いリッツと従業員満足度の低いリッツ以外のホテルの大きな違いでした。

リッツばかりを例に話すとシュルツ氏の言葉の引用ばかりになるので、当店のカウンターに来られる学習塾の経営者(塾長)の話をさせていただきます。
その方は会社を立ち上げられてから、数年で滋賀県4か所、京都2か所と飛ぶ鳥落とす勢いで営業所(教室)を増やしておられました。

その方が大切にされておられた一つに、『従業員に任せたら口を出さない』と言うのがあり詳しく教えて頂いたことがありました。
会社を始めた当時は、任せた教室の授業をこっそり覗いて、授業の仕方を、あれこれ指南されていたそうです。

そうすると、従業員のテンションは下がり、生徒の成績も上がらず経営が悪化したそうです。
つまり、従業員満足度が下がり、顧客満足度も下がった事になりますね。
なぜ、従業員満足度が下がったのか?

やはり、『社長から信頼されていない』と、感じたり、自分のやり方で事業が出来なかったせいで、結果が出なかったそうです。
その社長も私も剣道経験者だったので、社長が剣道を例えにして仰ったのが、「剣道の決め技で面打ちが得意な人に、むりやり胴打ちをやらせる事で、試合に勝てなくなってしまうし、そんな事をやっていたら剣道が嫌になって、場合によっては、辞めてしまう。」
つまり、離職率が上がると言うわけです。

シュルツ氏も著書の中で、(以下抜粋)p250

従業員満足度を何年も測定してきた経験から確信を持って言えるのは、これが1%下がれば会社の利益にそれとわかる影響がある、ということだ。満足度の低下は、特に離職率の上昇につながる。会社から事業に関する貴重な知識が消えてなくなり、その知識を再び補充するためにコストがかかる。(250ページより引用)

リッツ・カールトンに従事していた時、よく総支配人ジョン・ロルフス氏が、「私の仕事は、あなた達スタッフをハッピーにする事だ、君たちをハッピーにする事ができれば、君たちは自ずとお客様をハッピーにしてくれると信じている。」と、おっしゃっていた事を思い出します。

 

3.主要な経済指標

著書の中でシュルツ氏は、「これから不景気になるぞ」と、いう時には従業員をあつめ、今、シュルツ氏自身が考えている1~2年後の話をしたうえで、従業員にどう行動するかを問いかけていたそうです。

そのおかげで従業員同士が、「自分達の職場ではなにができるのか?」を考え最善の策を行っていたことに、シュルツ氏が感動されたそうです。
たしかに、私も独立して15年目、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックと、100年に一度とか1000年に一度のとんでもない経験をさせていただいていると思いますが、その時、必要な事は未来を想像する力と素早い決断力だと思います。

シュルツ氏が言う、これらの現場を離れ、信頼できる部下に任せた際に評価すべき重要事項は、少なくてシンプルが一番良いと思います。

著書の中でシュルツ氏は、(以下抜粋)

私の考えでは、評価すべき重要事項は4つか5つだけで、それ以上ではない。
そうでなければ、窓を拭く回数や、ペーパークリップの値段など、無数の些末な数字に振り回されることになってしまう。
どうなれば好転なのかさえわからない数字の海で、溺れてしまうかもしれない。
(248ページより引用)

部下に何をどこまで任せるのか?
そんな悩みをお持ちの経営者の方々にとって、今回のコラムで少し気が楽になっていただけたら幸いです。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

顧客満足度はお客様に直接調査ができないのはなぜ? と思いましたが美容院でのやり取りを読んで納得しました。
頑張っている人にあれこれ指摘しにくいですよね。

それから従業員満足度について、1%でも下がると離職率が上がるのは驚きました。
従業員は上司や経営者に信頼されていると感じなれなければ不安だし、一生懸命働けませんよね。

逆に経営者も従業員を信頼してあげないといけないですね。
せっかく業務マニュアルを作っても窓を拭く回数まで指示されていたら、どうしようかな、辞めちゃおうかななんて考えが頭をよぎりますよ。

なにか会社で新しいことをやろうと思ったら、ビジネスユースNLPのエコロジーチェックはやったほうがいいように思いました。

エコロジーチェックとは、なにかを導入しようとか、何か行動を起こそうと思ったときに、自分の周りではどんな問題が起こりそうかを、身近な範囲、会社単位。取引先やお客様まで含めた範囲などなど段々と範囲を広くしていきながら問題が無いか確認するNLPのテクノロジーです。

実際は脳内でイメージするだけですが意外に見落とした問題が見つかるものです。
リーダーとして顧客満足度も従業員満足度も上げていきたいですね。

 

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

 

 

この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加