著者:友松はじめ
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新たな“プロ”の育て方 なぜ左官屋で若者と女性が活躍できるのか / 原田宗亮(著)

今回の書評ですが、新たな“プロ”の育て方という本です。
企業の4割超が「正社員不足」過去10年間で最多というニュースを見ました。
募集しても人材が集まらないのもあるでしょうけど、せっかく採用しても、辞めてしまうということもあるのだろうと思います。採用するのにもすごく費用がかかりますが、戦力にするまでにも時間とお金がかかります。
せっかく長い期間育てて、やっと任せられると思ったら辞めちゃった。なんてのは・・・目も当てられません。。
企業も大変です。

だからこそ、こんな本が出版されたのかなと思ったりしました。
左官屋の社長さんが書いた、人材育成の本です。

左官という職業は、きつい、汚い、危険の3Kと言われる仕事なのだそうです。
せっかく採用しても、仕事が任せられる左官になるまでに4年はかかっていたそうです。
それから離職率も高かったそうです。
採用してもすぐ辞める、一人前になったと思ったら辞める。

こんな状況をなんとかしたいということで、この本の著者である、原田左官工業所の社長原田さんは、様々な取り組みを始め、今ではガイアの夜明けにも取り上げられるほどの成果をあげているそうです。

その取り組みの中でも私が興味を持ったのはモデリングでした。
 
 
 
 
 

この本のオススメポイント

この本を読むことで得られる効果ですが、

・社員教育の具体的事例が分かる
・女性社員が活躍できる職場が作れる
・今からの時代に合った若者の教育方法が分かる

以上の3つだと思います。

ですから、
たくさんの人に応募してほしい。
すぐ辞めてしまう従業員をなんとか定着させたい。
今どきの若者の社員教育に半ばあきらめを感じている

こういうことを思っているのなら、本書を読むことをお勧めします。

教育方法の常識はすでに変わっている?!

本書を読んで、今と昔は教育方法を変えなければならないと分かりました。
本の中で、一人前ににするために1年かかっていた左官職人の教育をわずか1か月にすることができています。その方法がモデリングと言われる教育方法でした。

1年の間は、左官の道具も持たせてもらえない。
その間、ずっと下働き。
1年たってやっと道具を持たせてはもらえるが、具体的にやり方は教えてもらえない。
先輩のやり方を見て覚えなければならない。
また、人によってやり方や教え方も違う。

こういう状況のため、一人前になる前に時間がかかっていたそうです。
また、一人前になる前に辞めてしまうことを多かったそうです。

モデリングという方法に変えてから、1か月で仕事が出来るようになり、そして離職率も大きく改善したそうです。

モデリングについて

この、モデリング、詳しくは本書を読んでもらうとして
モデリングの手順としては、簡単に説明すると
①左官の超一流の職人さんの作業の一部始終を動画で撮影し教材とする。
②新人社員は、この動画を何度も見て、仕事内容を覚える。
③実際にやってみて、動画も撮る。
④自分の動画と教材の動画を比べて、何が良くて、何が悪いかを確認する。
こんな手順です。

これで、1か月後には、一通りの左官の技術を習得し、プロの入口に立つことができる。
つまり、昔から受け継がれてきた左官の教育方法を標準化させたわけです。

このモデリングを知って思い出したのですが、昔、海を見たことが無い外国人の方を数名集めて、何日も水上スキーの動画をひたすら見せて、練習は一切させずに、いきなり水上スキーをさせるという番組を見ました。
もちろん最初は、失敗するのですが、すぐに水上スキーが出来るようになったのを見ました。もちろん上手では無かったですが。

それから、最近こんなテレビ番組もありました。
コメディアンの小籔千豊さんが、店先でホウキで掃くよう指示すると、学生たちは掃くだけで、ちりとりに集めず放置したという話があり、どういう教育を受けてきたんだ?と今時の若者に批判の声が出る中、小籔さんは、ちりとりで集めて捨てるということを教えられていないからやってないだけ。誰かに教えられて覚えていくものなので、指示した大人の責任だとコメントしていました。

見て覚えろ、出来て当たり前、という考えは通用しないのだということを私たち大人は認識しないといけません。
そして、教えていないからできないだけなので、モデリングのような標準化された教え方をすることで、今時の若者は戦力になっていくんですね。

人材育成の価値ある本

この本が、人材育成について価値ある本であると思う理由は、これが3Kの職種での成功事例であることだと思います。
さらには、著者の会社では女性の左官さんが活躍しています。
3Kは、きつい、汚い、危険の略語です。

人が集まらない、人が育たない、人が定着しないというのは、職種や仕事の内容が問題なのではなく、教育の仕組みにあることに、この本を読むことで気づかされます。

まとめ

今回は、新たな“プロ”の育て方という本を読みました。
繰り返しになりますが、教育方法が標準化され、目標設定もあれば、戦力になる社員は育つし、離職率も改善するんですね。
私はモデリングの方法にすごく興味を持ったので、そのことが書かれた記事を中心に読みましたが、若者の教育方法、女性が活躍できる職場環境を作っていく方法を学ぶ最初の本として、本書を読むのもすごく良いのではないでしょうか?

左官という職種での成功事例は、工夫次第でどうにでもできるということを教えてくれます。

新たな“プロ”の育て方 なぜ左官屋で若者と女性が活躍できるのか

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