著者:清水健一郎
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リーダーは精神論だけでは、うまくいかない。パフォーマンス評価は絶対に必要だ。

リーダーは精神論だけでは、うまくいかない
パフォーマンス評価は絶対に必要だ(240ページより引用)

まいどまいどの事ですが題名から「ずきっ」とさせられます。
実績評価、つまり「経営状態をしっかりと把握しろ、どんぶり勘定するな。」と言う事ですね。

私の様な個人事業の経営、特に経理については「ざっくり」と、すましている人、少なくはないのではないでしょうか?
しかし、今回、著書の中でシュルツ氏が指摘する実績評価に基づいた経営と言うのは、お金の数字だけではないみたいです。
では、シュルツ氏の指摘する実績評価を読み解いていきましょう。

著書の中でシュルツ氏は、

「実績評価をぜずに組織を導こうとするのは、フットボールの試合で、ヤードマーカーなしに次のプレーの作戦を立てるようなものだ。」(240ページより引用)

つまり、自分(自分の会社)が、今、どこにいて、どこへ行けばいいのかが明確に分からないので、作戦を立てることもできないとシュルツ氏は指摘します。

 

今回の著書のこの部分を、もし20代の若者が読み進めていると分かりにくいと思いますので、ここで私の考えを入れて説明させていただきます。
先ず、シュルツ氏は、全てにおいて数字を出すべきだと考えておられると思います。

私自身がリッツカールトン大阪で働いていた時、ありとあらゆる数字が出てきて、経営者だけでなく、当時の私のような末端のスタッフにまで伝えられ、そして、意見を求められていました。
ラインナップ(リッツ式朝礼)で、上司から質問されます。
「清水、昨日の売り上げは?」
「ディナーのフードとドリンクの売り上げは?」
「今、フェアー中のシャンパンの売り上げは?」
「なぜ、シャンパンが売れなかったの?」
「今日は、どうやって、いくら売る?」
「では、橋野(実際にお世話になった先輩)、清水にシャンパンの売り方をトレーニングしとくように。明日、清水に同じ質問をします。」
この他にも、宿泊人数、部屋の稼働率やドリンク、おしぼり、テーブルクロスの発注数、ブリケージ(備品破損)の数などなど、入社1年目の私に対しても容赦なく質問が飛んできました。

そのおかげで、当時のスタッフたちは数字に強くなり、上司からの質問も数字で返せるようになりました。
そして、上記にあるようにシャンパンの売り方など、サービススキルも効率よく向上していったのです。

気が付けば入社して2年ほどで、数字を見るだけで現場に立たなくても、現場の状況が理解できるようになっていました。
例えば、備品の破損数で、職場の問題意識のレベルがわかります。

破損の多い職場では、お客様からの苦情が多く、様々なタイプの始末書があがってきます。
ディナー時のドリンクの単価をみれば、その日のサービスクオリティのレベルが分かります。
サービスのクオリティとドリンクの単価は正比例するからです。

実際、ベテランのサービススタッフの出勤の多い日と、若手スタッフ中心でサービスを行った日では、明らかな結果が数字で出ます。
宿泊人数、部屋の稼働率から、商品、おしぼり、テーブルクロス、バターのカット数などなど、予測して発注しなければなりません。

余剰在庫を出さないように、そのため宿泊人数、部屋の稼働率をしっかりと把握している事だけでなく、その数から全ての発注数を決められるように数字になれておく必要があるのです。

つまりシュルツ氏は、ありとあらゆる数字を把握し、その数字が意味するところを理解し作戦をたてる事、そして、著書の中で、シュルツ氏がもっとも重要視されているのが、

あなた自身とあなたが選んだ社員が、会社のビジョン実現に向けて正しく進んでいるかを判断するためのサンプルを抽出することである。そして、正しく進んでいないとわかれば、進路を正すために何をすればよいかを考える材料を得ることである。(241ページより引用)

ビジョン実現に向けて正しく進んでいるかを判断するためのサンプル、リッツでは様々な方法がとられていたのですが、その一つが、当時では珍しい「従業員満足度調査」でした。
外部の専門業者が、従業員にアンケート調査を行い、その結果を従業員食堂に張りだしました。

そのアンケートには、もちろん
「会社のビジョンに向けてあなたは行動していますか?」
「ビジョン実現の弊害が職場、会社にあると感じているのであれば、できるだけ具体的に書き出してください。」
などなど、全ての質問に答えるために、当時のスタッフ達は、平均1時間半はアンケートに時間をかけていた事を思い出します。

実際、満足度の高い職場ほど、良い結果が出ていますし、会社のビジョン現実に向けて、正しく進んでいる。と言う回答がでます。
リッツカールトンのように外部委託で「従業員満足度調査」ができなくても、従業員満足を感じる事は、あらゆる方法で皆さんもできるのではないでしょうか?

数字を見ることで、会社のビジョン現実に向けて、正しく進んでいるかを判断できるようになることが、リーダーとして大切だと、シュルツ氏は仰っておられるのだと、私は思いました。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

今日の清水先生のコラムは耳が痛かったです。
何でも数字で把握するということが苦手で今まで避けてきたからです。
別に仲間を募りたいわけではありませんが、私のような人は一定数いらっしゃるのではないでしょうか?

私は数字が苦手という考えが常にあるので、ビジネスパートナーから数字で質問されると急に落ち着きがなくなります。
数字だけじゃなくても苦手なことを避けたり後回しにしたりして克服しない人がいますが、これはビジネスユースNLPでは『ストラテジーが発動している』なんて言います。

私も客観的に自分を見ることが昔よりもできるようになってきているので、数字の話が出たときに、体温が上がったり呼吸が浅くなったり、うっすらと汗がでてきたりなど体の変化に気づくことができます。

そうなったときは、いったんその場所を離れて、深呼吸をしたり体を揺さぶったりして今感じている感覚から離れるようにします。
それをNLPではディソシエイトといいます。

体の変化に気がつけるようになるとしめたもので、このディソシエイトをすることでもとの落ち着いた感覚に体と心を戻すことができます。
そして苦手な分野の克服ですが、たとえば数字に弱いと思うなら会社の数字が詳しくなる本はかんたんな内容のものから難解なものまで、私達のレベルにあった本がたくさん出ているのでそれらを選んで2~3冊読む。

そしてストラテジーの配列を変える工夫も有効です。
人間は五感で情報をとって、そこから言語で意味づけして、思考や行動を決めているので、苦手だと思う五感の配列があるわけです。

数字の話を振られて、マイナスな思考や行動が出てくるというのは、自分でも気づかないうちに出来上がったプログラムに沿って体と心が反応しているだけ。
だからその五感の配列を調べて書き出します。

そしてすぐ覚えて使うことができた物事、つまり自分の成功事例をひとつ選んで、五感の配列を調べます。
そうするとうまくいくパターンがわかるわけです。

そして数字が苦手という五感の配列を、うまくいく五感の配列に意識して変えるんです。
習慣化するまでですが。

そうすると以前よりも楽に数字の話に触れられるようになります。
このストラテジーの配列を変えるテクノロジーは有効ですよ。
また興味があれば詳しく別の記事で紹介してみますね。

 

伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法

 

 

この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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