組織を磨く日々の努力。リーダーにとって最大の報酬とは? / 伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法 ホルスト・シュルツ(著)
さて、今回はリーダーにとっての「最大の報酬」についてです。
今回の読書コラムも楽しく書かせていただけそうですね。
ここまで読み進めていただいて、本当にシュルツ氏は、現場を大切にしてらっしゃった事、そして、「人間臭いところを書いていただいているな。」と、嬉しくなります。
そんなシュルツ氏にとって、最大の報酬とはなんでしょうか?
きっと、リーダーをやってきた方ならシュルツ氏に共感を持って著書を読む事ができるのではないでしょうか?
それでは、今回のコラムをどうぞ。
組織を磨く日々の努力。リーダーにとって最大の報酬とは?
今回、シュルツ氏が紹介されたエピソードは、バリ島にあるホテルのグランド・リオープンに参加された時のエピソードでした。そのホテルはそれまでリッツ・カールトン系列だったそうですが、カペラ(シュルツ氏が、現在経営されているホテルグループ)に経営が代わったそうです。
そのレセプションで、スピーチを行ったシュルツ氏のもとに1人の内気そうな若いインドネシア人が、シュルツ氏と話そうとして待っていたそうです。
そして、
「シュルツさん、お忙しいと思いますが、少しいいでしょうか」
「もちろんです。何でしょう?」(188ページより引用)
なんでもその若者は、そのホテルがリッツ・カールトンとしてオープンしたとき、宴会担当のウエイターだったそうです。
その時、シュルツ氏の教えを何度も復習したそうで、当時のシュルツ氏の話を一字一句違えず覚えているほどだったそうです。
そして、今ではバリ島でも最も有名な観光地のホテルの支配人をされているとのこと。
「あなたの教えのおかげです。それでひとこと、お礼が言いたくて声をかけさせていただきました。」(188ページより引用)
その言葉にシュルツ氏は、
「ああ、なんと満ち足りた瞬間だったことだろう。忘れられない、素晴らしい一日になった。いや、一日どころではない、素晴らしい年になった。(189ページより引用)
経営者、リーダーと言う立場にある方なら羨ましく、目標としている事ではないかと思うのです。
私なら、「あ~~この瞬間の為に今まで頑張ってきた。」なんて思ってしまいますね。
私も過去、何人かの部下、後輩たちにこの最高の瞬間を味わらせてもらいました。
ここからは、私の自慢話になりますが、1人のバーテンダーのお話をさせていただきます。
リッツ・カールトン大阪を退職して、地元のリゾートホテルのレストランに派遣社員として働いていた時の話です。新卒入社してレストランでサービスマンの仕事をしていた小野君と出会いました。
彼はいたって真面目で、毎日一生懸命仕事をしていましたが、彼の顏、話をしている際に何か「ん?」と、引っかかる節がありました。そこで、彼に話を聞いてみると「自分は何がしたいのかわからない。
もっと他にしたい仕事があるのかもしれない。」と、返ってきました。そこで、彼を誘い食事をしたりお酒を飲んだりして、話を聞き出してみようと思ったのです。
そこで分かったことは、美味しい料理、お酒を飲み食いするのが好き、美味しい料理、お酒をお客様に提供して喜んでいただける事も好き、つまり、飲食の仕事が好きだという事までは、分かりました。
そして、特に本人はお酒が好きだという事がわかったので、私はバーテンダーの道に進んでみたらどうかと話してみたのですが、彼は、あまり食いついてきません。
そこで、私は小野君の前でウイスキーの瓶を大道芸の様に手のひらの上で、回してみせたのです。
案の定、小野君は、「え!それなんですか?なにしたんですか?」と、食いついてきました。
一言でバーテンダーと言っても、色々なスタイルがあります。
その中でもフレアバーテンダーと言うバーテンダーは、80年代トム・クルーズ主演の大ヒット映画「カクテル&ドリームス」をご存知の方ならピンとくると思います。
お酒のボトルやシェイカーを使ってジャグリングや、時にカウンター内に炎を上げてパフォーマンスを行いながらカクテルを作りお客様に提供するバーテンダーですね。
私が見せた簡単な技で、その瞬間から小野君はフレアバーテンダーにのめり込んでいったのです。
