著者:友松はじめ
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夜を乗り越える / 又吉直樹(著) 
▼よしもと芸人、又吉直樹さんの著書。
「火花」の次の著作です。小学館よしもと新書の第一冊目ということで、福岡市中央区薬院駅内にある積文館書店ブックセンタークエスト薬院店で購入。
私はここ数年、小説は読んでいないため、「火花」も読んでないのですが、本書の帯に書いてある「なぜ本を読むのか?」というフレーズに引かれ、読んでみることに。

■読む前の予想

▼文学を読み続けて芸人以外にも多彩な才能を発揮され、小説も書き、芥川賞も受賞した又吉さんが、なぜ本を読むのか?についてどう答えるのかに強い興味を持ちました。

▼おそらく、ビジネス書のたぐいは読まない方であるはずなので、文学小説を読み続けることで、今までの人生でどんな成長を遂げてきたのか?得るところはどんなところだったのか?自身の仕事(漫才とかその周辺の仕事)にどんな風に役立っているのか?そんなことが絶対に語られているはず。と読む前から大いに期待。

▼「本を読む人だけが手にするもの」(藤原 和博著)の影響で、事実を基にしたミステリーやサスペンス小説も読んだほうがいいという考えに変わっていたところなので、本書の内容によっては文学小説に対しても考え方が変わるかも。など、考えてしまいました。

▼余談ですが、ブックカバーがやけに滑るな、読みにくいな。と思って、カバーを外して裏をみると、こんな風になっていて・・・。

夜を乗り越える 又吉直樹(著)

夜を乗り越える 又吉直樹(著)のブックカバーの・・・

滑る本、芸人・・・。何か意味があるのか?
ほんと良く滑るんで、油断してたら中身が抜け落ちてしまいます。ご注意を。

- 目次 -
はしがき

第1章 文学との出会い

第2章 創作について ― 『火花』まで

第3章 なぜ本を読むのか ― 本の魅力

第4章 僕と太宰治 

第5章 なぜ近代文学を読むのか ― 答えは自分の中にしかない

第6章 なぜ現代文学を読むのか ― 夜を乗り越える

あとがき

■気になるポイント3つ

▼本書のはしがきに書かれていました。
本を読まない人が、本をよく読む又吉さんにする代表的な質問が、
 
①なぜ本を読まなくてはならないのか?
②文学の何がおもしろいのか?
③文学って知的ぶりたいやつらが簡単なことをあえて回りくどく言ったり、小難しく言ったりして格好つけてるだけでしょ?

 
の3つなのだそうです。
本書では、この3つの質問にたいして、時間をかけて答えていくというものでした。
 

①なぜ本を読まなくてはならないのか?

何冊も読むことで、たくさんの考え方を知ることができる。たくさんの言葉も知ることができる。
文章を読みながら、自分の考えと比べてみたりもする。本を読んでいる最中、深く考えることができて、そういうことを何冊もくりかえすことで、物事の本質に近づくことができる。
 
ここの部分は本書で何回も繰り返し出てくるので、詳しくは本書を読んでいただくとして、たくさんの本(文学小説)を読むことで、世の中に絶対は無い。世の中は曖昧である。世の中に答えは無い。ということを知ることが出来るようです。
自分の成長のために本を読まなくてはならないのではないでしょうか?
 

②文学の何がおもしろいのか?

このまま死んでしまうんじゃないかと思えるくらい、暗く深く苦しい感情は、この世の中で自分だけなんじゃないだろうか?と思える瞬間は誰にでもあると思います。
 
別に小説に解決策を求めているわけではないけれど、自分だけじゃないんだと、何十年も前に出版された本にも書かれている、だれでも抱えている感情なんだ。ということがたくさんの小説から知ることができる。
湧き上がる暗い感情が小説を読むことで無くなるわけじゃないけど、たくさんの小説からたくさんの言葉を知り、浴びることで、たくさんの考え方や視点を得ることができる。
そうすることで、人として成長でき、抱えた気持ちを整理することができる。
 
それは、自分が成長していることであると思う。
文学小説を読むことで起こる内面の変化を体験できることが、本を読むおもしろさと言えるんじゃないかなと。読んでいて感じました。
他の方は、本書を読んで、文学のおもしろさを何とするんだろう?
 

③文学って知的ぶりたいやつらが簡単なことをあえて回りくどく言ったり、小難しく言ったりして格好つけてるだけでしょ?

本は、賢い人達のためにだけあるものではありません。明日からバンドをやろうという人や芸人をやろうという人が読んでもいいものです。むしろ、彼らとの方がめちゃくちゃ相性がいいものです。
かたやパンクスも芸人も、本なんて賢いやつらのもので自分には必要のないものだと思っています。
いやいや、あなた達と同じようなやつの、どうしようもないことも書いているのになと思うんです。
 
僕みたいなもんが、学生時代全然勉強もできなかった人間が、芸人と言いながら仕事もなくてコンビニのバイトにさえ落ちている人間が、本を読み、たくさんの言葉に出会い、今日まで生きてきました。
 
その誤解が大きい。何を言ってもベタになるんですが、本が救いになるとも、完全には言いたくありません。でも本には、自分の考えや葛藤していることへのヒントが必ずでてきます。

 
本を読まない人ほど、本から得られる恩恵にたいして懐疑的な人が多い。本を読まないのに、読書する意味を求めたりする。つべこべ言わずに読めばいいのに。読めば分かるのに。と思うときがありますが、又吉さんもそう思ってることが分かって、私の考えの幅も広がりました。
本書に書いてあるとおりですね。
 
勢いだけの芸人さんと、本当におもしろいと思える芸人さんとの違いって、もしかしたら表に出さないだけで実は読書だったりするのかもしれないな。と思いました。余談ですが・・・。
 

■まとめ

本をおもしろく読めないのは、自分の責任ではないでしょうか?

 
読書に対して、そんな表現の仕方があったんですね。
知識、経験、今まで読んだ本の冊数、今現在持っている自分の語彙。
おもしろく読めなかったのは、足りないんですよね。今の自分が。
 
良く分からなかった本は、しばらく置いておいて、他の本を読み、何年かたったとき、また改めて読んでみると、今度は良く分かる。本当におもしろく読める。
やっと、自分が、その本に追いついたってことなんですね。
 
この本は、共感した。感動した。だからおもしろい。すばらしい本だ。とか、
この本は、全然おもしろくない。買ってそんした。そして収まらない怒りの気持ちを、たとえばアマゾンのレビューに書きなぐる。とか。
 
おもしろく読めたり、おもしろく読めなかったりするのは、これはその本や著者の責任ではなく、読み手である自分自身のせい。
つまり、おもしろく感じないのは今の自分のレベルがそれに達していないだけ。
 
そう思えるなら、読みたいと思うすべての本を楽しんで読んでいくことができるのではないでしょうか?
(この世の中にあるすべての本という意味じゃないですよ。)
 
本は、読まないより、読んだほうがいいですね。
 
夜を乗り越える(小学館よしもと新書)
夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

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