著者:清水健一郎
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リッツ・カールトン元支配人が学んだ一流のホスピタリティ心得

辞める決心をした私の心中

書籍の中で林田さんは、

「読者の皆さんも首を傾げる方が多いかもしれませんが、私はだいぶ前から定年まで在籍する職場ではないと考えていました」。

と書かれておられます。

林田さん曰く「ねっからの浪花男にはしんどい!」と言うところがあったようです。
著書の中で書かれておられる事は、男女や年齢とは関係ない実績主義、ライバル心むき出しの競争社会、総支配人をはじめ各支配人の人事異動は激しい。

たしかに著書の中で林田さんが、仰るように「腰を落ち着けてじっくりつきあうというスタンスではないのです」。
総支配人は約2年に1回は交代。
その他、各支配人の交代はさらに早かったように思います。

私が社会人をスタートさせた職場のレストランに関しては、ホテルオープン後、半年で支配人(マネジャー)、アシスタントマネージャー(基本二人在籍)一人が代わっていました。
アシスタントマネージャーから次の日には皿洗いの係になっていたという人を在籍中2人見ました。

今まで日本のホテル、日本企業に勤めてらっしゃったということ、そしてなにも考える事もせずとも売り上げが上がったバブル時代から新しい時代になっていた。
にもかかわらず仕事、スタッフへの向き合い方を変化させていなかったことが、彼らの左遷に繋がったのだと今でも感じます。

そんな結果を出せないマネジャー、管理者達に対し会社は迅速な対応をしていたと思います。
そんな会社のやり方が「ねっからの浪花男」である林田さんにはしんどかったのだと思います。

 

新卒の私はと言うと、逆にそんな外資系のやり方が普通になってしまっていたのです。
そのため、後々良し悪しの結果を出すようになりました。

どういう事かといいますと、私主導で動かせる職場ではリッツで学んだノウハウを生かして結果をだし、不調だった飲食店数店の立て直しに成功する事が出来ました。
しかし、不調でありながら私を煙たく思うスタッフ、上司のいる職場では、ただの嫌われ者になっただけでした。

しかし、その経験が後々とても大きな気づきになりました。
今ですと嫌われた職場でも立て直す方法を心得ていますので、当時、不調のまま終わった店舗でも立て直す事ができます。
つまり、どんな店舗でも立て直す方法を見つける事ができるようになったのです。

しかも導入も実践も簡単で、既存のスタッフ達からの抵抗も受ける事がほとんどありません。
その方法は、私の経験談と共にクレドマニュアルに載せています。

話を戻しますと、私も私の周りの人の多くが、林田さんと同じ考えを持っていましたし、ホテル業、サービス業事態から離れた人も少なくありません。
またひとつのホテルに何十年も在籍する人は、ほんのわずかなのがこのホテル業界だと思っています。

ステップアップするチャンスがあれば、リッツ・カールトンと言うブランドすら踏み台にしてさらなる高みへとステップアップする。
それがホテル業、飲食業と言うものです。

実際、リッツ大阪の開業スタッフで今でも在籍している私の同期は今では2人だけです。
林田さん曰く

「心からのホスピタリティや感動サービスなど仕事にとって何が大切かという哲学については大いに学ばせていただき、感謝にたえなかったのですが、人生は一度きり。
リッツ・カールトン大阪に残るよりも新しい試みにチャレンジしたいという気持ちがいつの間にか勝っていったのです」。

分かります。
私もリッツ大阪で学ばせていただいた事を引っさげて、どこまで自分は通用するのか興味津々でした。
私が退職した時には、「これからは『リッツ・カールトン』という看板ではなく、自分自身という看板を掲げて勝負してやる」。そんな気持ちでいっぱいでした。

そのため、日本ではなく海外、ニューヨークにでも行って自分自身を試してみようと息巻いていました。
パスポートを用意して一度、ニューヨークに渡り職場を決め就労ビザを用意し本格的にニューヨークで働くと心に決めた矢先の渡米3ヵ月前、9・11テロが起きニューヨーク行きを断念しました。

いきなり目指していた道が閉ざされましたが、自分自身を見つめなおす時間ができ、タイミング良く「町場の小さな飲食店で働いてみないか?自分自身で仕入れから加工、集客と言った店の一切の切り盛りの仕方が勉強できる。人の店、人のお金でそんな経営の勉強をさせてもらえるから」。と、誘っていただき私は彦根の飲食店で働き始めました。

それが、しっくりきたといいますか、とても楽しくなり自身がオーナーになって店を切り盛りする道を選択する事になります。
このように私も林田さんと同じく、リッツ・カールトンが嫌になって辞めたのではなく、「新しい試みにチャレンジしたいという気持ちがいつの間にか勝っていったのです」。

そのおかげで、私も林田さんも大変な苦労をする羽目になるとは、その頃は想像すらしていなかったのです。

 

【編集後記】

クレドを研究している友松です。
本日の清水先生のコラムはいかがでしたか?
清水先生がニューヨークで仕事をしようとしていたことを初めて知りました。
9.11テロのころなんですね。
私はそのころ、ビジネス書を読みまくってインターネット通販事業の担当者としてがんばっていた時期でした。

私も『リッツ・カールトン元支配人が学んだ一流のホスピタリティ心得』を読んでいまして林田さんがリッツ・カールトンをお辞めになる経緯は知っていました。
著書でお辞めになる経緯を読んでいてリッツ・カールトンは素晴らしくても日本人として満足できない部分もあるのだろうなと感じました。

西洋の仕組みでホスピタリティを学んで日本のサービス業のレベルが上がるというのは、歴史の教科書で学んだ明治維新後の近代化にも通じるように感じます。
リッツ・カールトンのおかげで日本のサービスレベルはすごく上がったのではないでしょうか。

 

著者/清水健一郎

清水健一郎 ザ・リッツ・カールトン日本進出第一号ホテル、
ザ・リッツ・カールトン大阪のオープニングスタッフとして入社。身をもってクレドを実践する。
リッツ卒業後、数社のホテル、小規模飲食店をクレドによって立て直し、クレドがリッツ以外で経営に役立つことを証明する。
その後、オーナーサービスマンとして飲食店を開業。自ら経営者となる。

2013年に、これまでの経験を活かし出版した書籍が、ビジネス書では異例の2万5千部の販売を記録するヒットに。
失敗しない、小予算でできるクレド導入法を開発し、クレド導入を考える経営者や管理職の方へ無料レポートやクレド導入マニュアルを提供している。職場の信頼関係はクレドで作られる

 

リッツ・カールトン元支配人が学んだ一流のホスピタリティ心得―マニュアルではなく体験で身につける大事なこ/林田 正光 (著)

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