著者:友松はじめ
Pocket
LINEで送る

本は犬

「死ぬなら、この犬みたいに死にたいと思う」

 

私は16年一緒に生活した犬を土に埋めながら家族に言いました。

ただの飼い犬といえばそれまでなのですが、その死に様がアッパレすぎて本当にこの犬と生活が出来てよかったと思ったから出てきた言葉でした。

 

読書会ファシリテーターの友松です。

 

はっきりは覚えていないのですが、確か犬が我が家に来たのは新婚4ヶ月位たってからでしょうか? 妻が犬猫雑誌の切り抜きを持ってきたことがキッカケでした。

その切り抜きにはブルドックのようなシワくちゃな顔をした、普通の形の犬しか飼ったことがない私にはとても犬とは思えない犬のようなものが写っていました。

 

その犬はパグといいます。

妻は飼うならパグと決めていたらしく、結婚前は両親から反対されていたため、結婚してからパグを飼うと決めていたのだそうです。私にはなんの相談もありませんでしたが。

 

そのチラシを見せられて、1ヶ月後には手のひらに乗るほどの小さなパグとの共同生活がはじまりました。

そしてほどなくして、私たちは犬のしつけ教室に通うことにしました。

別におりこうな犬に育てたいからという理由ではなく、当時住んでいたマンションがペット不可のマンションだったため、ムダ吠えをしてもらっては困るからでした。

 

しつけ教室は6ヶ月ほど続きました。

その間、さまざまな犬の訓練を学びました。

 

お手、おすわりなんてかわいく思えてしまうようなしっかりした訓練です。

そのおかげで、とても飼いやすい犬に育ってくれました。

 

ではなぜ訓練が必要かというと、その理由の一つが、犬にストレスを与えないためなのです。

犬は家族の順番を決める動物なので、なんの訓練もしないで犬の好きなようにさせていると、いつの間にか、犬が主人になってしまいます。

もちろんそれは犬の中だけの話ですが。

 

そうなると犬が不幸なのです。

犬がリーダーですから、家族を自分が守らないといけないと思い、犬はずっと気が抜けません。家にいる時に、来客のチャイムが鳴ると、外敵が来たと思って威嚇し吠える。

散歩に行けば、知らない犬に吠える。

などなど、犬は家族を守るためにリーダーとして必死になるわけです。

 

24時間ストレス漬けです。

しつけ教室の先生に教えてもらったのは、主従が逆転すると、犬は長生きしないと教えてもらいました。ストレスのため長生きできないんですね。

 

いろんな訓練を教えてもらいましたが、一番やってよかったのが『服従訓練』でした。

訓練中はすごく犬が嫌がるので、とても犬がかわいそうに感じるのですが、心を鬼にして何度も行います。別に痛いことをするわけではありませんよ。

 

ただ、この服従訓練をすることによって、犬は飼い主をちゃんとご主人様と認め、それ以降はご主人様の言うことを聞けば大丈夫! と思うようになりムダ吠えはしないし、その後のいろいろな訓練もスムーズに進むようになります。

 

結果、うちの犬は、お手やおかわり、食事の躾も、散歩の時のマナーもよく守ってくれる犬に育ちました。

犬の好きなようにさせてやればいいのにという考えの人もいるとは思うのですが、私はしつけ教室に行ってよかったと思っています。

 

一緒に生活して16年目の10月のある日の金曜日、朝と夜にいつものようにご飯を残さずしっかりと食べ、家族との会話にいつものように参加していた犬は、気がつくと横になってぐったりとして息を引き取っていました。

 

金曜日の夜に亡くなり、家族みんな仕事や学校を休むこと無く、死んだらここに埋めようと決めていた場所になんの問題もなく行くことができました。たまたま帰省していた義理の姉、なぜか旅行を延期していた義理の両親がそろって犬を見送ることができました。

集まった人たちは、生前かわいがってくれた人たちでした。

こんな誰にも迷惑をかけずに鮮やかに旅立てるなんて、なんてすごい犬なんだろうと思ったものでした。

 

犬はかわいいです。

でも人形ではなく生きていますし、人様にも迷惑はかけられません。私たちとの共同生活でもあるので過度なワガママだって困ります。

 

それに、どんなことになっても犬は人間に飼われなければ生きてはいけないのですから、従わせないといけません。

 

人が主で、犬が従なのです。少なくとも私はそう思います。

 

主従関係は、読書にも当てはまると考えています。

本は本が出版できる人が書くわけですから、その内容を読ませていただくという姿勢で読んでいるのではないでしょうか。だから最初の1ページから最後のページまで丁寧に読む癖がついていると言えます。

 

もちろん、最初から最後まで読むことはいいことだと思います。

でも、読みづらかったり、難しすぎたり、ネットで検索して意味を調べないとわからないことが多かったりするのは、私たち読者が悪いのではなく、そんな本を世に出した作者が悪いのです。

 

だから、読みづらい、難しい、と思ったら、せっかく買った本でも途中で読むのをやめてもいい、読むのも、やめるのも私たち読者の自由です。

 

だって、読書の主役は私たちなのですから。

 

私たちビジスタで教えている読書法だと、本1冊のなかから1割程度の必要な情報が手に入ればそれで1冊終了でOKと言っています。

実際に読書法を体験した受講生の方たちも、全部を読むよりも必要なことが分かる読み方の方が読んだ後の満足感は高いし、仕事や生活で役に立てやすいと言っています。

 

本の作者の方がもちろん、私なんかがいろいろ言えるような人ではない、すごい人ばかりなのですが、本に関して言えば、読者のためになる、この本を読んで本当によかったと思ってもらうことが作者の目的の一つであると思うのです。

 

だから、読書だけは読者の好きにすべきだと考えます。

読みたくないと思えば、そこでやめてもいいし、もっと別のわかりやすい本を読もうと思えばそうすればいいし、あとがきが読みたかったら最初にあとがきを読めばいい。

 

本を中心に考えて読書をしたら、本にも著者にも読者にとっても不幸です。

 

 

《おわり》

 

このコンテンツはビジネス勉強会会員限定コンテンツです。会員様はログインしてください。まだ会員に参加されていない方は、以下の「ビジスタ会員登録はこちら」というリンクよりお申し込みをご検討ください。

ビジスタ会員ログイン
 ログイン状態を保持する  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加