読書は格闘技 / 瀧本 哲史 (著)
博多駅のバスセンタービルにある紀伊国屋で購入。
平置きされていた本の中から「読書」と「格闘技」のキーワードが気になり手に取りました。
目次の大見出しが、Round0からRound12となっていて、
-目次-
Round0:イントロダクション
Round1:心をつかむ
Round2:組織論
Round3:グローバリゼーション
Round4:時間管理術
Round5:どこに住むか
Round6:才能
Round7:大勢の考えを変える(マーケティング)
Round8:未来
Round9:正義
Round10:教養小説──大人になるということ
Round11:国語教育の文学
Round12:児童文学
読む前の予想
各ラウンドには著者が選んだ2冊の本が紹介されています。
てっきり、似たテーマの2冊の本を比較しながら自分の考えを作るような読書術を紹介した本なのかなと思ってましたが違いました。
普通、「良書」というと、書いてあることが正しいものであり、正しい考え方であると思われる。しかしながら、書いてあることに賛成できなくても、それが批判するに値するほど、一つの立場として主張、根拠が伴っていれば、それは「良書」と言える。
私は筋金入りの資本主義者であるが、そうした立場からしてもマルクスは読むに値する「良著」と言える―。
本を買うってことは、つまり、その本から何か学び取れそうだから。ということであり、本を購入して読むという行動は能動的といえると思うんです。
でも、その読む姿勢ってどうなんだろうと思い返してみると、受動的なのかな。と気づかされました。
自分は著者と戦えるのか?
まだ自分の知識・経験が浅かったり、読了した冊数がまだまだ少ないとどうしても格闘するための体力や筋力が足りないわけで、本の著者に最初から負けている。
負けているという意識さえないので、そのまま読んで、そのまま影響を受ける。
それはそれで良いと思うし、量は質に必ず転化するから、そのまま何冊も読んでいけばいいと思う。
ただ、読書が格闘技だという視点で考えたときには、もう知識も経験も体力も筋力も無い状態であっても、あえて空手の有段者に戦いを挑んでみる!というのも面白いかも。
もちろん当然負けるんですけど、負けたなりに得るところも当然あるわけですよ。
(私、若いときに空手の経験があり、白帯で黒帯と練習試合した経験アリ。汗)
なので、たとえば、難解な本でも読む前から「読書は格闘技」という考え方で本を読んでみるのもアリなのかなと考えが変わりました。
本書のRound0:イントロダクションで取り上げられているショウペンハウエルの「読書について」のなかに、
という本書にも取り上げられている名言があるんですが、私、ここがどうしてもひっかかってたんですよね。多読によって、今までできなかったことができるようになったり、思考の幅が広がってさまざまなものが見えるようになった経験がある私にとってこの名言は、私のやってきたことを否定された気分になりました。
しかし、これは最初で言った話に戻るんですが、これは読み方が「受動的」な場合に限ってなのだなと。
「読書は格闘技」であると考えると、この一文は、著者からの攻撃であり、無批判で受け止めるということは、パンチをくらったと同じなので、ここでパンチをくらっても打ち返すと面白くなってくるんですよね。能動的というか。
著者の瀧本さんは、このショウペンハウエルの「読書について」を読むことで読書の持つ危険性を認識してショウペンハウエルと真逆な「読書は格闘技」という考え方を作っていったと書いていました。
「読書は格闘技」というすばらしい視点をいただいたことで思うことは、戦うには自分も鍛えないといけないし、防御や攻撃のテクニックも身に着けないとお話にならないのでは?ということです。
本書を読んでいくと、著者の瀧本さんは、名著「人を動かす」のD・カーネギーと戦い、漫画家のあだち充とも戦っています。この変幻自在の戦い方ができるのは、著者のベースがあってこそ。
それを言ってしまうと、もともこも無いように思えますが、自分の考えを持ってないうちは、負け続ける可能性がありますし、著者から教えをこう姿勢(それこそショウペンハウエルが否定した多読)を貫いたのち、反撃に転ずる!ということもアリだな。と妄想しましたが、ダメでしょうか?
まとめ
本書の内容はもちろん手にとって読んでいただくとして、2冊の本を比較しながら自分の考えを作っていくような読書術の本ではなく、今言ったような著者と戦いながら読むことで、今から出会う本、もしくは過去読んで、そうでもなかった本からも多くのことが学び取れるということを気づかせてくれる本であると思います。
なので、本書はボクシングのように12ラウンドまであるわけですが、12ラウンドまで著者が選んだ本の書評が続きます。
それは、どのように本書の著者が、各ラウンドの著者たちと戦っているのか?その戦い方をリアルに学べる場であり、指導してもらえる魅力的な場でもあります。
手に取った本の著者の考え方をそのまま受け入れる必要なんてない。
戦う読書こそ、自分を成長させるものなんですね。