東急ハンズにフレアバーテンダーの技のビデオと技の練習用のボトルが売ってある事を教えると、次の休みにさっそく滋賀県から大阪のハンズに出向き購入し、自身の部屋の布団の上で、ビデオを見ながら練習を始めたのです。
布団の上での練習は、当時彼は寮住まいだったので、練習用のボトルを落とし下の階の同僚に騒音で迷惑をかけないためです。
そうして、本格的にフレアバーテンダーとして働きたいと言い出したので、私は、「絶対に東京に行け!中途半端なところではなく最高のところでフレアバーテンダーになれ!」とアドバイスしました。
こんなアドバイスが言えたのもリッツ・カールトンで下積みしたおかげだと感謝しています。
そして、職場選びのコツは、フレアバーをリストアップして、片っ端からお客様として訪れ、一番、楽しかった店が、一番働きたい店になるから、頭でごちゃごちゃ考えずに、先ず、店に行ったら、とにかく楽しめ!と、アドバイスをしました。
数年後、小野君は世界大会優勝者の富田昌子氏の片腕として、ネスカフェのCMにも出演するほどの実力をつけ、今では業界で名の通った存在にまで成長しました。
そんな彼が、私と話をするたびに言ってくれる一言「フレアバーテンダーとしての今の僕があるのは、清水さんのおかげですよ。」嬉しいやら、照れくさいやら、彼を思い出すたびに、どの分野でも人を育てる事って本当に素晴らしい。
と、実感しています。
若者が立派に育つのを見る機会も増え、それが私にとっての喜びとなっている。うまくやる気を引き出せたと思える場合もあるし、そうでない場合もあるが、いずれにせよ、かつての部下がホテル業界のあちこちで、重要な役割を果たしているのを見るのは楽しい。(187ページより引用)
「うまく引き出せた場合もあるし、そうでない場合もあるが」と、言うところが正直で武勇伝ばかり語らない人間シュルツ氏らしく、私は好きです。
社員を奮い立たせることは、会社の成功にとって不可欠だ。それは、リーダーの思いをはるかに超えて、豊かな実を結ぶことがある。(189ページより引用)
納得です!
【編集後記】
クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
人からアドバイスされることもあれば、人にアドバイスをするという両方の経験を持っている人は多いと思います。
人からアドバイスされるとき
人にアドバイスするとき
たぶん同じ気持ちでは無いはずです。
今回のシュルツさんや清水先生のケースのように、
人からアドバイスを受けたときのアドバイスはどんなタイミングや内容、その時のあなたはどんな状態だったでしょうか?
それから人にアドバイスをしていた時はどんなタイミングや内容、その時のあなたはどんな状態だったでしょうか?
NLPにはカリブレーションという、相手の表情や顔色、声のトーン、姿勢や呼吸などなど、相手の状態を観察して心の状態を読むテクノロジーがあります。
アドバイスをしているとき、相手をカリブレーションしながら話すこと。
そして相手のペースに合わせながら(ペーシング)、深い信頼関係を作り(ラポール)、相手が望む状況をイメージさせたり、自分自身で解決方法に気づけるようにさりげなく誘導してあげる(リーディング)ことで、アドバイスする側の成功率は上がるのではないかと思いました。
もちろん感謝されたいためにアドバイスするのではないですよ。
アドバイスをもとめられるということは、その人にとっての解決策を自分が持っているかもしれないということだと思うんです。
だからNLPのカリブレーションやペーシング、ラポール、リーディングを使って成功率を上げていくことが相手のためになるし、自分のためにもなるはず。
こういうコミュニケーションのテクノロジーを知っておくと、気分次第でいいアドバイスになったり、ただの説教や自分の自慢話になったりすることはなくなるでしょう。
私も気をつけます。
そしてアドバイスをもとめられる機会は一期一会だと思って、NLPのテクノロジーを利用しようと思います。
この記事を書いた人
著者/清水健一郎
清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。
2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる