著者:清水健一郎
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クレドがある会社の苦情対応

苦情対応に最高レベルの注意を払う
小さな問題が大きな脅威になる(77ページ)

今回のコラムは、苦情対応です。
サービス業のみならず社会で働く者、さらには人生で避けて通る事のできない必ずだれもが経験する。そんな苦情対応の原点的なお話です。
そして、私がリッツ・カールトン在籍中のラインナップ(リッツ式朝礼)で、耳にタコができるほど、上司から何度も何度も言われ指導されたところですね。

昔、こんなことを聞かれた事があります。
「清水さんがリッツ・カールトン在籍中に学んだリッツの苦情対応って、アメリカのやり方? それって日本で通じるの?」

日本とかアメリカとかではなく、おそらく世界どこにいっても通用しますし、現代だけ通用するのではなく昔も今も未来永劫通用します。
先程も言ったように苦情対応の原点、人間の原理原則に基づいた、いたってシンプルな方法でもあるのです。

著書の中でシュルツ氏は、リッツ・カールトン流の苦情対応を紹介されています。
では、リッツ・カールトン流の苦情対応を読み解いていきましょう。
まずシュルツ氏は、自分の非を認めて謝罪する力について触れています。

私のみならずコラムを読んでいただいている皆さんも「ただ一言、謝ってもらうだけで、よかったのに・・・」という経験があると思います。
言い訳をしたり他人のせいにしたり開き直られたりと、時に意地でも謝る事を拒む人も存在します。

ほんとに「ただ一言、謝ってもらうだけで、よかったのに・・・」
自分の非を認めて「申し訳ありませんでした」と言うことができなかったばかりに多くのものを失う事もあります。
逆に謝罪をすることで、多くの人に誠意を認めてもらう事に成功した例も紹介されています。

悪い例

コーヒーにネズミの死骸が入っていた事実を認めず謝罪をしなかったばっかりに裁判を起こされてしまったコーヒーショップの店長。
被害者の大学教授はシュルツ氏の友人で、「店長が謝ってくれさえすれば、料金を無料にするぐらいのことは要求したでしょうが、(中略)ところがその店長は、頑として私の言い分を聞き入れなかったのです。その態度が、ただでさえ悪い状況をさらに悪化指せたと言うことです。」

 

良い例

2007年2月、アメリカ北東部を襲った凍てつく嵐のせいで、1000便ものキャンセルを余儀なくされたジェットブルー航空の対応です。
悪天候のため前代未聞の混乱が1週間も続き、怒り心頭の乗客たちのみならず自身の会社の従業員に対しても謝罪し、再発防止のためにさまざまな改革を行うことで、最終的に3000万ドルの損失を同社にもたらす可能性があったにもかかわらず、今では米国で6番目に大きい航空会社としてアメリカの空をとんでいるジェットブルー航空 CEOデビット・ニールマン
(79~81ページより引用)

私も今回の書籍を読み進めていて思い出した経験があります。
それは、私がリッツ・カールトンを退社し友人が経営するダイニングバーで働いていた時、鶏肉屋さんに鶏肉を買いに行き、持って帰った鶏が腐っていたせいか、臭いが出ていたことがありました。

スグに購入したお店に持って行き交換を希望しましたが店主が、
「このくらいで腐っていると言われてもな~」
「火を入れたら問題ないだろ」と。

私はだんだん
「客を馬鹿にしているのか?」
「自分が若いからなめているのか?」
「かりに私が巷で有名な料理人だったとしたら、こんな対応しないくせに」
と怒りがこみ上げてきました。

しかしその時、店主と一緒に働いていた金髪、日焼けサロンで真っ黒にやけた顏、そして、唇には白い化粧を施したギャルのスタッフが、
「すいませんでした。スグに商品交換します。ご迷惑おかけして本当にすいませんでしたと、
心から謝ってくれました。
本当に彼女の心からの誠意がビンビン伝わってきた事を思い出します。
私の怒りは一掃し笑顔になっていたと思います。

購入した鶏肉の交換だけで、その他に何も要求はしませんでしたが、謝罪の気持ちと彼女は玉子も1Pつけてくれました。
私達二人のやり取りを見ていて、子供のような対応をしていた店主も最後には一言
「すいませんでした」
と言ってくれました。
その言葉に心がこもっていたというよりも、しぶしぶ謝ったと言う感じでしたが。

人を見た目で判断してはいけませんが、ギャル店員のその見た目とのギャップが余計に私の心を打ったのだと思います。
自分の非を認めて素直に「申し訳ありませんでした」と言うことができなかったばっかりに、かどうかわかりませんが残念ながらその鶏肉屋さんは、しばらくして閉店しました。

私はその鶏肉屋で働いていたギャルに接客業で大切な事を再確認させていただいたと感謝しています。

「ただ一言、謝ってもらうだけで、よかったのに・・・」
今も昔も日本も世界も人の感情の根本というのは、変わらないものですね。

シュルツ氏曰く

自分の非を認めて行う謝罪の力を、ご理解いただけただろうか?
(81ページより引用)

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?

今回の清水先生のコラム、大変勉強になりました。
私も通信販売の会社でおもにメールのやりとりでしたが苦情対応をしてきました。
会社側にたったままだとお客様からの苦情は『怖い』『イヤだ』『めんどくさい』『こっちは悪くない』…などなど考えてしまします。

でも、お客様の側になりきって感じてみると…
ささいなことかもしれないけどこの商品好きだから苦情を言っておこう
社員さんの貴重な時間を奪ってわるいな
こんな商品売りつけて許せない!
とくにかく理由を伝えて交換してもらおう

まだあると思います。
でも火のないところに煙は立たないわけで、やはり謝罪の言葉は必要じゃないかなと感じます。

誤ったら、こちらの非を認めたことになるので、その後どんな要求をされるかわからない。
だから謝らない。
いったいどこの国で働いてるんだよとツッコミたくなります。

それはさておき、航空会社の対応が苦情対応のスタンダードのように思います。
訴訟が多いといわれるアメリカでこの対応は勇気のいることだと思いますが、それを逆手にとって受けたサービス以上のものを得ようとする人はそんなにいないということですよね。

 

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この記事を書いた人

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

記事/友松はじめ

クレド勉強会 友松はじめ

勤務していた食品通信販売会社の業務に関連するセールスマーケティング書籍の他、心理学、自己啓発、加速学習等、あらゆるジャンルの本を1 日1~2 冊のペースで読むようになり、3,000 冊以上を読破。
本から得た情報を担当していたインターネット通販に活かし、売上げを月商数万円のレベルから月商1,000 万以上、年商1億のサイトに育てる

現在は、自身の経験を基にしたビジネス読書法講師、読書法を使った読書会ファシリテーターとして、活動中

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