【書評】脳を創る読書 なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか/酒井邦嘉(著)
読書法の講座や読書会をしていると必ず出る質問があります。
『電子書籍で速読できますか?』
『紙の本と電子書籍はどちらがいいですか?』
電子書籍はまだ速読や読書法に適していないと思うので、紙がいいです。
と答えています。
理由は、本一冊を行ったり来たりしながらページを読むことができないからです。
あとは、電子書籍は文字の大きさを変えるとページ数も変わるので、行数とかページ数とかの概念がありません。
そのため、電子書籍は読書法を使って読むときは読みにくいのです。
それから、電子書籍と紙では、紙の方が脳の理解には適しているというニュースを読んだことがあります。
自分の体感でも、電子書籍より紙の本の方が記憶に残るとは思っていました。
まぁ、自分が読みやすい方を選べばいいだけの話で、電子書籍と紙の本、どちらでもいいんですが、読書法を教えている関係で、、
『電子書籍で速読できますか?』
『紙の本と電子書籍はどちらがいいですか?』
この2つにもっと納得のいく答えが得られないかとずっと思っていたら見つけました。
『脳を創る読書 なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか/酒井邦嘉(著)』です。
東京大学の言語学の教授が書いた本です。
2011年12月に出版された本で、まだ販売されている本です。
読書の効果
まず
読書量が多いほど、言語能力が鍛えられるということは間違いないようです。
『本を読んで意味あるの?』
という人がいますが、意味はあります。
言語能力が鍛えられるということは、考えるときにたくさんの言葉をつかうことができるので、頭が良くなります。
だから、本は読んだほうがいいのです。
もしも『なぜ本を読んだほうがいいの?』と言われたときには説明してあげてください。
電子書籍と紙の本のちがい
著者が興味深いことを書いていました。
パソコンで原稿を書いて、パソコンで誤字をチェックして、誤字がないと思っても、紙に出力してもう一度原稿をチェックすると必ず誤字が見つかると。
これは私も経験があって、パソコンで入力した文章でも大事なものは一度紙に出力して確認するようにしています。
もちろん誤字がない時もありますが、紙に出力することで文章の言い回しなど、パソコンでは気にならなかった表現の修正をすることが多いです。
これは、人間の注意のメカニズムが関係しているようです。
なぜ、パソコンで見つからなかった誤字が紙に出力した途端見つかるのかというと、パソコンはスクロールをしながら文字を読みます。
スクロールするということは、固定された画面を文字が移動する。
つまり文字の位置が一定していないということだそうです。
紙の場合、文字の位置は、紙の中で決まっています。
そしてページをめくって先に進んだり、後戻ったりすることが容易。
空間の把握がしやすい。
紙だと、なんとなく頭の中で、『何ページくらいのどのあたり』ということがわかりやすいのです。
そして紙の本だと、目的の内容をすばやく探せるというメリットがあります。
本の厚みを把握して、だいたいどのへんにあるかなんてことがやりやすい。
もちろん電子書籍はフレーズやキーワードを入力することですぐに検索できるのも大きなメリットではあるのですが、電子書籍と紙の本で目的の内容を探すという行為を比べると、量的な手がかりが得やすい紙の本のほうが優れているように感じます。
それから、読みやすさのメリットには直接関係はありませんが、所有する楽しみの有無も案外重要だったりします。
紙の本を本棚に置いて、背表紙を眺めているだけでアイデアが浮かぶこともあります。
まとめ
この本はこのまま手元においておいて、精読しようと思います。
電子書籍と紙の本のメリット・デメリットの他に、脳と言語の関係等の話もとても興味深いので。
電子書籍と紙の本、読書をするならどちらがいいかと迷っている方にはぜひオススメしたい1冊です。