著者:友松はじめ
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ファシリテーター完全教本 最強のプロが教える理論・技術・実践のすべて

ファシリテーター完全教本という、アメリカでファシリテーターの教科書のような本として読みつがれている本です。

帯には、日本のファシリテーション第一人者の堀公俊氏が推薦と書かれています。
さっそく読んでみました。

今まで読んだことのあるファシリテーション関係の本は、会議前の準備から会議後の報告までをファシリテーターの仕事として紹介、解説されているものが多かったのですが、この本は、ファシリテーション中のファシリテーターは、こう考え、こうあるべきという、なんというか、、、心意気?(ちがうな。)、心構え、ファシリテーターなら目の前のグループがゴールに到達するまで全力で支えろ!ということが柱になっていると私は思いました。

本は分厚いのですが、目次の構成は、
・ファシリテーションの効果
・グループの現状分析
・グループへの介入
小見出しは細かくありますが、以上、大見出しがたった3つです。

ということはつまり、ファシリテーターにとって、もっとも大事なのは、
現状の分析と介入なんだということが分かります。

特に、分析よりも、介入の方法について多くのページが割かれています。

介入とは、
当事者以外の者が入り込むこと。争いやもめごとなどの間に入って干渉すること。
-コトバンクより-

とあるように、当事者以外の者、つまりファシリテーターが、参加者の議論に割って入らなければならないことが多々おこるわけですが、心しておきたいのは、会議での主役はあくまでも参加者です。

なので、何かの意図を持って介入、たとえば、自分の意向に持っていこうとして介入すると、ファシリテーターとして失格で、たとえファシリテーターの希望通りに会議の結果が収まったとしても、これは参加者で決めたことではないので、会議後、スタッフの意識や行動は変わらないんですね。
(ファシリテーターは、決裁者と役割を分けるのが普通です。)

ファシリテーターをしていると自分も意見を述べたくなったりするわけですが(もちろん述べていいんですが、参加者のように発言してはいけない)、そういう自分の内面も操作して、あくまでも参加者同士の意見から、ゴールに導かなければならないわけです。

本書に書かれていた、ファシリテーターは全力でグループを支えろ!というのはそういうことなんだろうなと。

ただ、ここで問題になるのは、経験の浅いファシリテーターだったら誰でも経験することだと思うのですが、介入のタイミングだと思うんです。

タイミングの前に、
これって、介入していいの?介入していいもの?
という、介入すべきかどうなのかの分析も必要です。

ということで、

グループの現状分析

今目の前で行われている議論に、私はファシリテーターとして介入したほうがいいのかな?
という判断は、なんとなくとか、空気読んで、とかそういうことをやっていては、いつまでたってもゴールに到達できないわけです。
なので、目の前で繰り広げられている議論に対して、瞬時に頭の中で分析しなくちゃいけないわけです。

分析のステップは

どうすべきかな?
  ▼
これって、前向きな議論?後向きな議論?
どうしてこの人はこんな言動をするんだろう?
  ▼
この人の言動の本当の意味はなんだろう?
  ▼
この場合、必要は情報はなんだろう?
忘れている情報はなかったかな?
  ▼
使える情報はどれかな?

こういうことを考えながら、介入の判断をします。
分析方法の細かいところは本書の事例を読んでいただくとして、今までの会議に慣れてきた人が、こういうことをやっていくのは大変だとは思います。
でも、これが身につくと会議はもちろん、いろんなところで役に立ちそうです。
セミナー講師の人にも役立ちそうです。

グループへの介入

会議では、前向きな議論もあるでしょうし、ケンカに近い言い合いや、責任転換、高圧的な言動とか、いろんなことが起こると思います。

介入のステップは
相手の言動について説明する。
違う見方あるかどうか確認
  ▼
推察を共有する。
違う見方があるかどうか確認
  ▼
グループが言動を変えるか、どのように変えるかを決める手助けをする。
違う見方があるかどうか確認
  ▼
ファシリテーターは、このステップと同時に、理由と意図を説明する。

ファシリテーターは出来る限り公平中立な立場を貫かないといけないので、「違い見方があるかどうか確認」というのも大切なんですね。

会議で起こる全てを分析して介入するというのは大変だと思いますが、介入の方法も本書では、上記のステップの利用法を、あらゆる事例で解説してくれているので、読むとシュミレーションが出来て、理解も進みます。

まとめ

ファシリテーターとしての内面の思考の作業を中心に書かれた良著です。
これとあわせて、ワークショップ関連の本や、もちろん、ファシリテーションの一連の流れを解説した本を読み、全体像をつかんでから、本書を読むと、ファシリテーターの役割により理解が深まるのではないかと思います。
セミナーやワークショップを開催する方にもオススメの本です。

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