無意味なスローガンを口にするな / 伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法 ホルスト・シュルツ(著)
組織を磨く日々の努力
部下の心に熱い炎をともす
「無意味なスローガンを口にするな」
「われわれはチームだ!」
「みなさんはアソシエイト(仲間、同僚)です!」
「私たちは家族です!」
「アライメント(整列、調整)が大切だ!」
「みなさんに権限を委譲します。」
「オープンドア・ポリシーです!」
「わが社はB2B(business-to-business)です。」
(175ページ~179ページより引用)
のっけから楽しくなるような、人によっては「ズきぃ!」と来るような題名ですね。
経営者の皆さんは、シュルツ氏にこう言われれば、過去、現在の従業員に対する言葉を振り返ってみたのではないでしょうか?
サラリーマンの方は、上司、社長から言われた事を思い出したり、また部下や後輩に今まで言ってきた言葉を思い出したのではないでしょうか?
私は振り返りました。
従業員に対して言ったことは、ほとんどなかったですが、独立するまでは上司、雇用主に言われた事が多かった様に思います。
その際、残念な事に心から喜んだ経験が少なかった、そのためか私自身、雇用した従業員に対して上記のような事を言うのをためらっていたと思います。
しかし、私の中ではよく自分自身に対して言っていました。
「オレと従業員やアルバイトはチームだ」
「オレたちは家族なのだから」
「従業員に権限を委譲しないと」
「いつもオープンドア・ポリシーでいないと」
こんな感じで自分自身に言い聞かせていました。
なので、従業員に実際言うのではなく、私の行動で従業員に上記の様に思ってもらおう。感じてもらおうと、思って行動していました。
例えば、従業員の誕生日にプレゼントを渡す。母の日、父の日は従業員の両親にもプレゼントを贈る。
従業員が彼女とデートの約束をしている事がわかれば、掃除、後始末は私が行い早上がりしてもらうなど、気をつけていました。
全て良い結果、従業員と一つのチームになれた。
家族になれた。
仕事を委譲し従業員を育成する事が出来た。
いつも気兼ねなく意見を言ってもらえる関係を築けた。
かと言うと全てがうまくいったわけではありませんでした。
人と言うのは一筋縄ではいかぬものだと痛感したと共に、良い勉強になったとポジティブに考えるようになりました。
同じ言動でも相手によって反応は違います。
ちなみに、良い反応をしてくれる従業員、アルバイトに恵まれていると、さらに何か喜ぶ事をしてあげたくなり好循環が生まれてきます。
飲みに連れていったり、従業員やアルバイトのご両親が来店された際、ご馳走させていただいたりと、さらに良い関係、絆が作られていきます。
もちろん、従業員やアルバイト達も、チョットした旅行、帰省の際にお土産を買ってきてくれたり、仕事を上がっても忙しそうにしていると無償で手伝ってくれた事も何度もありました。
そんな従業員やアルバイトがいる時、店は雰囲気だけでなく経営的にもうまくいっているように思います。
私の経験上このような言動は、日々の言動やその言動から派生した言動でなければ、従業員たちに心から感謝、喜んでもらえることはないように思います。
と、いうのも日頃からそんな気遣いをしたことない上司、経営者がめずらしく行えば、従業員達は「いつもと違う。なにか裏があるのだろうか?」「気持ち悪い」と、疑ってしまい、素直に感謝して喜ぶ事ができない場合があるのです。
ですから、必要以上に口に出す人には少し注意が必要かもしれませんね。
そのためか、「オレたちはチームだ」「オレたちは家族なのだから」「従業員に権限を委譲しないと」「いつもオープンドア・ポリシーでいないと」と言うような想いを持って従業員達と働いてきましたが、言葉にする事は少なかったと思います。
社員を奮い立たせて仕事に向かわせるのに必要なのは、熱弁でもなければ、気の利いた言い回しでもない。事実、口先だけの働きかけは、何の役にも立たないばかりか、部下たちから冷ややかな目で見られるのが落ちだ。(175ページより引用)
【編集後記】
クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
NLPでラポールをとるための要素の1つとして一貫性があります。
ラポールというのは『深い信頼』を意味します。
人間のコミュニケーションで、
言語が7%
非言語が93%
と言われています。
だから言葉だけでは相手は分かってしまうんですよね。
そして非言語コミュニケーションで相手に一貫性が無いことも無意識のレベルで分かってしまう。
だから違和感を感じたり、胡散臭さを感じ取るわけです。
直感なんて当てにならないなんて思うかもしれないですが、このような理由があるんです。
「オレと従業員やアルバイトはチームだ」
「オレたちは家族なのだから」
「従業員に権限を委譲しないと」
「いつもオープンドア・ポリシーでいないと」
って言っている本人は気持ちがいいのですが、一貫性がないと相手にバレています。
だから口にしないほうがいいかもしれません。
気をつけたいですね。
この記事を書いた人
著者/清水健一郎
清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。
2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる