著者:清水健一郎
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徹底的に繰り返す。優れた社員を育成するために必要なこと。

徹底的に繰り返す
優れた社員を育成するために必要なこと
1日10分を毎日繰り返す

リッツ・カールトンで働いた事がある人ならこの題名を聞いたとたんに

「あ、あの事ね」

と、すぐに思い浮かびます。
そう、リッツ・カールトン成功の鍵であるクレドとラインナップです。

リッツ・カールトンやジョンソンエンドジョンソンのクレドを真似てクレド導入されたにもかかわらず、クレドが機能しない事が多々あるそうです。
クレドが機能しない原因でありクレドを機能させるための唯一の方法こそが、この『1日10分を繰り返す』というところなのです。

それでは、その部分を重点的に読み解いていきましょう。

先ずその説明をするためにシュルツ氏は、カペラ・ホテルグループの24項目ある『サービス・スタンダード』を紹介されています。
少し話はそれますが、私にとってはこの24項目のサービス・スタンダードを勉強する事、そして24項目あるということに大変嬉しく思っています。

実は、このコラムで書いていいのか少し悩んだのですが、シュルツ氏がリッツ・カールトンの社長の席から離れ、親会社のマリオットグループからこられた新社長に代わってまもなく、リッツ・カールトンのクレドは大きく変わりました。
私がリッツ在籍中に学んだ20ベーシック(クレドカードに書かれた20項目のサービスのベーシック)は12項目に集約され12のバリューと名を変えたのです。

以前、リッツ・カールトン関連の著書のなかで、ベーシックがバリューに代わってさらに進化したと書かれていたのですが、私を含めリッツ・カールトン大阪の卒業者達からは、いい評価をされていませんでした。

  • シュルツ氏のサービス哲学が伝わらない。伝わりにくい
  • スタッフの教育がしにくくなった

と、言うのが理由でした。
以前、元リッツ・カールトン大阪営業支配人の故林田正光さんと二人でお茶をしている際、「どうも最近のリッツ・カールトン大阪のスタッフ達は、クレドを理解しているようも思えなくなってきた。やはり20ベーシックがなくなったからだ」と、仰っておられました。

ですから、今回の24項目と聞き、読み込んだとたん、やはりシュルツ氏も私たちと同じ考えを持っていたのだと嬉しく思いました。
24項目の『サービス・スタンダード』が気になる方は、今回の著書をご購読してください。

さて、クレド浸透に必要な「1日10分を毎日繰り返す」に話をもどすと、それはリッツ・カールトン式の朝礼『ラインナップ』をさします。
ラインナップとは、毎日、就業前に行うミーティングの事で、よく一般企業の朝礼に近いものと思われていますが、中身は大きく違っています。

朝礼は会社、上司からのインフォメーション(業務報告)が中心なのに対して、ラインナップはインフォメーションから始まり、クエスチョン(質問)そして、ディスカッション(討論、議論)に至りますが、ラインナップの中心はディスカッションです。

例えば、世界中のリッツ・カールトンでの伝説的サービスエピソードは『ワオ・トーリー』と呼んで全世界のリッツのラインナップでインフォメーションされます。
そして、ラインナップリーダーが「あなた達なら、この場合どんなアイデアを出しますか?どう実践しますか?」とクエスチョン、ラインナップに参加しているスタッフでディスカッションして、明確なアイデアを出し、各々の現場ですぐに使える様に変化させ、さらに進化させてしまう場がラインナップです。

クレドカードに書かれた内容からは、毎日1つの項目を読み上げ、質問をもらいディスカッションしていました。

例えば「今日は、リッツ・カールトンのモットー『We are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen』について紳士淑女、ジェントルマンについてディスカッションします。ジェントルマンとはどんな男性ですか?日頃、ジェントルマンになるために、どんな事を実践していますか?」

若いスタッフ中心に質問し、ディスカッションし、明確な答えを出します。もちろん、答えは無数にあります。
心をこめたおもてなしとは?ジェントルマンとはどんな男性?と質問する事で、日頃、取るべき行動が明確になっていき習慣化すれば、クレドを無意識に実践できるようになります。

そして、ラインナップはリッツ・カールトンが存在するかぎり、永久的に世界中のリッツ・カールトンのどの部署でも行われるのです。

今ではリッツ・カールトンを離れ、新たにカペラホテルを立ち上げたシュルツ氏も

何度も繰り返し、「サービス・スタンダード」は従業員の心の奥深くに定着していく。これを記した折りたたみのカードがあり、必要なときに取り出してよめるよう、従業員は常にポケットに入れて持ち歩いている。理屈抜きにこの「サービス・スタンダード」に従うことが、このホテルで働く従業員の第二の性質になる。
ここではこうやる、それが当然だ、と思うようになるのである。(157ページより引用)

つまりスタッフにとってクレドの内容を習慣化「あたりまえ」にするための方法こそがこのラインナップであり、クレドを導入したにもかかわらずクレドが機能しない会社は、このラインナップが導入されていないからなのです。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

今回の清水先生のコラムを読んで、関係ないかもしれませんが会社ならよくある出来事を思い出してしまいました。
部署の責任者が変わると前任者のやっていたことがまるまる否定されて新しいルールになるなんてことなんですが、経験のある方も多いかもしれませんね。

あとビジネスユースNLP的に見てみたときに『前提』って大事だなと思います。
ルールは何を『前提』にしているかでルールが走り始めたあとの結果が違ってくるはず。

すでにできている人を『前提』に考えられたルールなのか
未経験の人を『前提』に考えられたルールなのか

これって最初のボタンのかけはじめだと感じました。

 

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この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

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