著者:清水健一郎
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今回は、

を元に、私、清水の目線でそのエッセンスを抽出してお伝えしたいと思います。

さて、前回は第一章の「想像力とサービス イズ スピード」について考えましたが、今回は第二章、

「ありえない」が想像力を鍛える。

を読んで、ホテル時代から自身が経営するバスティアンで、私がこれまで経験してきた様々な「ありえない」エピソードを思い出します。

そんなエピソードをまじえて、「ありえない」が想像力を鍛える、というのはどういうことか、考えてみたいと思います。

リッツでも「No」はある

著書の中では、

・お客様とのトラブル
・この世に存在しない商品(著書ではワイン)が存在していると思い込んでいるお客様への対応

など、想像力を膨らませれば対応できる、逆に言うと、想像力がなければ焦ってしまったり、対応を誤ってしまうかもしれない事が紹介されていて、サービス業に従事する者として大変勉強になりました。

私たちサービスマンは、もちろんお客様に対して喜んでいただけるサービスを心がけていますが、中には、どうしても、どうしても対応できないお客様も存在します。

私がリッツ在籍時に、出入り禁止になった方々などがその例です。

私も経験したとおり、リッツでも「NO」と言う場合がある。と、著書の中で高野氏は言います。
では、どんな時にリッツで「No」という言葉が出るのでしょうか?

リッツが「No」という基準とは?

実際、私がリッツ在籍中に経験したエピソードは、お客様からスタッフへの暴力でした。

当時、ロビーラウンジで勤務していた際、おそらくカップルと思しき中年の男女のお客様がいらっしゃり、その男性が酔いながらお連れの女性の体を触り始め、嫌がる女性を指さし私に、
「この女、オレに触らせへんねん。どう思う?」
と、少し不機嫌な顔をして私に言いました。

その時、まだまだ未熟だった二十代前半の私が、男性の耳元にこっそり返した言葉が、
「そうですね。男としては、そう思いますよね。」

少し不機嫌な気持ちを同調することで、気持ちを落ち着かせていただこうと思ったのですが、酔った相手は、小声で言ったこともあり、聞き取れなかったらしく、
「そうですね。男として最低ですね。」
と聞き違いをしてしまったのです。

「なんだ!客に向かって!お前もう一度言ってみろ!」
と言って、私の上司の胸ぐらをつかみ殴ったのです。

私ではありません。私の上司の、です。
私と私の上司との区別もつかないくらい酔っていたのです。

周囲の上司からは、「清水、何言ったんだ?」と聞かれ、事情を説明すると
「そんなん、『はははぁ』と、笑ってその場をさがったらいいんだよ。」
と、皆さんに言われました。

結果、警察のお世話になることにはなりませんでしたが、出入り禁止になり、後日、ホテルに謝罪されたそうです。

もちろん暴力以外にも、出入り禁止なった方々はいました。

では、その「出入り禁止の基準」とは一体何なのか?
それは、ご存じの方も多いであろう、

「紳士淑女」

と言う基準です。

著書の中で高野氏は、社員に対してリスペクトせず、「俺は客なんだ!」とその立場を乱用し、まるで普段の鬱憤のはけ口のように、社員に対してことあるごとに侮辱的な態度をとるお客様は、ギリギリまで譲歩します。

しかし、ホテルの壁をけっ飛ばし、穴を開けられたら、「来ていただかなくて結構です」ということをハッキリとお伝えするのです。

「社長を出せ!」と言われたので、社長のシュルツ氏に手紙を書いていただいた事もあるそうです。

私も今オーナーサービスマンとして、バスティアンで接客にあたっています。
出入り禁止にしたことも、「来ていただかなくて結構。」と言った事も何度もあります。

私は、私なりの基準を持っています。

紳士淑女とまで言いませんが、それに近いものと、いつも自身に問いかける質問が、
「10年続けられるか?」
です。

「このお客さんと、この付き合い方で10年付き合えるのか?」
「お店をこんな使い方しかしない、お客さんと10年付き合えるのか?」

心に動揺があると、「10年続けられるか?」と自身に問いかけます。
それを曲げる事はありません。

立ち位置の明確化が選ばれる理由

著書の中で高野氏も、

リッツ・カールトンは、我々の顧客は誰なのかを明確にしています。それを曲げてまで、価値観の全く違うお客様や相手にあわせることで軸がぶれては、それこそ大変です。

と書かれています。

リッツが「紳士淑女」と言う基準を持って「NO」を使うと言うことは、紳士淑女ではないお客様はそうそう来なくなります。
そうすると紳士淑女からすれば、行きやすいホテルになるのです。

私も私と10年付き合えるお客様ばかりが、集まりやすい店になり、私と10年付き合えるお客様にとって、行きやすいお店になります。

つまりは、どこまで受け入れて、どこから受け入れないか、その基準を持つと言うことは、お客様を選ぶことであり、お客様を選ぶと言う事は、お客様に選んでいただけると言う事だと私は思います。

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